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少女のイメージに萌えふりかけ。〜チャンピオンREDいちごvol.1〜

チャンピオン RED (レッド) いちご 2007年 02月号 [雑誌]
話題になっていたので買おうかどうか迷いつつスルーする予定だったのですが、高遠るい先生に石黒正数先生に野上武志先生が描いてると来たら買わないわけないじゃないですか。車を1時間走らせて探して買ってきました。なかなか普通の書店にないんだよねコレ。アマゾンにもないし。
執筆陣は、氏家もく先生や草野紅壱先生のような主にエロマンガ界の人が半分くらい、加えてカミムラ晋作先生や松山せいじ先生のような純チャンピオン陣、上記の高遠るい先生たちのような特殊マンガ家さんたちが少々という感じです。
全体のスタンスは「ヒロイン全員15歳以下」ということで「性的な意味」はふんだんに投入されています。だからそれ目当てで買うのはありかも。
ただ、全部を通して読むと、かなりその「15歳以下少女」イメージの差異が面白いのですよこれ。こんなにマンガ家によって違うんだなーと感じさせられます。
 

  • 萌え丼萌えだく。

「少女」を「萌えパーツ」にした作品がまずは圧倒的に多いです。

森千夏「ねこたく」より。
「萌え」文化の一つに、「属性を組み合わせる」というものがあります。レゴブロックのように「ネコミミ」「魔法少女」「メイド」などの記号を組み合わせ、組み上げるテクが、現在はかなり研ぎ澄まされ始めていると思います。
利点としては「見て分かりやすい」こと。黄門様の紋所のように「萌え記号」を出されると「ああ、このマンガは萌えマンガだからそういう読み方をしよう」という心構えができます。苦手な人はそれで見なくなるだろうし、好きな人は感覚を鋭くして探求することができます。自分の好きな属性を理解している人の探究心と調査魂たるや!あ、自分は今は太眉が好きです。
もっとも「萌え記号」の道を選ぶと「陳腐」「ベタ」という言葉を戦うデメリットも背負うことになるんじゃないカナ。現在は萌え記号が濁流のように流れている時代です、その中で砂金になるためには相当の追及心で結晶化させるか、あるいはありえないような斬新さを持つか、かもしれません。正直、軽く広めるには楽だけど、心に残らせるのが難しいんだな。
また、もう一つのデメリットとして「ストーリーが素晴らしくても萌え記号が入ると視界が鈍る」というものもあると思うんですヨ。今回のこの雑誌も「15歳以下」という「属性分類」がされているわけで、ピンポイントに客層を絞り込んでいます。オタじゃない人はまず買わない雑誌でしょうしネ。

みずきたけひと「おとまりHONEY」より。
つゆだくねぎだく萌えだくなマンガも多い雑誌です。それがよいか悪いかと言うと、つゆだくが好きな人もいればキライな人もいるのと同様、萌えをぎゅうぎゅうに圧縮して詰め込んだのが好きな人もいるので無問題。「萌えの求道者」とまで書かれているみずきたけひと先生ですが、確かにそれら個々の萌えパーツを見事に結晶にしています。それを描き続けられるってのはほんとすごいな。

  • 少女ノスタルジック

とはいえ、それだけじゃあ食傷気味になります。こっからがこの雑誌の面白いトコロ。
「少女」を「記憶の断片」に当てはめた作品群も掲載されています。

カミムラ晋作x藤見康高「あさがお絵日記」より。
少女像はなにも「萌え」ばかりではありません。いやまあ、この絵にも「ツインテール」「ニーソックスと絶対領域」っていう記号があるんだけど。
だけどこの絵、いわゆる萌え絵とちょっと違うんですよね。全体に漂う空気は小学校という「ノスタルジック」な気がしてならないんです。あさがおの観察や虫の話、女の子同士の友情、リアリティあふれる子供達の衣装。それにちょっとだけ「萌え」をふりかけした感じ。
男性の思い描く、懐かしい少女のイメージをうまく調理してトッピングしてるんじゃないかな?と思うんですヨ。こりゃ「サイカチ」も読まないとならんな。

三浦靖冬「えんじがかり」より。
この作者の作品を読んだことある方なら、一発でわかるこの独自な世界観。ステキすぎ!
廃墟や学校など「失われた時間」と「少女イメージ」のミックスジュースに、ロリータなんだけど心のよりどころになりそうなキャラクターをフロートにして浮かべています。溶け込んでいるようでぷかぷか浮いている感じ。
少女像は時として「喪失感」の一つになりますが、まさに「15歳以下」という区切りを「失った時間」に換算している作品だと思いました。すでにこの子人間ですらないしネ。
 

石黒正数「14歳 性の相談室」より。
この作品だけは、萌えとかだいっきらいって人にもなんとか読んでもらいたい。つかこの10ページのマンガのために「いちご」買ってもいいと思いました。作者は「それでも町は廻っている」の人。
萌えに萌えのオンパレードな雑誌の中で、男率9割の特殊マンガなんですが、これこそまさに「いちごだろう!」と思いました。うん、自分で言ってて何言ってるんだかわかんなくなってます。
そもそもこの本、男性で15歳以上の男子が対象じゃないですか。それらの男子がクラスの少女の成長の様子に一喜一憂するのは、懐かしいやらときめくやらで大変です。全然しらないファンタジーな超美人よりもクラスの隣の席の子。しかもその子とも別に話せるわけではなくて高いカベがあるわけです。異常に高まる性への好奇心と、リアルの女の子は全然かみあいません。が、偶然かみあった瞬間のときめきのほとばしりときたら。そんなマンガなのですヨ。
大人になった男子の持つ少女への印象は、それだけで郷愁でぱんぱんです。エロとか性とかじゃなくて、存在自体がもうノスタルジックへの憧れなんだろうな、なんて考えちゃうのです。

  • 少女じゃない少女。中身は男の魂。

特殊ゾーンとして男の魂を少女オブラートでくるんだ作品も掲載されています。

野上武志セーラー服と重戦車」より。
「萌えよ!戦車学校」の人といえば「あー」って感じのこの作者。今回も「あー」です。もうこの雑誌の意図にあわせるつもりがないんだからもう。ホレル。
ここで描かれている少女はロリータ臭をねこそぎはぎとられています。少女の皮の下に男のロマンと魂を詰め込んだ、という印象です。だからこの作者大好きなんだよなー。ヘタすると、少女という名前の戦車のパーツだもんなあ。ほんと戦車萌え。


自分が大好きな「シンシア・ザ・ミッション」の高遠るい「カタナちゃん斬鬼傳」より。
もう見て何がなんだかわからないコマですが、「バキ」と「シグルイ」ネタです。さすが元同人界の異端児。「シンシア」もだけど開き直りっぷりがむしろ清清しい。
少女が暴力を持つとき、ギャップを楽しむというのもありますが、自分の理想像の投影だったりするんじゃないかと思っています。巻末コメントがまたすごい。

「別にこの漫画が作者の理想の死に方って訳じゃないです」

理想なんですね。高遠先生、最高すぎっすよ。
一応どちらのマンガも「萌え」っぽい何かでくるまれているものの、中身は完全に漢の魂。これからはこういうのがぐんぐん伸びてほしいと願います。なんでかってーと好きだから。戦え、少女。

  • 少女詰め合わせパック。これからの萌え。

「萌え」の記号の純化を狙うマンガは決してキライではないです。その「萌え」への愛があるのならば。
しかし、記号パーツに頼ってくみ上げたマンガ「だけ」ではさすがに全体から無機的な感じがしてしまい、ちょっと苦しい気もします。作り物化された「萌え」は鋭さを増して最近は面白いけど、それだけだと量産ハンバーガーのようになりかねません。
今後萌え系統の雑誌が増えるのならば、こういう「萌えを客観的に見ている」個性の強いマンガ家の割合が増えていくことでそのバランスを保ち、「どっぷり萌えろ」「でも一旦離れろ」の行き来も必要なんじゃないかなと思ったりするのです。
少女イメージに食い尽くされる前に一旦がばっと引き離してくれることで、見直すことができて、全体が楽しめたりしますしね。

  • vol.2に期待すること。

「萌え」とか大嫌いな人は絶対手にとらないであろうこの雑誌。確かに萌えエロ寄りな傾向にありますが、「ロリ=萌え」一本槍じゃない、色々な角度の視点を持ったマンガ家を集めたことは個人的にかなりポイントが高いです。今後も、独自な感性や思想を持った作者を集めて「少女」を描いて言って欲しいと切に願うのでした。今回のメンツの続投希望。
 
あとは元気な太眉っ子のマンガ入れてくださいオネガイ。
 
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残念ながら百合は0でした。

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