たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

電波虫は飛びかって私に電波を送るの。大槻ケンヂ「リンウッド・テラスの心霊フィルム」


大槻ケンヂ、最初の詩集です。本として発売されたのも、初めてですね。ナゴム時代のものと、メジャーデビュー後のもの、そしてオーケンのショートストーリーが収録されています。
1990年に初版が出ています。現在は文庫版が発売中。コレクターなら初版のほうも手に入れたいところですが、「エリーゼのために」の楽曲を含む詩が20編以上が収録されているので、文庫版のほうが絶対おすすめです。
また、詩集としてだけならば後に発売された花火 (ダ・ヴィンチ・ブックス)(AA)の方が断然量が多くてよいのですが、いかんせんこちらは詰め込み感も満載です。詩集のつくりとして「心霊フィルム」のほうがオススメ。また多くの強烈なショートストーリーはこちらでしか読めません。
 
筋肉少女帯の音楽は、歌詞と演奏が奇跡的に組み合わさったからこそ生まれたものではありますが、その中から大槻ケンヂの歌詞を抜き出し、読むのはなかなかオツなものです。
言葉のつむぎ方が、はやり歌のそれじゃないんですよね。もうとにかく世の中を斜めに見た視線からの言葉を探し、ストレートな表現を一切使わないものだから、一発で覚えてしまいそうなキーワードが本当に多いんですヨ。それはこの後につづく小説でいかんなく発揮されていきます。
 
はて、ショートストーリーとして、「電波虫」「なつみさん」「屋上」「モンブラン」「サイコロ小僧」「リンナのこと」などが収録されています。
楽曲もそうですが、「電波」「アンテナ」が大きなキーワードになっているオーケンの言葉。
少女達の行動を突き動かすのは電波なのか、あるいは電波という名目で逃避する少女がそこにいるのか。答えは与えずただ奇怪な行動と絶望的なオチのみが駆け抜けます。
個人的に強烈だったのが「モンブラン」。やはりオーケン作品での「ネコ」はものすごく心理の重要な位置を占めています。それが何を表すか…は個人個人が感じたほうが、楽しいですネ。
 
蛇足ですが、「屋上」の中に出てくる少女が躁鬱で「セックス」という言葉をやたらしゃべる、というシーン。ゲーム「雫」をものすごく思い出します。
 
次回は「オーケンののほほんと熱い国へ行く」。
 
〜関連記事〜
大槻ケンヂとマンガ家。関連リスト
ちょっとずつ追加してます。
「筋少のライブにいったまま、帰ってこなかった…」筋肉少女帯「仏陀L」
脳髄は人間の中の迷宮であるという観点からあえて許そう。筋肉少女帯「SISTER STRAWBERRY」
どんなにつらくともこれでいいのだ。筋肉少女帯「猫のテブクロ」
そしてコウモリは黙して語ることがなかったのであった。筋肉少女帯「サーカス団、パノラマ島へ帰る」
住み慣れた街を捨て少年とネコが行く。筋肉少女帯「月光蟲」前編
私は月で少女たちと生きたい。筋肉少女帯「月光蟲」後編
そしてダメ人間の王国を作ろう。筋肉少女帯「断罪!断罪!また断罪!!」