たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

死ぬほど愉快に暮らそう。「スカタン天国」に見るポジティブな生き方のカタチ。

WEB拍手で自分のハートを貫くのがあったので、ちょっとここで紹介します。
この人は多分自分のソウルブラザーだと思いました。そんなん言われても迷惑だと思いますがソウルブラザーです!

昨日の拍手レス読んだ後に急に頭に浮かんできました。
こなたとそうじろうの関係が『スカタン〜』(北道正幸)のリカと零次にかなり近いんじゃないかと。自分の中でのそうじろうに対して感じた違和感は『スカタン〜』との親子関係の描写のギャップから来てる部分もあるようなので、
うーん…すみません、うまくまとまんないです。書けそうだったらまた拍手送ります…。

おお!こんなところで北道先生の名前が出るなんて!
ちょっと興奮したので、大好きだった「スカタン天国」の話を、時代と逆行して書こうと思います。この作品、思想のくっきりしたギャグマンガとして名作だと思います。
ネタも面白いし、描写も奇才的だし、それでいてツボおさえるとこおさえてるんですよ。
 

●「スカタン」なやつら。●

「スカタン野郎」は、月刊アフタヌーンに連載されていた、1995年くらいの作品です。
舞台はコテコテの大阪。主人公は人体模型の定吉。この時点でなにかおかしい。途中から主人公が女の子のリカに変わり、名前も「スカタン天国」となりパワーアップします。
略して「スカパラ」。ええ、多分意図的。
北道先生の画風がものすごく緻密なのが功を奏して、類のないなにわパラダイスを作り出しています。ある意味、ものすごい勢いで才能を無駄遣いしているようにも見えますがそのへんは…後ほど。
そんなわけで、ちょっと一般的なギャグマンガと形式が違っています。

いきなり反則。
このパターンは「G組のG」なんかでも使われていましたが、いかんせん北道先生の絵がうまいのにムチャをかますもんだから、その奇妙さたるや。
唐突なセリフ、脈絡のないネタ、コテコテベタベタなギャグに、無理矢理すぎるリアクション。
まさに、マンガの中の人物たちが、全力と魂を費やしてボケと突っ込みをしている、という印象です。

こういう無駄に凝った解説が多々入るのも特徴。宣伝広告の体裁を取って一見本物に見えるネタを仕込むこともあり、アフタヌーンを購読しているファンは驚いたものです。あまりにも凝っているので、とりあえず北道先生掲載ページ近辺は「何かあるな」と警戒したものです。
また、「解説ガール」とよばれるネタ解説キャラをたびたび登場させて、コテコテのネタを紹介していく技を多用していましたが、しまいにはその解説ガールだけで1話作り上げるという自由作風っぷりをも見せてくれました。
ええ、かなり昔のマンガですが、おそらく思っている以上に緻密でフリーダムです。
かなり全体的にハイテンションですが、それに比例してリカのマイペースっぷりが非常に映えるんですよ。

ナマケモノかあ…ええ、理想ですな。そうありたい。
時にムチャクチャ、時にナマケモノ
そんなリカはかなーりかわいい&他にこんなヒロイン多分ほかにいないです。あえていえばアラレちゃん…いやちょっと違う。
 
はて、この「スカタン」シリーズはそれだけでも十二分なほどインパクトを放つ作品なんですが、今見ても興味深い「笑い」の柱が明確に提示されている、特殊なマンガだと思います。
 

●なぜギャグマンガのキャラは、バカなことを選択するのか?●

ギャグマンガのキャラクター、といっても様々な人物がいます。
色々考えているヤツもいれば、何も考えていないのが面白いのもいます。
そして、「スカタン天国」のキャラは、自分の考え方を極めてしっかりと表明している、珍しいギャグマンガキャラです。
 
ここで、先ほどのWEB拍手でいただいた、リカの家庭の父娘関係を見てみます。

これは回想シーンですが、父さんの方向性が非常によく出ているセリフだと思うので参考に。
父は安部零次(42)。小児科のお医者さんですがどう見てもクレイジーなマッドサイエンティスト。ちなみに死ぬほど子煩悩です。
そんな零次とリカですが、それに人体模型の定吉が加わって三人+にゃんこ先生(ネコ)で暮らしています。
そう、お母さんが亡くなっているんですよ。
 
基本的にこの父親、「まじめさ」というものを全く持とうとしません。
むしろ上記のように、クレイジーな会話を連発して、ひたすら画面の中で空気をぶち壊していきます。
確かにギャグマンガのキャラだからそれは極めて正しいんですが、妻の死に対してなんでそんなにぶち壊しなくだらないギャグばかり繰り返すんだろう?というのが読者側の一番の印象。
ものすごく浮いてるんですよ。それはズレているわけじゃなくて、作者が意図的にそうさせているもの。笑っていいのかどうなのか、非常に困惑させられます。このへんこそが、絵がリアルだからこそ出来る技です。

父親は、最初から最後まで、リカに対しては「本当のこと」を言いません。冗談とウソとギャグでしか会話しません。
正直それが正しいのですかといわれたら、答えはこのコマのように「間違い」でしょう、ある面においては。
しかし、彼とリカには、この二人なりの行動原理があるんです。ギャグマンガのキャラクターとしての、ひいては父娘の生き方としての。
なぜ彼らは、そしてこのマンガのキャラクター全員は、力技とも思えるテンションでおかしなことをやり続けるのでしょう。
 

●世界は、楽しいことで満ちている。●

リカという少女は、小学校のときから高校の今まで、ずっと学校に行くのは不定期でした。
と言っても別に学校が嫌いで不登校なんじゃなくて、勉強と等価値に面白いものがいっぱいあるだけ、という極めてわかりやすい心理だったりします。

うーん、なんか「何が正しいのか」分からなくなってきますネ。
学校に行くのが正しいのか?…いや、正しいんだけど*1、リカの行動もまたマンガの中においては自然なんです。

父親はそんなリカと極めて仲良しで、二人で常に「面白いことだけ」をして生きています。
それが人から見て「正しい」生き方かどうかは判断できませんが、そこに定吉が入ることでバランスが保たれているようです。
 
実はこの父娘のみならず、ほぼすべてのキャラ(主にクラスメイト)がその刹那的な生き方選択しているのがこのマンガのすごいところだと思うのです。
らき☆すた」でもこなたとそうじろうが、暗く落ち込まずにオタク全開で楽しんでいるシーンがありますが、それもきっと同じような、せっかくだから一番楽しいことを選択しよう、という心理があるのかもしれません。その点似ていますよね、この父娘。
それをきちんと言葉にし、自らのポリシーで選んであえてバカになってみることこそが、このマンガで言われている「スカタンなのです。
つまり、「スカタン」はバカやアホやドジとは違う、前向きな楽しさを発見できる人間への最高の賛辞。
 

●スカタンのススメ●

このマンガで描かれる「スカタン」は、決して逃避じゃないんですよ。
最高度に苦労して勝ち得る、刹那の爆発なんです。そして、それは不幸でもなければ幸福でもない。
ごく当たり前の日常なんです。
まあ…日常じゃないんだけどさ、こっちから見たらさ。

でもそれだって、紙の中の向こうの住人にしたら、全然おかしなことじゃない。
むしろ、こっちが本当に幸せなんですか?とすら訴えてきます。
 
なんか難しいですね。でもそれをこのマンガは「難しい」と思って欲しいわけじゃないと思います。いや!極めて難解なことを描写しているんだけど。それを笑いながら昇華しちゃっています。
ようするに、全力で「スカタン」に生きるのもいいぜ、と。
全力でバカなことをやっていくのは、意外と大変なこと。でもそれは同時に一番ポジティブに人生を燃やす姿でもあります。
「スカタン」って言葉、こういう状態を表現するには、もしかしたら便利かもしれないですネ。
 

これを読んで、笑いながら心に引っ掛かりを残したまま、10年が過ぎました。
気付けば余計なことをネガティブに考えるシンジ君脳をも身につけてしまいました。
さてはて、時には自分も「スカタン」になって、次の世代にポジティブでスカタンな楽しさを伝えられているのかなあ?スカタンを求める気持ちで素直に笑ったり泣いたりしながら、色々な作品を見ているのかなあ。
…と考えている時点でスカタンじゃないです。
「愉快に暮らす」って、永遠のテーマですよね。色々な意味で。
だからこそ。こういうマンガが言葉にしてくれるのが、とてもうれしいんですヨ。
 
スカタン野郎 1 (アフタヌーンKC) スカタン野郎 巻ノ2 (アフタヌーンKC) スカタン野郎 巻ノ3 (アフタヌーンKC)
スカタン天国(パラダイス) (Vol.1) (アフタヌーンKC (1083)) スカタン天国(パラダイス) (Vol.2) (アフタヌーンKC (1092)) スカタン天国(パラダイス) (Vol.3) (アフタヌーンKC (1098)) スカタン天国(パラダイス) (Vol.4) (アフタヌーンKC (1108))
おそらく絶版になっていますが、中古本屋にいけばたいていあります。できれば「スカタン野郎」からゼヒ。
でもリカちゃんのかわいさと、ギャグセンス+キャラクターの生き様を楽しむなら、よりセンスが洗練されている「スカタン天国」からでも楽しめます。蛇足的説明ですが、リカちゃんの親友モモちゃん視点で読むと、かなり面白いしテンション引き上げられます。特に22話必見。
今連載されているプ~ねこ (アフタヌーンKC)は、さらに読みやすいと思いますが、スカタンシリーズやぽちょむきん 1 (アフタヌーンKC)の作者のギャグや特撮へのこだわりが、自分は好きです。
 
〜関連記事〜
「らき☆すた」22話で、泣いてもいいんだよね。

*1:そのへんは諸諸説説あると思うのでスルー。