たまごまごごはん

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そばにいる、そこから生まれる少女たちの距離感。「電脳コイルTHE COMICS」

今日の電脳コイルは普通に総集編でした。
いまいっちばん盛り上がってるところなので、こういうクールダウンも大事でしょう。うん。
そして、電脳コイルのコミック版も発売されました。ちゃおコミックスということで、完全に少女マンガとしての形式での発売。これは以前ちゃおの付録でついていたときも驚いたものです。まさかちゃおとは。
関連・コミック版「電脳コイル」に見る、少女達の身体感覚。
このマンガ、少女漫画普段読まないんだよなあ、って人にも是非読んでいただきたいなあと思う良質な作品だと思います。
今回は以前の付録だった第一話に加えて、第二話が本の半分くらいまるまる収録されています。こちらの二話も面白かった!あ、前回も書きましたが、アニメの世界観とはちょっとだけ違います。でも「電脳コイル」を知らない方でも単品で楽しめる親切設計。
はて、1話はイサコとヤサコの身体感覚と相手への感覚が変化していく様が非常によく描かれていたのですが、今回はその「ともだち」という言葉が二人の間にできてからの話なので、深みがいっそう増しています。
この関係と、アニメのほうで語られていたカンナ事件がうまいバランスで描かれていたので、このへんの少女たちの距離感について書いてみたいと思います。
 

●子供たちのCITY●


やばいことに足を突っ込んでしまったフミエやダイチらを助けにいく、というのが話のはじまり。アニメ版の3倍くらいダイチとフミエはかわいいのですが、3倍くらいムチャもします。歯止めが利かず止められない感じがプンプン。
それを助けにいくのが大人ではなく、ぼくたち、私たちの手で!というのがこの作品のいいところ。
なんてったって、電脳コイル「小学校最後の夏休み」がテーマですものね。そこが愛しくて仕方ないんですが、それをしっかりおさえてくれているマンガ版、ありがとうありがとう!
 
物語の中核になるのがここにいる、ヤサコ、ハラケン、イサコです。
マンガの設定だと、ヤサコはハラケンにべたぼれ。イサコはあまりなにかを背負っているというわけではなし。
だからこそ、「少女たちの関係」に焦点が定まっていて、難しいことを考えずにイサコとヤサコの関係を見つめることができるのですよ。
とはいえ、自分らはオトコノコなわけで、6年生のオンナノコたちの心理はわかりません。想像するしかありません。

だから女の子が色々しているのを見ては勝手に想像を膨らませるばかり。
まさに気分はこんな感じ。

うまいこと描きますな。少女マンガという舞台が生かされているので、女の子から見た男の子がちょっと幼げなのもしっかり描かれています。そしてこういう瞬間がすっげー!楽しいんですよねえ。
 
大人のいない世界。子供たちだけのもうひとつの電脳世界。その中で力を合わせて理不尽(イリーガル)と戦う。
子供たちだけで信頼関係を築き、協力する中で芽生える感情は単純なようで複雑。特に、イサコとヤサコという女の子の間ではなおさら、です。
 

●同情してあげてるのに?●

アニメともっとも違う点として、イサコとヤサコの関係がすでに第一話で確立されていることがあげられます。
いや、もう今の時点でアニメのほうもイサコの心境がものすごい勢いで変化はしていますが!でもまだお互いぎこちないし、腹のうちさらけだす仲ではないですし。
でもですよ、マンガではヤサコが、「イサコ」って呼び捨てなんですよ!
もうこれだけで個人的にはOKです。久世先生ありがとうありがとう!
とはいえ、そんなに単純なものでもないようです。

イサコは「比較的できる女の子」として描かれているのですが、その彼女が言った一言が非常に重いんですよ。
 
ヤサコは、ふわふわとした、少女の中につまっている「ステキ分」を抽出して固めたようなキャラになっています。このへんすごく少女漫画らしい部分なんですが、うまい具合にヤサコの不安定な心理状態に乗っかっています。
それに対して、イサコの心のうちがモノローグなどで語られることはありません。あくまでも一歩ひいた部分からの少女の冷静な視点です。でもそれは落ち着いているかと言うと、かなり不安定なんですよ。ヤサコと対を成すように。
押したり引いたり。くっついたり離れたり。
そんな少女たちの不安定な関係の距離が保たれ始めていく様が、たまらなく愛しいんだこれが。

誰しもが感じる、漠然とした不安。特に「ともだち」なんていうあいまいな言葉で、線引きしてくっきりとわかるわけでもない少女たちのぼんやりとした関係なわけです。
ヤサコに対してイサコが言った「いい子ぶってる」は、実際その部分でさまよっているヤサコの心をがっちりと暴き、その漠然とした不安を浮き上がらせます。
このへんは子供が見ても共感するでしょうし、大人が見てもかつてを思い出すのではないでしょうか。いやあ、…大人になった今もそうかもしれないなあ。難しく考えすぎてしまって、一番大事な関係を見失ってしまうこと、ありそうだ。
 

●少女はそして、手をつなぐ。●

このマンガが自分にとって本当によかったと思ったのは、最初から最後まで、徹底してイサコとヤサコという二人の少女の関係に話が終始していること。
確かにハラケンへの恋愛などの要素も入っていますが、メインはイサコとヤサコ。これがきっちり最後の最後まで貫かれているのが非常にイイ!そう、それが見たかったんです。
はて、男女の恋愛や男の友情の場合、象徴的に色々なシーン(キスやら戦闘やら(?))が入りますが、少女同士ならなんだろう、と考えたときにはやっぱり「手をつなぐ」ことだと思うのです。

少女同士の友情はあまり攻め攻めじゃなくて、お互いミットかまえて待ちに入る描写が多いですが、この二人もやはりそういう関係。ヤサコは比較的押しが強いのですが、微妙に揺さぶられて押したり引いたり。
そんな少女同士の心の通い合いは、手をつなぐことでなされる、と自分は勝手に思い込んでいます。大事だよ、手。
 
たとえばプリキュアでは手をつないではじめて関係がじっくりと熟成される描写が毎回なされていました。
参考・その手をしっかりと握り締めて。〜プリキュアSSの手の握り方〜
また、「マリア様がみてる」で、聖と志摩子はがっちりとつながることはなかったですが、片手をつないで駆け出していきました。
そしてイサコは、ヤサコに差し出された手をしっかりと握り締めたわけです。これは大きい。
 

友情に貸し・借りがあるのか、同情は必要なのか。それは作品を読んで、彼女たちが出した二人の関係を見てください。
自分は読んでみて、これでいい、これがいいと思いました。それだけが答えとは限らないけど、イサコとヤサコは、これでいい。そんな少女たちの心のバランスの機微が大切にされているので、読後の後味は最高でした。
ありがとう、見たかったいい「電脳コイル」を描いてくれて、本当にありがとう!!
 

●おいしいところは盛りだくさん●

はて、アニメ版「電脳コイル」といえば面白いシチュエーションがてんこもりの作品でもありますが、そのへんもきっちりおさえているのがニクイです。よく1巻のなかにこれだけ魅力的なものを詰め込んだものです。

なんといってもかわいいダイチの恋愛模様。フミエがアニメにくらべてやたらめったらかわいいのもミソなんですが、これはダイチビジョンだからです。間違いないです。そして、この作品の真のヒロインはダイチだと思います。

そしてかっこいいデンスケもしっかり登場ですよ。
デンスケというキャラのよさは、もうおじいちゃんでぺろんぺろんに垂れた感じが弱弱しいのに、勇敢に立ち向かうかっこよさだと思うのですが、それがここで再現されているのはデンスケ好きにもたまりません。1話のほうでは以前も書いたように、オヤジがいかにプリティーかもしっかり描かれており、電脳ペットのおいしいところはおさえられています。

オバチャンも超絶ショタコンとして登場。出番が少ないので、ショタコン一点突破での登場です。
うん、おばちゃんてこういうキャラだよね。
 
そして最後に、一番大好きなシーンをあげておきます。
もうこのシチュエーションを夢見てぼくは寝ます。

イサコ様、踏んで!
 
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お、4のジャケも出ましたネ。
 
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