たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ただそこに、思いっ切りの笑顔を!「アオハルッ!」

私も中学生時代を懐かしむようになっちゃいました。
イキイキと元気に走り回る、そんな少年少女を見るとじわじわと涙があふれるようになりました。
だから、マンガで読むときは、子供たちの感動ストーリーよりも、もう思いっきり笑う笑顔の方が個人的にはクるんですよ。なんのストッパーもない、思い切りの笑顔であればあるほど、猛烈にこみあげてきます。
この感情が、うらやましいからなのか、それとも自分を思い出してなのか、それはわかりません。しかし「笑顔への憧憬」はもっている方多いのではないでしょうか。
 
今回、表紙買いして思いっきりはまったマンガが、みもり先生の「アオハルッ!」です。まさにその憧憬を描いた、笑顔で元気に走り回る子供たちのマンガです。
 

●りんごほっぺ、ぱっつん前髪●

もうなんせ表紙がすばらしい。
アオハルッ! 1 (プリンセスコミックス)
おかしな話ですが、この表紙を本屋で見たときに、ぶわっと目頭にキました。
だって見て下さいよこの笑顔。飾ることのないこの空気。ほっぺたは子供の肌っぽく、ほやほやしています。鼻も丸くて、鼻水だってたらします。おしゃれぶって服装をいじることもしない、極めて素朴でまっすぐな子供の姿が、イヤミなしに描かれているんですよ。

ヒロインの子はこんな感じで、飾ることなく汗まみれ泥まみれになってはしゃぎまわる子です。こういう時の前髪ぱっつんは本当にかわいいですよね。お姫様カットではなく、純粋さの証のパッツンです。
また、クラスメイトのサブヒロイン、誉ちゃんがいいんだ。
右側の子なんですが、おとなしいタイプの奥ゆかしい子なんですが、ぽっちゃりッ子なんですよ。この二人の「ど美人じゃない子供らしさ」が全体の空気をやわらかなものにしています。
 
作者のみもり先生はこう書いています。
「子供がわいわいキャッキャしてるのを描くのが大好きなみもりと申します。」
ストーリーとか色々あるのですが、まずはここです。ここを心の底から色々な人に感じて欲しくて、まず思い切り書かせてもらいます。
小学校・中学校の時の記憶。時にバカなことを気づかずに大声で叫びながら、道を思いっきり走り回ったあの感覚。そのくらいのお子さんがいる方なら、自分の息子・娘が駆け回る姿を重ね合わせてもいいかもしれません。
たまにスレたりもするけれど、ただそこでにっこりと笑っている笑顔があるだけで、幸せじゃないですか。たまらなく涙が出てくるじゃないですか。
自分も別にばら色の中学校時代を送ったわけじゃないので、少女漫画のラブラブを見ると「えーいちくしょう!ちゅっちゅしやがれ!」とかひねくれた愛情を抱くわけですが、この作品は恋愛要素を含みながらも、もっと純粋な部分を描きたくてたまらない作者の姿が見えて、それだけで思い出しました。確かに自分が、ただ笑顔で走り回っていた時代があったことを。
  

●わたしたちの恋は、そんなに複雑じゃない。●

大人になって、「恋愛ってあーだよなー」とか「それは愛じゃなくて恋に恋してるんだよ」とかえらそうな口を叩くようになりましたが、実際は知らんです。知ったかぶりです。愛なんてわからない!難しいヨ!
けれども、中学校一年生の時に誰かを好きになる気持ちって、そんなに複雑じゃなかったんだよなあ、とこの本を読んでいて思います。あれえ、どうしてこんなスれた気持ちで考えちゃうようになったんだろう。いや、実際は複雑なんだけれども。
 
このマンガ、最初はいたって純朴な二人の幼馴染、花日ちゃんといづみ(いっちゃん)の猛ダッシュから始まります。二人は男女ですが、別にやましい仲ではないし、気づいたら一緒にいるんだよなあ、という関係です。そこの描き方がものすごく絶妙で、本当に男女の感じがしないです。ヒロインの花日がもっさりした描き方なので、あまり「男子から見た女子」という感覚がないのがいいのですよ。自分は女の子じゃないのでわからないですが、きっと「女子の体の感覚」ってこうなんだろうなあ。胸はまだまだなくて、ちょっとがにまたっぽくなっちゃったり、泣いたら鼻水出ちゃったり。
そんな時に生まれる、不思議な「好き」という感情。恋愛が絡む漫画ではテーマとして深く描かれるわけですが、この漫画はそこを、不思議なものとして描きつつ、極めて単純な感覚として描いているのが素晴らしいんです。

とあることがあって急に、湧き上がるストレートな感情をあふれ出させるいっちゃん。彼は花日に比べるとちょっとだけ大人びてはいますが、中身はものすごく単純でまっすぐ。
 
問・なんで花日ちゃんと一緒にいるの?
答・いたいから。
問・なんで心が痛くなるの?
答・好きだから。
 
そんな単純なこと。それを色々複雑に考えて悩み苦しむ瞬間もありますが、ようするに「好き」「一緒にいたい」だけなんですよ。自分のこの感情は・・・とか難しいことをさくっと超越して、もっともっとすっきり分かりやすいところに着地します。

花日も、まさかそんな、という階段の一歩に戸惑いながら、理屈をこねずまっすぐに足を踏み出すんです。
その間に大きな事件があるのですが、この巻ではそれをきちっとケリをつけつつ、さらに前のステップに迷わず二人で歩くのが最高に気持ちいい。
男の子は女の子のために一歩踏み出すし、女の子は男の子と手をしっかりと握り締めるんです。それだけなんです。それを大切にしようとするかどうかなんです。
ぼくらが、わたしたちが、人を好きになるのはそんなに難しいことじゃない。
一緒にいられれば、それでいい。時には泣いたり笑ったりしながら、走り回ろう。手を、つなごう。

興奮しすぎるときもあるけどナ!
まあ、泣いたら鼻水も出るし、鼻血も出る。それを飾らずそのまま描いてくれるからこの作品が好き。
 

●そしてぼくらは、傷つけたり傷つけられたり●

脇役で出てくる子たちがまたすげー純朴なんだ。
先ほども書いたぽっちゃりッ子にかかわってくる男の子に、呂澪(ろみお)君という子がいます。名前はかなりとんがってますが、もう中身が抱きしめたくなるくらいに子供なんですよ。

「中学生にもなって女とキャッキャできるかってんだよ」
さあ、どのくらいの男子がこれを言って後悔したことがあるだろうか。
主人公二人はわりと直球で感情を出せる子たちなんですが、呂澪くんと誉ちゃんは逆にうまく表現できない子として対比されるように描かれています。
でも二人とも極めてピュアな性格の持ち主で、たまたまちょっと不器用なんです。それを真正面から突進していくいっちゃんと花日ちゃんが、またまっすぐに突っ走るから気持ちいい。
 
もっともそれで傷つけられたり傷ついたりは、します。恋だけじゃなくて、どんなことでも。文字通り道路を走って思い切りこけることだってあります。
なら走らないの?走ろうよ、思い切りこけてまた走ればいい。走って走って走り続ければ、笑顔にだってなったじゃない、ほら、あの時のように。
そんなことをそっとやさしく語りかけてくれるマンガなんです。

時にはどうすればいいか分からなくて思いっきり泣くこともある。
だけど、明日は笑いたいんだ、思いっきり笑いたいんだ。
 
このマンガを読んでると、ただ思い切り笑って、仲間と、好きな人といたいと思っちゃうから困る。
笑顔を見れば見るほど、懐かしさと愛しさと、なんだか妙に酸っぱい切なさで泣けてくるじゃないか。
 

●属性から見る「アオハルッ!」●

ここうまくまとめきれないので、メモ程度に。
素朴さだけを詰め込んでも確かに面白いマンガは出来るとおもうのですが、この作品が「マンガらしさ」を保って面白いのは特筆すべき点です。
まず主人公の花日が極めて「アホの子」の王道をいくキャラであること。

リアルに素朴な少女でありつつ、時々それがデフォルメされてアホっぷりを発揮するからたまりません。かわいいんだこれが!
まあやりすぎて空回りするあたりがまた、ちょっと子供っぽくてキュート。ぎゅってしたくなります。

かっこつけでヒネくれていた盛岡くん。とある事件がきっかけでヒエラルヒーの最下層に追いやられます。確かに最初イヤーなやつなんですが、読み進むにつれてそのへっぽこぶりがかわいくて仕方なくなってくるから不思議。

まだあまり接触がない、同じ班の新菜ちゃん。もーね、絵に描いたようなツンデレ。最もまだ描写が少ないので本当のところはよくわからないため、今後に期待。多分ツンデレをもてはやす流れではなくて、花日といっちゃんのどストレートコンビが、どストレートに突進していくんだと思います。していってほしい。だって、そんな複雑に考えて距離感計ったりしないですもん。
キャラクターのちょっとおおげさな、でも裏表なくわかりやすい個性がとても疾走感あふれています。これぞマンガの醍醐味。
 
もうちょい花日というキャラについては書きたいのですが、とりあえず今日は紹介だけ。
今回は色々こねくりまわわずに、純粋さを描いたこの作品に敬意を表して、素直に「このマンガが好き」とだけ言って閉じます。
好きだ!

アオハルッ! 1 (プリンセスコミックス) ひぐらしのなく頃に 宵越し編 1 (ガンガンコミックス)ひぐらしのなく頃に 宵越し編 2 (ガンガンコミックス)
ひぐらしのなく頃に 宵越し編」を描いていた人です。この人、ものすごく子供らしさの描写がうまいと思います。
プリンセスコミックスってあまり買わなかったのですが、いやあ、出会えてよかった。