たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「らき☆すた」22話で、泣いてもいいんだよね。

あちこちでかなり話題になっている「らき☆すた」22話。
こなたの父そうじろうと、亡き母かなたの回想シーンに、かなり衝撃を受けました。*1
と言っても、別に普段の「らき☆すた」をぶち壊して何かをやった、というわけではありません。日常生活の一部の話でした。

ここで素直に「泣いた」「感動した」と書きたいところですが、正直一番最初に生まれた感情は「泣かせだよな」という押し殺す感覚と、「やばい、もうせき止められない」という感情の暴走のせめぎあいでした。
自分、素直にアニメ見てなかったんですねェ。
 

●お涙頂戴に反発した自称15の夜●

自分は結構屈折した学生時代を送った、という自覚はあります。いわゆる中二病…いや、高二病。「泣ける!」とか「涙の超大作!」とか「全米が泣いた!」とかって書いてあると、まず見ませんでした。
誰かが死ぬとか、記憶喪失になるとか、病気とかって分かっていたら、まずダメ。完全な食わず嫌いでした。にんじんをはしでつまんで避ける子供のように、「おれ絶対そんなの見ないもんね」と意地を張ったものです。
これが困ったことに今でも引きずっており、「感動作」と書いてあるとスルーする癖が抜けません。
 
というのも、大人になった今だから言えるのですが、恥ずかしいのですよ。素直に受け入れるのが。
もっとも「感動作」とキャッチを付けた人のセンスの問題もあるとは思うのですが、実際それが感動するかどうかなんて見ないと分からないじゃないですか。だからかなりの量の損をしてきていると思います。本当に感動するものをプライドでスルーしている可能性が大きすぎるのです。
同時に、作品を見て涙を流すことを「かっこわるい」と無意識のうちに思い込んでいたのかもしれません。ひいては、何かが怖かったのかもしれません。
 
ヒネたオタだった自分は、「もっとすげーのいっぱいあるじゃん」とか「浅いよね、もっと深いこと描いてるのいっぱいあるよ、エヴァとか」と言っていたんだと思います。
確かに、「もっとすげーの」はいっぱいありますが、目の前にあるのと比較する必要は何もないんですよネ。
心が動いた瞬間に、それを認められるかは、ある意味「自分を認められるか」につながっていたんだな、と今振り返ると感じるのです。
  

●「らき☆すた」22話の、決して変わることのない日常。●

そんな自分は、ぬるま湯につかったアニメ「らき☆すた」厨。
あれのよさは「何もないから、なんかいい」だと思っています。
「らき☆すた」に流れている時間を、失いたくない自分がここにいる。
さすがにこれが他のあらゆる作品を超越した作品、とまでは思いません。しかし、どうもそのヒネたサブカル隠れオタ時代をへてきたからこそ、この普通さが確実に心に入ってきている気がしてなりません。
 
はて、22話もそんな感じで、いつもどーりの日々が最初の方で再現されていました。やっぱり4コマのテンポで、のたりくたりニヤニヤと時間が流れていきます。
そこで、避けては通れないこなたの家庭環境の話が出てきました。
こなたの父はそうじろう。今は従姉妹のゆたかと同居で3人住まい。そして母かなたは、こなたを生んですぐに亡くなっています。だからこなたは、母のことを何も知りません。

母かなたの話が出て、家の様子がしんみりするわけじゃないのですよ。いつもどおりです。
そうじろうが「さみしいか?」と聞いても、「別に」。「オレより先に死なないでくれ!」*2「そんな気はさらさらないよ。」
多分日常会話なんだろうなあ。重い話をすごくサラリと流すんだもの。挙句の果てには「死ぬんなら萌え死に」とか、笑っていいのかどうなのか分からないほど、当事者の二人は普通に会話を重ねて行くんですよ。
しかもそのすぐ後にエロゲの攻略の話をしているし。
本当に、そんなにお母さんの死は軽かったの?もう過去の出来事なの?と見ているこっちが不安になったときに、1秒にも満たない、一瞬だけサブリミナルのようにカットが挿入され、心臓が縮みました。

 
本当に、本当に一瞬だけなんです。セリフもない。
だけど……だからこそもうここで、自分は身構えていました。先ほども書いたように、「やばい」という感情。

しかし、それでこの父娘が何か顔色を変えるわけじゃないんですよね。普段どおり、バカやって、変なこといって、笑顔でこづきあっているのです。
母かなたが、それをそっと見に来ているのですが、いっそこのときこなたとそうじろうが、思い出にふけって泣けばよかったんだ。落ち込めばよかったんだ。
そしたら「ありがちなお涙頂戴だね」って、昔のひねた自分のまま笑えたのに。
 

●何も変わらないから、感じること。●

その先も、ずっとそうじろうは笑顔のままでした。エンディングまでずっと、笑顔でした。
ずるいよなあ。
笑ってるんだものなあ。
 
かなたがそんな二人を見ているのですが、そこで、そうじろうとの回想シーンがぎゅっと差し込まれます。
セリフはかなたの語りだけ。ただ、二人の日常を淡々とはさんでいきます。


そうじろう、本当にオタで自分勝手なダメなやつなんですよ。
だけど一生懸命でウソをつかず、思い切りまっすぐだから、かなたに感情移入してどんどん惹かれていきましたヨ。
そうじろう絶対いいやつだよ。だから笑ってるんだよ。

言葉ではっきりと、「愛している」と言うそうじろう。
そういうセリフを聞いて、身構える自分が悔しい。
悔しいからその反動で、こみあげてくるものが抑えきれなくなるんです。
 
それでも、画面の中の二人は、何も変わらないんだものなあ。

ふざけてデジカメ撮影していたそうじろうと、めんどくさそうながらも「しかたないなあ」と乗るこなたの写真。このときのそうじろうの顔を見ながら、こなたが生まれたときの写真を見てみると。

そうじろうの表情が、胸にくる。
このあと、言葉による説明はないのですが、かなたは車椅子の生活に移っていったことがそっと描かれています。
 

●もう泣いてもいいのかな。●

歳をとって涙もろくなったなあ、というのは感じつつあるのですが、それは身体的なものじゃなくて、心理の経験の変化なのかな、と思いました。
まあ、まだ子供生んだことないわけですが、そうじろうとこなたが、なぜ最後まで笑っていたのかを考えるだけで、胸が熱くなります。
そして彼らはきっと、この後も最終回まで笑い続けるんだと思うのです。
 
うがった見かたをすれば、明らかに泣かせには来ているというのは分かってはいるんですよ。だけど、もうそろそろそれに身を任せて、このノンキな「らき☆すた」という作品に流れている空気に流されてもいいな、と思いました。
もう気を張らずに楽しんでもいいよね。泣いてもいいよね。
特に、らき☆すたが「感動作」として作られていたわけじゃなかったこと、そしてかなたの影を見て「心霊写真だ!」と騒いだりパロディを入れたりして、ソフトランディングしながら日常の繰り返しに戻っていったことが、ヒネたオタな自分にも入ってきやすかったんだと思いました。

時間が過ぎていくからこそ、変わらない日常と変わらない思い出が愛しい。
そういう意味をすべてこめながら、「『らき☆すた』ってずるいよな!」と、ほめ言葉を言いたいなと思います。
 
ありがとう「らき☆すた」。
 
正直この作品終わったら、自分はしばらく呆けるんじゃないだろうか。
どんだけはまってるんだよ!って突っ込んでおかないと本気で寂しくなる自分がここにアリ。
そして、それくらい夢中になれるオタになれた自分は、昔に比べてそんなに嫌いじゃないかもしれない。
 

このMADの編集は反則。ずるい。泣くじゃん!KOKIAの「ありがとう」はずるい!(ほめ言葉
 

●蛇足。●

母かなたの声は島本須美さんでした。
そりゃ…長いことオタやっている人の心の隙間に入り込むわけだ。予告で「気流が乱れてうまく飛べないの」とナウシカっぷりを発揮しているのも教えてもらって気づきました。
いやあ、がっちり感情にジャブ入れた後に、パロディも詰め込んでフック。京都アニメーションにしてやられました。
らき☆すた」ってずるいよな!
 
蛇足ついでにもう一つ。何回か紹介した作品ですが、むんこ先生の「だって愛してる」を思い出しました。

売れない作家のだんなと、八百屋のバイトで切り盛りする奥さんのでこぼこライフ。
これもいつも笑顔だし、蹴っ飛ばしたり酒飲んだりのずっと変わらない日常を描いているんですが、時折その中にあらわれる現実や愛情に、理解うんぬんを超えた感情の揺さぶりを覚えます。
そしてそれが激しすぎて、いい意味で鬱になります。
えーと…読んで!今はいったん連載休止期間に入って、もうすぐ2巻がでますので、ちょうどいい機会なんじゃないかと思います。
  
らき☆すた 1 限定版 [DVD] らき☆すた 11 限定版 [DVD] だって愛してる 1 (まんがタイムコミックス) 
22話だから、収録されるのはDVD11巻かなあ。あと2話か…。
らいか・デイズ」も死ぬほどオススメなのですが、強烈に一発くらいたければやはり「だって愛してる」の方を。
感動って、すさまじい速度で押し寄せると鬱になるんだなあと自分が感じた一冊。こればっかりは自分の感性がズレているのかもしれないナァ。
 
〜関連記事〜
「らき☆すた」に流れている時間を、失いたくない自分がここにいる。
高校生が、明るくすごす作品につい、郷愁を覚えてしまう。

こなた「なんなんだろうね、この気持ち」

ほんと、なんなんだろうね。
 
〜関連リンク〜
同人誌「ゴルカム燃王」「ゴルカム萌王」 メロンに入荷(アキバBlog)
えー、なんでこれが関連かというと、「萌王」に、父そうじろうについて自分が非常に不謹慎なことを書いているからです。ああもうすいませんすいません。
でも「ロリコンでもある!」が生き様なのだから、同情するより笑ってあげた方がいいよね。
自分も「ロリコンでもあるよ!」って言ったら「お前は『でもある』じゃない」と言われました。

*1:原作は5巻に収録されるそうです。

*2:めぞん一刻」ネタ