たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ククルカン」に見る、戦争ネタのいいとこどりな楽しみ方。

●ぬるミリタリオタがおどおど歩く。●

はて、自分はミリタリーが大好きです。
どこがいいかですと?それはあの軍服の機能性や色や形、銃器の鈍い光、戦車や戦闘機が舞い踊り血沸き肉踊るような戦場の空気、あと(以下2時間)ですよ!ロマンだよねロマン。
「んじゃあ戦場に行って来なさいよこの戦争を知らない子供たちの子供たち!」
「今までの軍事の歴史知ってるの?ミリタリーバランス読んでるの?」
あ、えーと、その…すいません。もうしわけない。
 
…という具合にミリタリーが好き、とは言ってもぬるいオタでしかありません。だって、ミリタリー趣味ってハードル高くて難しいし、リアルな戦争は怖いし。うん、戦争はよくないよ。絶対。
だけど、その雰囲気は表面のクリームだけなめたいわけですよ。なんともオタとしては情けない生き方でありますが、その気持ちわかっていただけますか閣下!
現実にはむりなんですけどね。というわけでマンガでサラリと「おいしいとこどり」をしたくて、色々読んでいます。
しかし戦争もの・ミリタリーものとなると、完全に軽く楽しめる物は非常に限定されてきます。そりゃそうです、命のやりとりをしているわけですし。しかも設定が複雑で深淵になると、読むハードルもぐんとあがります。そしてやけくそに男くさくなります。リアリティを追求するならばしかたないことです。それはそれで、とても面白いので大好きです。
しかしそれでも、贅沢な悩みだよなあと思いつつ「おいしいとこだけ」食べたいわけです。この思考ってとっても日本のオタクっぽい気がします。
今回は「ククルカン 史上最大の作戦から、ケーキのクリームの部分だけをなめられるような戦争マンガの楽しみ方を考えてみようと思います。
 

●戦争マンガのハードルの高さはどのへんにあるか●

自分もそんなに詳しいわけではないですが、戦争・ミリタリーマンガは「ハードルが高い」という印象が強いです。代表的な作家としては小林源文先生とかかわぐちかいじ先生でしょうか。あとは秋本治先生や手塚治虫先生、松本零士先生はガチですね。ファンタジーですが、皇国の守護者くらいまで含めてもいいかもしれません。パンプキンシザーズは戦後復興の話だからちょっと違うかな?でも今回は幅広めにとってそこら辺も入れちゃって考えて見ます。こちらが詳しいです。非常に参考になるのでぜひ。
戦記ブーム以後の戦争マンガ(漫棚通信ブログ版)
 
はて、基本的に「戦争・ミリタリーマンガ」というジャンルを選択すると、切り離せない部分がいくつかあります。

1、人間の死。
2、悲惨で極限の兵士の精神状態
3、日常と違う、狂った価値感覚
4、多くの予備知識

逆に言えばこの部分こそがマンガとしての醍醐味ですが、同時にこの部分がマンガとして「人を選ぶ」はめになります。
んじゃあ、いっそこのすべてをとっぱらったらどうなるのでしょうか?
「なんちゃって戦争」のはりぼてが残ります。エアガンを打ち合い、風船を撃つような戦車が現れ、切り傷をしたら大怪我です。お、なんだかマンガ内サバゲみたいですね。
 

●「ククルカン」のキャラは誰と戦っているのですか?●

高田慎一郎先生のマンガ「ククルカン 史上最大の作戦」では、見事にそのへんをクリアーした、非常にクリーンなミリタリーマンガとして昇華されています。
まず、1の「人間の死」をこの作品では一切描いていません。

戦う相手は、ガイコツみたいなよくわからないもの。たまーにやってきて、ゆっくりと近づくのをプチプチ撃ち倒します。だから兵士たちも、人間を撃った経験がほとんどありません。
主人公リプトンはいいとこのお坊ちゃまで、射撃の名手なのですが、やはり人間は撃てません。そう、人間同士で争うシーンがないのですよ。あらー、なんと平和でしょう。いや、平和じゃないから軍隊があるわけですが、その敵も頻繁に進行してくるわけでもないし、急激に攻め寄せる緊迫感もないわけです。

6年間、死者は0の軍隊。いやあ、いいですね。ケガはもちろんしますが、これまた大人数の美人ナース部隊がかいがいしく世話をしてくれるという幸せっぷり。なんかこの軍隊なら入って頑張りたくなります。不純な動機?いやあ、でもそういうキャラだらけです。
ここまで恵まれていると、いつ死ぬかわからない!という極限状態が皆無になり、2のような極限の感覚も薄れてきます。時々ものっそい頑張るヤツも出てきますが「いや、そこまでやらなくていいよ」と言われるくらい。
いい意味でとても、ぬるい!
 

●男が命をかけるものってなんですか?●


さて、こういう世界観でも、命を賭して戦わねばいけないときがあるわけです。落下傘部隊で銃弾の中をかいくぐって、さらに進まねばいけない瞬間があります。
それはなんでしょうか。地位?名誉?勝利
いえいえ。
女の子の着替えです。
軍の制服を着た少女たちが、軍服を脱ぐのです。ほら、萌えませんか?自分は匍匐前進したくなります。
しかし、女性たちも本気です。ここは譲れない砦です。

実弾で応戦する構えです。
なにをやっているんでしょうか軍隊内で!自分も混ぜてください。
1度ではなく何度も「のぞき作戦」に命を賭けており、ぶっちゃけ敵(?)の侵攻よりものぞき作戦のほうが迫力満点で描かれています。…いや、それは言いすぎでした。かなり敵との戦闘は迫力あります。
が、リプトンが必死に敵と戦う理由が「おしりを触りたいから」だから、やっぱりぬるーいです。ほんといい意味で。そんなわけで、3の狂った価値観はプラス方向に大きく作用しているので、まったく暗さを感じさせません。
 

●予備知識なくとも、それっぽい空気を感じられる世界●

なんかここまで書くと実戦がないように見えるかもしれません。しかし、この作品の魅力の一つが乗り物である「ククルカン」で、そこはかなりしっかり描かれています。

どういう仕組みで飛んでいるのかを考えるのもまたたのしいデザインのこの乗り物。自由に飛び回るバイク、という感じです。もともと戦闘能力は高くありません。ナウシカでいうと、ガンシップよりメーヴェという感じ。
この疾走感にあこがれてリプトンは、射撃の腕やボンボンの地位を捨てて入隊しますが、その爽快感が鮮明に描かれているからまたたまらない。

男女問わず、こんな光景夢に見た人多いのではないでしょうか。確かにリアリティで考えると非常に危険極まりない雰囲気ではありますが「空を疾走したい!」と願う人にとって、こんなに魅力的なシーンはなかなかないです。
ミリタリー部分で見ると、そこまで執拗に細かく何かが描かれているマンガではないですが、ちゃんと「ミリタリーのカッコイイ部分」はすくいあげられています。ファンタジーという設定にしてあるので、出てくる小物類もどう使うのか考えるだけでワクワクする。そんな楽しみ方もできるのです。銃器については詳しくないのでわかってないのですが、本物かな?
 

●ヒロインは、とてもやわらかいものなのだ●

はて、この作品の一番の魅力は、魅力的すぎるヒロインたち。特にもう一人の主役茅野つばさのやわらかそうな感じは必見です。

軍隊でククルカン乗りになるには男性でなければいけません。そんなわけで男装をして入隊し、リプトンと同室に入ることになります。
一応男と偽れるくらいの体型のごまかし方はしているのですが…や、やわらかそうですネ。
見た目がショートカットなので、一見リプトンと似ているように見える彼女ですが、とにかく作品内で「あまり女性的な肉がついていないけれどやわらかい」という雰囲気がねっちりと描かれます。

同室なので、寝ていたらこういう光景もまれに見えるわけです。いくら男の子と偽っていても。このやわらかそうな描かれ方は尋常ではありませぬ。

ああ、女の子ってなぜこんなにすべすべでやわらかそうなのでしょうか。
 
 
男装をした軍服シーンでも、そのやわらかさはいかんなく発揮されています。いくら偽っていてもこれなら気づくだろう?と思いますが、思ったとおりやはり怪しまれることも。そして、最近は…読んでのお楽しみに。
ほかにも山のように女の子の出てくるマンガです。そしてそれらがみんな魅力的なんですよ。特にナース部隊の制服のかわいさは異常です。ミリタリーっぽくて、ミニスカート。これでぴくっときたら、読んで損はないです。
しかし、やはり微妙な肉付きとやわらかさで表現されている茅野つばさのかわいさは群を抜いています。スレンダー+ちょっとやわらかい。すいませんツボです。
作者の愛情を存分に受けているキャラって、本当に生き生きしますよネ。
 

●ラブコメです。●

ミリタリーアクションの体裁をとっているものの、この作品の本質は「ラブコメ」。作者も「恋愛漫画です」と明記しています。

作中でも、ラブコメ的な王道の展開はしっかりおさえられており、ミリタリーにまったく興味のない人でもニコニコしながら楽しめます。あー、そこでこうするのかー!そっちじゃないそっちー!とか言いながら、ラブコメ見て転げまわれる人向けです。つばさのかわいさはもちろん、リプトンのへたれっぷりもまたたまらなく愛しいのですよ。どこでかみ合うことになるのやら。
 
ミリタリーマンガとしても、ラブコメマンガとしても楽しめる要素満載で、入り口のハードルは限りなく低い、そんなマンガなのです。
もしかしたら、ミリタリー好きの人としては「ここがものたりない!」という説明不足感があるかもしれませんが、そこのSF的+ミリタリー的部分を空想で補っていくのも、また楽しいですヨ。
 

●戦争はよくない、でもかっこいい●

手塚治虫先生がマンガの一コマで書いていたセリフ、何度も引用していますが、非常に説得力あるんですよ。
もちろん戦争はダメ。よくない。
けどミリタリーの楽しみ方の一つは、「それはそれとしていかに客観的に楽しめるか」だと思うのです。その極北が「MC☆あくしず」などに代表される萌えミリタリ物でしょうか。確かにどう考えても異端に無理やり萌えネタにしているのですが、「それはそれ」と考えれば女の子+ミリタリーで男の心をくすぐるのも当然でしょう。このへんまた「無機物と少女」として考えてみたいところ。
「ククルカン」は非常にいいバランスで、男の子の心をくすぐる要素の「いいとこどり」になっています。これが万人に受け入れられるとは思いませんが、自分のような「ぬるミリタリオタ」が楽しむには非常に良いのではないかと思います。
最近はこのようなタイプの、ミリタリーのカッコイイ部分だけを引っ張り出して、良質なネタと組み合わせて「一つのシチュエーション」にしているマンガが増えていて、個人的には非常にうれしいところ。
賛否両論おきやすいジャンルでもあるのですが、こういうところで楽しめる「心の余裕」こそが、一番楽しいマンガの読み方なんだろうな、と思いました。
 
考えてみたら、宮崎作品である紅の豚」「宮崎駿の雑想ノートなんか端的にそうですよね。自分の中でフィオは宮崎アニメヒロインで2番なのですが。1位はシータ。
 
ククルカン~史上最大の作戦~(1) (Gファンタジーコミックス) ククルカン史上最大の作戦 2 (Gファンタジーコミックス) ククルカン史上最大の作戦 3 (Gファンタジーコミックス) 
ククルカン史上最大の作戦 4 (Gファンタジーコミックス) ククルカン史上最大の作戦 5 (Gファンタジーコミックス) 宮崎駿の雑想ノート
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