たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

肩書に憧れられるのと、素の自分を愛されるのは違う『伝説の勇者の婚活』

伝説の勇者の婚活 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
伝説の勇者の婚活 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

伝説の勇者の婚活 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)


ゲーム的描写も交えつつの、純ファンタジー。
魔王を倒した後の世界の話。
 
勇者ユーリたち一行は、魔王を倒して世界に平和をもたらした。
その後、パーティの中の戦士と僧侶が結婚。
冷静すぎて感情の起伏がほとんどない彼は、二人が嬉しそうにしているのを見て「愛すべき人に出会いたい。そして……その人と一緒になってみたい」とはじめて考えた。
花嫁候補を募った所、数え切れいない人数の女性がやってくる。
 
肩書にあこがれているのか、それともユーリ本人を好きになってくれたのかは、全く別物。
そもそも「勇者」は血筋であって、職業じゃない。「戦国武将の子孫」「すごーい!」みたいな感じ。
いや世界救ってる偉業は成し遂げているけど、それ以上に肩書が目立ちすぎる。「ユーリさんがすごい」じゃなくて「勇者様がすごい」になりがち。
 
ユーリは変装して自分の身分を隠し、結婚相談所に登録、バレたら次の町へ。
世間知らずな冒険者の彼。面白いくらいに、誰にも相手にされない。
 
いろんな女性と顔合わせしていくうちに、彼の中にある、人類が求めている「勇者」観がにじみ出てくるのが、えらい面白いしワクワクする(そんなにアクションは多くない)。
たとえば、ある村の娘は、おじいさんに結婚式をしてあげたいがために、彼と結婚すると言った。
彼は真っ正直だし、その娘の真摯さに心をうたれていたため、結婚してもいい、と本当に考えていた。
ただ、彼は「好きでもない男と一緒になって…あなたはそれでいいのですか…?」と、彼女の一生を深く心配する。
これだよ。人に対する慈愛を持った、人のために自己犠牲できる姿勢。そういうのが勇者だよ……!
 
3巻まできて、まだ結婚相手とは出会っていない。
「勇者」という色眼鏡抜きに、接してくれる相手がいればいいのだけど、また彼が面倒な男なので、ムリな感じしかしない。
世界は誰かが救えても、自分を愛して結婚する人は一人しかいない。
ぼくは独身なので、結婚した人たちはみんななにかしら偉業を成し遂げたんじゃないかと感じることがあります。ひょっとしてみんな世界救ってるの?

『銀のニーナ』は、少女によって男性が成長する系マンガの目指すものど真ん中

銀のニーナ : 10 (アクションコミックス)
『銀のニーナ』は連載はじまってから、本当に好きで好きでどうにもならない作品。
っていうか、そもそもぼくは「成人男性と少女」の組み合わせにとことん弱い。
(作者・イトカツは、ゲーム「餓狼MOW」の双葉ほたるのモーション作家で、ほたるのペットの名前がイトカツだよ)
 
東京から田舎に帰ってきた修太郎27歳。彼が預かることになったのは、ヘルシンキに行った姉の娘、ニーナ。
銀髪、碧眼、10歳。日本大好き。アニメヒロイン大好き。
高原で、姪の世話をする生活が始まる。
 
このマンガの世界は、ほんっとに何にも「えぐさ」がない。
ニーナと母親はめちゃくちゃ仲がいいし、修太郎も(東京と違って)キャベツの収穫など仕事ができている。
修太郎の幼馴染・巴はとても面倒見がよく、大人になっても彼とは仲良し、ニーナのこともめちゃくちゃかわいがっている。
ニーナはきちんとのびのびと成長し、学校にも通うようになり、友達もできた。
 
ほんっと幸せ。
高原も美しいし、ニーナと一年無事過ごせたし、修太郎の母親(ニーナのおばあちゃん)とも仲良し。
 
クリーンになればなるほど、「お前ちゃんとやってるの?」という重しが、成人男性にはのしかかってくる。
ニーナは、彼を写す鏡だ。
 
「成人男性と少女」ものは、いくつかの方向性があると思う。
ひとつめは、成人男性が自分を見つめ直すきっかけの物語。(例・おたくの娘さん、29歳独身中堅冒険者の日常)
ふたつめは、少女の成長を、男性を定規にして記録していくスタイル。(例・アルテ、アリスと蔵六
みっつめは、一緒に年を重ね成長する中で、二人に恋愛が生まれるパターン。(例・高杉さん家のお弁当、これは恋のはなし)
きっとまだまだあると思うけど、大きくはこの3つ。
 
で、『銀のニーナ』はひとつめのど真ん中も真ん中。
幼馴染の巴とフラグが立ちまくっているため、ニーナとの恋愛という道はまずない。
というか巴がいるからなおのこと、「お前ちゃんとやってるの?」の共鳴がすごい。
ニーナの前で「ちゃんとした大人」になれているのか、巴の前で「一人の人間」として成長できているのか。
できてない。それでもニーナは慕ってくれるし、巴はケツ蹴ってくれるから、一歩ずつ前に進める。
 
10巻までくると、ニーナもすっかり学校に慣れ、修太郎と離れていても友達ととても仲良く過ごせている。
修太郎もニーナをしっかり育てようという意思が芽生え、仕事への意識も強くなった。
今までどおり、一切心配するような展開はない。
つまり、テーマ(成人男性の成長)にずーっと向き合っている。これはすごい。
 
ただ「女性に対して向き合う男性」としては驚くほど育っていない。
無理しなくていいところだけど、巴が哀れ。
そんな「イライラしまくるけどやっぱり幼馴染の彼が好きでもうアラサーなきっぷのいいお姉ちゃん・巴」が真ヒロインだと思ってます。
ニーナはかわいさが天元突破していて、ヒロインってより妖精に近いんだよー。最近人間度合い増してきたけど、それでもフェアリーだよー。

楽しいものを見つけると、恋とかエロとかどうでもよくなる「のぼる小寺さん」完結

のぼる小寺さん(4) (アフタヌーンコミックス)

終わっちゃったねえ、小寺さん。
「筋肉のついた、しなやかで小さくて金髪の少女による、ボルダリング」というフェチ要素全開で始まった作品。
ずーーーっと見てたかったんだけど、4巻の終わり方が美しすぎて、拍手拍手です。コレ以上のラストないでしょう。
 
表紙の小寺さんは、全然変わらないというか、ボルダリングバカ。のぼることしか頭に無くて、将来の夢にクライマーと書いちゃうくらい。さすがにボルダリング仲間たちも「それは将来の選択なのか?」と首をかしげるくらい。
彼女は本当に最後の最後まで、小寺さんでした。
最後、試合でみんなの応援の中、登りきる。「自分との戦い」というストイックな部分もあるけど、同時に「競技に勝つ」というスポーツ性もちゃんと楽しんでいる小寺さんは、孤独な戦いじゃなくて、みんなと登っている。
 
んで。
小寺さんはまあ表情もずーっと一巻から変わらないんだけど、周囲の人間が成長しまくり。
 
特に、高身長で小寺が好きだったからボルダリングを始めた男の子、四条。
なにさっくり彼女作ってるの! 4巻の頭の方でしれっと彼女いたからびっくりしたよ。
 
小寺への思いがその程度だった云々じゃない。
四条くんはシンプルに、ボルダリングが大好きになった。そうなると最初の思いはキレイに削ぎ落とされていく。
そこにたまたま(どういう流れかわからんけど)彼女が出来て付き合った。
登っているうちに、自分探し大成功。
4巻で一番感動したのここかも。
二番目は四条が、根性論に傾かず、怪我をした指をかばって棄権するシーン。やるよりやらないほうがツライよ。
 
その一方で、小寺さんが好きすぎたけどきちんと自分も頑張ろうと卓球に挑んだ近藤くんは、超一途でこれまたキュンとくる。
また決勝戦で小寺さんに触発された、ボルダリングの鬼・迫田さんも、一回の試合ですっかり小寺さんの「ボルダリング面白い」オーラに飲まれて、成長する。
小寺さんに色んな人が惹きつけられて、もりもり変化していく。爽やかな群像劇でした。
 
とシメたいけど、やっぱり小寺さんがフェチいのは間違いないわけで。
彼女のボルダリングをはたから見て、その姿に興奮して、家帰ってハッスルした男子山ほどいるから。いないわけないから。健康な男子が彼女の身体見て興奮しないとかないから。