たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

脳髄は人間の中の迷宮であるという観点からあえて許そう。筋肉少女帯「SISTER STRAWBERRY」


曲目
1、マタンゴ
2、キノコパワー
3、夜歩く
4、日本の米
5、ララミー
6、いくじなし

残念ながらこれも廃盤。しかし出回った数は多いようなので、中古やオークションで安価で手に入ると思います。
仏陀L」からごっそりメンバーが変わった二枚目のメジャーアルバム。ドラムに太田明が入り、ギターは抜けてジェットフィンガーの異名を持つ名ギタリスト、横関敦がサポートとして入っています。
とにかくリズム隊(ドラム・ベース)の音が段違いに進化しています。そして、三柴江戸蔵と横関敦のかけあいの妙はこのアルバムでしか聞けないでしょう。
あとは、歌詞の物語性が非常に強くなったこと。ナゴム時代の曲を引っ張り出しながらそれに語りをつけ、歌詞を読むだけでも、成立する世界観はシスベリ(って書くとラブベリみたいだなあ)から肉付けが始まっているのかもしれません。とにかくオーケンのぽそぽそした語りが印象的なアルバムですヨ。
 
何はともあれこの曲で一番に書かなければいけないのは、筋少ファンなら一言一句覚えているであろう6曲目の「いくじなし」
なんと9分12秒にも及ぶ長い曲で、短い曲の多かったこの時期としては異例でした。とはいってもプログレッシブロックのことを考えるとそんなには長くない、という感じ。プログレの影響を強く受けたオーケンの代表曲でしょうネ。
「フェティシストの兄はいくじなし」というやけに耳に残るフレーズではじまるこの曲、何のフェチ?っていわれると、確かゴムだったと思います。その部分、カットになったんじゃなかったかなあ。アンテナ売り、というのが今回もキーワードになっていて、今後も続きます。しかも、それはテレビがない村でも売るので、「まったく役に立たないもの」という認識です。
では何を受信するの?オーケンは非常に手探りで、自分自身わからないところを行ったりきたりして「逃避してしまおう」と言うのが今回のアルバムのミソになっているようです。
 
マタンゴは名前のとおりキノコのお話。キノコ人間になってしまう「マタンゴ」はおそらく、カルト映画マタンゴからきてるんでしょうね。
「キノコパワー」は「リュックに子猫を詰めて遠くへ逃げよう」と歌います。ここでも猫が出てきます。キノコで遠くへ逃げるというのはもちろん、アレのことです。

すっかりキまった人たちの逃避願望を歌うこの歌。オーケンが「急に色々動き始め、どうすればいいのかわからなくなって、とにかく逃げ出したかった」と言っていたこともあり、なかなか真に迫った「逃げたい」感いっぱいです。

昔、ジェリー藤尾は、「遠くへ行きたい」と歌って喝采を浴びたが
「遠くへ逃げたい」と唄う僕を、シスター・ストロベリーは恥じているようだった

そして「逃げずにがんばれ」とは決していわず、「とにかく逃がしてくれ、ほおり投げてくれ」でシメ。このへんの若者の「追い詰められる感覚」が、筋少の魅力的なところだと思います。主張が強いんじゃなくて、ただ自分の心の混乱が、セカイのすべてなんですよね。先ほどの「いくじなし」も、逃げて逃げて遠くに旅に出て、生きていく決意をしたとたん死んでしまいます。こーのいくじなしが!
 
「日本の米」はこれまたオーケンお気に入りの一曲で、「特撮」でもリメイクされています。歌詞は非常に単純で「米米米米」の繰り返し。ライブや特撮版は曲として演奏しているのですが、シスベリ版はオーケンの寸劇が入っていて、これがまたどうしようもないダメ感あふれていて面白いので機会があったら是非聞いてみてください。
 
「ララミー」「夜歩く」は得体の知れない少女の話。夜歩くはまだ「私が幽霊になったら」という彼女なのですが、「ララミー」に至ってはよくわからいけれど陵辱されているという謎な設定。

「申し訳ない!君のララミーは 深夜コンビニエンスストアーに遊びに行くような少年によってなすがままにされてしまった」

このフレーズすごい好き。幽霊になったりなすままにされているのは、表題にある「SISTER STRAWBERRY」なのでしょうか。
 
緊張ゆえか、少しオドオド感があるこのアルバム。いや、曲と歌詞は格段に進歩している名盤ですが、どこをどう歩けばいいのか、できれば逃避した生活を送りたい、というネガティブさにあふれています。すいませんすいませんごめんなさい、というしゃべり方が印象的。だからこそ、「いくじなし」の共感度合いが異常なのですヨ。絶対ありえないシチュエーションなのに、今でも多くの人の心にフェティシストの兄と、一緒に旅する自分とに、聞いている人の心が重なります。ダメだとわかっていても、遠くに旅に出てしまう。そんなアルバムです。
 
蛇足ですが、キノコパワーなどを歌うオーケン、ドラッグマニアですか?と言われるとまったくの正反対で、キノコ恐怖症です。一度海外で調子に乗って食べたマジックマッシュルームでバッドトリップに責めさいなまれて、本当のトラウマを作ってしまったそうで。麻薬ダメ、絶対。
 
次回は「猫のテブクロ」。

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ちょっとずつ追加してます。
「筋少のライブにいったまま、帰ってこなかった…」筋肉少女帯「仏陀L」