たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ビーチスターズ」に見る、駆け回る少女の疾走感

●ヒロインは飛んだり跳ねたりしていこう。●

おしとやかなヒロインは好きですか。はい、大好きです。シータとか。
男の子から見た、ヒロインヒロインしているヒロインは好きですか。はい大好きです。
しかしそれ以上に、自分は飛んだり跳ねたり自由気ままに動くヒロインが大好きです。
無駄ではないかと思えるほどに大きく動き、体全身のバネをつかって飛び回り、全力を費やしてダッシュする少女がたまらなく好きだ!それは少年もでいいのだけれども、少女だからこそぼくらは憧れに近いような視点で、まったく別の世界へ大きくジャンプしていく姿にいざなわれます。
 
はて、今ヤングサンデーでかかさず読んでいるマンガがあります。それは「ビーチスターズ」
名前の通り、ビーチバレーの熱血マンガなのですが、これがスポーツあんまり好きではない自分の心にがっつり響いたのですよ。いや、もちろんビーチバレーのルールとかはよくわかりません。わからなくてもいいんですヨ!*1そんなの関係ない、猛スピードでかけまわり、ものすごい勢いでジャンプする少女達が最高の魅力で快楽だからです。
ちょっとこのマンガを紹介しながら、自由自在に飛び回る「少女」ゆえの爽快感について書いてみようと思います。
 

●飛べ!!!!●

自分、この作品はほんと雑誌ではじめてみた時、完全に一目ぼれでした。

もう興奮で、言葉も出ませんでした。
小さな少女「イルカ」が、真っ青で晴れ渡った空の下、制服で、ものすごいジャンプをしている。
爽快で、心の全てを解放してくれるような物に出会えた興奮で、胸がいっぱいになったのを覚えています。
こういう瞬間的に感じた感動をどうこう言うのは野暮なんですが、自分の心理的な部分に興味があるので、あえてメモ。

・かなり濃い目の色を使っている青空
・すべての視線がイルカに集中している流れ
・イルカのどこまでも飛んでいきそうなジャンプにあわせてそびえる入道雲
・右上から左下へとうちこまれる斜めのベクトル
・激しく速いスピードを物語る砂
・ビーチバレーなのにあえて制服

「飛ぶ」ということに全ての労力を費やしたようなすさまじいコマな気がします。
なんといっても、制服だというのは大きなポイントです。1巻では突然試合に巻きこまれるという話が多いので、かなりの頻度で制服バレーが見られるのですが、セクシーな水着ではここまでの爽快感は描けなかったのではないかと思います。服のヒラヒラ感、全力感が現れるはだしとのコントラスト、「少女が飛ぶ!」という記号性。
それが、この構図だからこそ、読者もボールを打ち込みながらどこまでも飛んでいけそうな錯覚に襲われます。描かれている方向は違いますが、「時をかける少女」のポスターの爽快感にも似ていますネ。
時をかける少女 通常版 [DVD]
ちなみにこの試合のこの瞬間のカット、実はこのあとも別の角度から描かれているのですが、それがもう死ぬほど見事なので、是非目で確認していただきたいです。あまりの躍動感に、心ごと全部持っていかれました。
 

●全力少女、イルカ●

このイルカという少女、常に全力なので本当にみていて気持ちいいんです。

泣く時も全力。
うわーん、とか、えーん、とか泣くマンガのキャラの少女ってすごい好きなんです。感情表現はストレートで直球だと、心揺さぶられます。
バレーをやりたいのに、人数が足りずに廃部になった彼女が出会ったのが、ビーチバレー。といっても似て非なるスポーツです。戸惑いいっぱいという感じで物語りは始まります。
しかしそれも一気に彼女はふっきるんですよ。そんなカベなんてもろともしない。彼女は「バレーをやりたい」という以上に「動きたい」「飛びたい」という理念で動いています。

彼女が完全に何かをつかんで、過去のしがらみから抜け出したシーンだと思う一瞬。
もっとも、おおげさな描写といわれればその通りなのですが、そこがいいんですよ!彼女の身体のバネは、「ありえないくらいにすごい」という風に周りが見ています。その驚異のまなざしで見ている視点の形も表現されています。そしてなによりも、「イルカ本人が自由感を得て動けた感じを手にした」というのががっちりと描かれています。
彼女自身、ビーチバレーという世界に出会って、ここなら自分が自由に動けるんだというのを理解していくわけですが、その感覚が徐々に開いていくんですヨ。

抑圧された記憶と苦しみの中で、なにか広大な空間を見つけ、そこに向かって飛んでいけると理解した彼女の心の疾走感!バネのように、ぎゅっと握り締めた手から飛び出そうとする力たるや。
マンガ的な表現をダイナミックに生かしながら彼女たちは、理屈ではない「飛翔」を感じて動き回るのです。

とにかくイルカの動きは、時々めちゃくちゃ。でもそんな「正解」はいらないんですよね。ものすごいスピードで球を追い、ものすごいジャンプで球に迫り、ものすごいパワーで球を打つ。イルカ自体、動きはすごいのですが、正確なレシーブが出来るわけでもないです。なのに、そのわけのわからないむちゃくちゃな動きが、読んでいる側の心をかっさらっていきます。
読者の心はボール。彼女はそれを追い、鋭く打ち込んでくれるわけです。
 

●アオゾラ●

ビーチバレーと言えば、晴天下のスポーツ。やはり青い空白い雲広い海は欠かせません。

このマンガ、その青空の描写が秀逸すぎです。光の具合や雲のバランスも絶妙なのですが、なんといっても深く濃い色の空が、どでかく広がっているのが素晴しすぎる。
カギになるコマに広がる空は、画面のかなりの割合を覆っています。その中を全身全霊かけてかけまわる少女たちの姿はあまりにもキレイでなりません。
まったくリミッターをかけることなく、全力を振り絞って体を動かす少女の姿は、非常に開放感にあふれています。それは女性から見ても、どこまでも広がる世界に手を伸ばせていた感覚を思い出させるでしょう。男性から見れば、自分とは異質の世界を見て疾走する少女像が、自分達の心の奥にある欲望を代理で全て持っていってくれるかのような快感でもあります。だから、「少女」であることが大事なのではないかと思います。
 

●バレーという格闘技●


自分はバレーはあまり詳しくないのですが、かなりイルカがムチャをやっていることだけはなんとなくわかります。実際、あまりにも激しく動き回るイルカに対して、他のキャラも驚いていますし。
はて、他に出てくる女性たちもかなりムチャをこなしてくれるのですが、特筆すべきは関西の「小倉の鷹」寺島アキラ。

砂のエフェクトを残しながら、ボールをぶんなげる姿のかっこよさときたら!ダイナマイトすぎるボディといい、技の豪快さといい、この作品の爽快感の一端を担うキャラだと思います。

彼女も、イルカほどではないけどすさまじいジャンプ力とバネを持っています。加えて彼女にはとんでもないパワーが備わっています。爽快じゃないわけがない。
アキラのよさは、非常に攻撃的なところ。もうなんというか、うまくフェイントかけて落とすとかそんな小手先のことには興味がないようで、全力で打ち込みまくります、顔面に。そんなヤワな勝ちかたは認めない、体中の筋肉を使ってボールをねじこむのです。顔面に。
もうそれが最高に快感。特に敵がどうしようもないダメ男だったりするので、彼女がテクと力でねじ伏せるのを見るのが楽しくて仕方ありません。
スピードのイルカ、力のアキラ、という感じでしょうか。
 

●裸足の威力。●

さて、ビーチバレーというと、当たり前ですがはだし。

作者の森尾正博先生もそのへんのよさを意図的に出しているようです。
とにかくこの作品の裸足は健康的で色っぽくてイイ!非常に引き締まっていながら女性らしいやわらかさを残した素晴しいはだしです。力の入れ具合や、しなやかでダイナミックな動かし方がまた魅力なはだしなのです。
百合展開はない気がしますが、これはなんともいい百合脚。…だと個人的に思ってます。
 
他のキャラクター達もものすごい爽快感と魅力にあふれた少女たちばかり。そんな少女たちに身を任せて、青空の下で強烈なジャンプを見たいなら、必見のマンガだと思います。
もちろん熱血バレーマンガとしても面白いと思いますが、それを超越したところにある自由な感じが魅力だと思うので、頭をからっぽにして夏の空にGO!
バレーといえば、少女ファイトも死ぬほど面白いのですが、これはまた別の機会に。
 

ビーチスターズ 1 (ヤングサンデーコミックス)

ビーチスターズ 1 (ヤングサンデーコミックス)

*1:わかってる方がもちろん面白いけれども。