たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「女装男子」と「性転換」の明日はどっちだ。

ハヤテのごとく!」のデフォルト主人公は綾崎ハーマイオニーさんでいいと本気で思ってます(ぷらずまだっしゅ!)たまごまごです。

「今の女装男子ブームは男性の少女化が〜」と、『おとぼく』人気をジェンダーに結びつける人によく見られる法則(ラブラブドキュンパックリコ)マンガ☆ライフより)
あいたた。痛いとこ突かれた気がします。確かに「女装少年物」としてあげられる範囲は極端に狭いかもしれませんネ。
もっとも狭いっつったって、元々そんなに多彩で広いジャンルじゃないんだけどネ。ただ、「おとぼく」「かしまし」話題は自分も多いです。
 
ただ、よく考えると、「かしまし」なんかは女装はしてないんですよね。性転換物で、流れ的には「らんま1/2」や「天使な小生意気」に近いのかな、と一瞬迷ったのですが、同じジャンルだとは思えないんですよねなんだか。
ジェンダー論の難しいことはよく分からないのですが、「女装少年ブーム」ってほどブームでもない気もするので、自分なりに知ってる範囲で整理しておこうと思いました。あくまで知ってる範囲です。ラブラブドキュンパックリコさんの書いている作品は分からない自分は勉強不足。
 

●性転換・女装の傾向を考えてみる●

まず、「女装する少年が出てくるマンガ」と「性転換物」には一つ大きなカベがあります。これを縦軸にします。
次に「女の子っぽい精神」か「男の子っぽい精神」かでまたかわってきます。これを横軸にします。

         性転換
          |
      1   |   2
          |
女性的------------------男性的
          |
      3   |   4
          |
          女装


1・性転換物。精神も比較的女性的
  「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜
  「僕と彼女のXXX」
  「ぼくはおんなのこ」
2・性転換物。中身は男性的でギャップがある。
  「らんま1/2」
  「天使な小生意気
  「ふたば君チェンジ」
  「けだものだもの」
3・自ら女装を望んで行っているキャラ。
  「放浪息子
  「少女少年GO!GO!ICHIGO!」
  「逮捕しちゃうぞ!」葵
  「はぴねす!準にゃん
  「バーコードファイター」桜
  「ストップ!ひばりくん」
  「ゆびさきミルクティー
4・何からの理由で女装をすることを余儀なくされてしまったキャラ。
  「乙女はお姉さまに恋してる」 
  「ミントな僕ら
  「椿ナイトクラブ
  「ハヤテのごとく!
  「少女少年」ICHIGOではない方。
  
まだまだ山のようにあると思いますが、自分の知ってる範囲で。
この中にクィーア(おかま)としての要素を意図的に強くして描いているのを入れていないのは、別に差別とかでもなんでもなくて、女装男子を「ブーム」としてみたときに「マンガのキャラとしてかわいい」と言うのを外せないから。おかまとしての生き方をテーマにしているのと、女装に「萌え」を求める物の区別程度と考えていただけると幸いです。「ニコイチ」とかも悩んだけど、テーマが別のとこにある気がするので抜きで。「Mr.Clice」や「鉄腕バーディー」なんかもまた別方向の「燃え」を含んでいそうなので今回はカット。
 

●「女の子になっちゃった」と「女の子になりたかった」●

2と3は比較的多くの作品でキャラとして登場しているだろうなあ、なんて感じました。
2の作品ですが、作中イベントで精神入れ替わりとか、朝起きたらカフカの変身っぽく女になっていたなんてのもネタとしては多いですよね。カフカはウソです。
もちろん作品ごとにテーマがあって、それを描くために使われるのですが、「ギャップを楽しむ」というのは欠かせないよなあ、と自分は感じます。だって、男性が朝起きたら女性になったら最初に何をしようと考えるんだゼ?です。「おれがあいつであいつがおれで」ってなもんです。
3の作品も、それぞれ女装した理由は個々にあるわけですが、「女性らしくなりたい」というのがこれまた一つのポイントとして描かれると思います。それが同性愛かどうかはまた別の問題。かわいらしくいたい、と言うキャラもいれば、好きな男性に愛されたい、と言うキャラもいます。「放浪息子」はここに突っ込んじゃいましたが、ちょっと違うかも?
今のブームとしてみるなら、「はぴねす!」の準にゃんでしょうか。とにかく誰よりも女の子らしい、けど男。という「付いてるか付いてないか」の差みたいなノリがあるんじゃないカナ。「少女少年 GO!GO!ICHIGO!」や「ゆびさきミルクティー」もそうですが、ただ「かわいい男の子がイイナ」ではなくて、セクシャルな描き方に重点おいてます。
 
やぶうち優少女少年GO!GO!ICHIGO!」より。
意図的にドキドキさせるようなトリック満載です。少女的というよりも、少年愛的な要素も含む部分が多いかな、と思ったりもしました。このへんで「男らしさからの逃避」と言われることもありますネ。うん、その通りだと思います。
しかし同時に、「かわいければどっちでもイイヨ」という人の方が多そうです。少女・男装少女・女装少年・少年、とにかく全部好き、という節操のない人。女装少年が好き、というより「性格or外見がかわいければ好き」という人。
まあ誰かって言うと自分なんですけどね。
 

●内面がおとなしい子の性転換と、むりやりさせる女装●

さて、今の「萌え」文化として話題になりやすいのは、1と4なのかな、と考えています。
1の代表格としてあげられるのは「かしまし」「かしまし」自体が、百合的な絵柄を持ち合わせることと、キャラに男性臭さを感じさせないこととの両方を詰め込んだ特殊な作品な気がします。
自分も何回か書いたのですが、「かしまし」でのはずむを見る視点って、男性側だと友人の明日太視点に集約されるんですよネ。かわいくて親しいやつ。こんな子が恋人なら!でも友人で男…でも…!!という感じ。それを明日太の煩悩視点でコミカルに書いているからさらっと笑えるものの、男性でも女性でもない「少女性」だけを残した、珍しい例かもしれません。

森永あい「僕と彼女のXXX」より。
そこまで特殊ではなくても、おとなしい男の子が女の子に性転換するというのは、他から見て「中身男なの分かっていても女の子にしか見えない」というポイントがあります。こうなってくると、外見がかわいければかわいいほど、増幅効果で男性にも女性にも愛されるキャラへと変化していきます。ああほんとかわいいな!(鼻血)こちらは彼女に男性が迫っていくシーンがあるので、BL的な部分もちょっと含むかもしれません。
 
そして、これからは4が光っていくのではないかと踏んでいます。あ、個人的な妄想ですが。
かわいい男の子に、女の子の格好をさせたいというのは、ショタコン魂を抱く人のハートを狙い撃ちします。自分から望んでではないので、悩んだり困ったりするのがいいんですヨ。「ハヤテのごとく!」のハヤテ=綾崎ハーマイオニーさんなんかはそういう面で、世の男女を悩殺しています。ハヤテにむりやり女装させたいというお姉様(お兄様)は多いのではないかしらお姉さまごきげんよう
「おとぼく」もそういう面では主人公瑞穂の困惑や振り回されっぷりと、それでいて完璧なお姉さまっぷりを発揮するのが痛快(?)なのではないかと思いました。
そういう特徴があるから、目立つんですよねこれらの作品。「おかまではないよ」「でもかわいいよ」と言うのがきちんと描かれていればいるほど、「少年性」が際立ちます。こちらは性別を失った中性の魅力、というよりは、少年の持っているかわいらしさに少女性を付加した、上から見る視点だと思うのですがどうでしょうネ。
自分はこういうタイプのマンガには「困惑が見たい」という願望がどこかしらに眠っているので、ひょっとするとちょっと攻撃的な見方かもしれません。本当に乱暴で雑な男の子の女装マンガは、ここには入らないでしょうしネ。
女性による、男性キャラの女体化ブームも「困った顔が見たい」ってのはあるんじゃないかと予想してるんですが、どうかなー?
 

鉄腕アトムの少女性●

以前寄せられたコメントで、非常に納得したのが「中性的なキャラ(少女らしい男性キャラ)の根っこには鉄腕アトムがあるのではないか」と言うものでした。
鉄腕アトム」は一応、死んだ息子の天馬飛雄に似せて作ったのだから、男の子です。が、そのデザインは女性のパーツの記号を持っているんですよね。と、確か本人か手塚真が言ってました。ソース消失失礼。
歩き方は少女のようなしなやかさで、腰つきの色っぽさは女性のそれを含みつつ。意図的にそれが描かれ、アトムは「女性的にかわいらしい男の子」の記号をしっかり持っていると思います。ただ、言動はヒーローとしての少年の心を持っているので、あまり少女っぽいキャラとしては見られません。
しかし、むきむきでたくましいヒーローにはない「安心感」が、その少女らしさによって表現されているのでしょうネ。
萌え女装キャラにも、アトムから連なる「やさしさ」「安心感」が受け継がれているのかもしれません。
 

●大ブームにはならないけれど。●

「少女性」と「少年性」の持つ無垢さ・かわいらしさ・被虐性・おだやかさ、それらをミキサーにかけて混在させると、中性的になる、と見せかけて実は「性」が明確化していくような気がします。
「萌え」という言葉の意味が持つものの幅があまりにも大きくて、「かわいらしい」をさすのか「性的な刺激を持っている」物をさすのかは、個々の判断にお任せします。しかし女装・性転換の持つ「萌え」は後者でしょうネ。ひっくり返すことで目立つ性もある、のかもしれません。
それらを見て「少女になりたい」という願望のまなざしを向けることもあれば、「萌え」の記号を持った少年達を遠くから眺めていたいという距離を置いたまなざしを向けることもあります。そこにあるのは、「男性」「女性」ではなく「少年性」「少女性」なのかもしれませんネ。「少女性」の割合は高めかもしれません。
いずれにしても、これがメインカルチャーにはならないでしょうし、ツンデレ並のトップランナーにしようともあまり考えないかもしれません。自分もオタクの端くれとして、これらが一大ブームを起こすかななんて考えることもありますが、こういうのってこっそり隅で「萌え」るから楽しいんだよネ。
そこにリアルな人間としての性を考える場合は、「放浪息子」をイチオシします。
 
さて、これからくるのは、「普通の男キャラなんだけどヒロイン的」なのと、「女装していてそれでいて猟奇的」の2つだと読んでいます。
ごめんなさい、読んでいますってより願望でした。
パンプキンシザーズ」の伍長のように、すげーごついのになんだかヒロインのような位置づけの男性とか。
ブラックラグーン」の双子や「美女で野獣」の空のように少女っぽいのに猟奇的な攻撃をしかけてくるやつとか。
うは!萌える!
 
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女装男子で「少女になりたい男性観」を包含した作品って考えると、「萌え」の要素が外せなくなってくるので、自分はやっぱり「かしまし」や「おとぼく」になっちゃうなあ。他の作品もしっかり読んでみるべきなんだろうけど。「少女少年」や「ストップひばりくん」とは歩いている思考のルートが別かもと思いました。
 
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女装少年ブームがあるとして、そこには「現実の女性嫌悪と表裏一体の女装(より望ましい女性性の表現)」の意味合いと、これまで「少女」イメージに置き換えられてきた「素敵」という少女的価値を、自ら体現することが可能なもの(男性らしさの修正)と考える意味合いという少なくとも2つの要素があるのではないか。

メカビvol.2
YU-SHOWさんの「かわいければ♂でもいい?」が今の女装男子文化をまとめているので、こちらも必見。