たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

エロだからこそ光る物語。エロマンガ10 ストーリー編

酔拳の王 だんげの方さんは毎年「好きなマンガを○○冊あげてみよう!」という企画をされているのですが、ナツは100冊メジャー物で、フユはものすごいコアな方向に突き進むことになったようです。
コアに行こう エロマンガ10(酔拳の王 だんげの方)
きましたね!エロマンガ好きなものを10冊あげてみよう、という、分かる人は100冊くらい平気で出そうな、出ない人は一冊もでなそうなこのピンポイント感。
同時に自分の性癖が一気にばれるという諸刃の剣。いっそ、そこが快感です。
というわけでさっそく参加しようと思ったわけですが、はて。どうにも自分の中ですっきりまとめて選びきれない事態が。
「結局はエロマンガ」ということで、基本的に面白ければなんでもありなんですが、自分が読む時にはどうしても視点が二つに分かれちゃってることに改めて気づかされました。

・エロを交えた濃いストーリーや、18禁ならではのタブー的な空気が見たくて買う。
・いかに自分の中の欲望をつついてくれるかが楽しみで買う。

細分化すればさらにわかれそうですが、主にこれ。まったく求めるものが別なわけです。それをまぜて選べないなあと悩んでうなっていたので、散々悩んで悩んで、両方10ずつ選ぶことにしました。まあカウント外になっちゃいますが。
 
というわけで、このエントリでは「エロを生かしたストーリーテラー」として愛している作家さんの作品を10冊あげてみようと思います。
 
 
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1、時計じかけのシズク(海野螢


「風の十二方位」と悩みに悩んで、こちら。
ロボット物が好きだからというのもあるのですが、その感情の行く末の描き方も、そしてそれがただの美談ではなくきちんと現実の問題として練りこまれているのも非常に考えさせられる作品だと思います。ロボットとの恋愛物語で、エロを抜きにはやはりできんですよね。そこにきちんと向き合いながら独自の解釈を打ち出しているのが大好きです。性を通じつつ、そこに生まれるあの感覚は一体なんなのだろう?
ロボットとの恋愛感情って、本当にありうるの?「時計じかけのシズク」
海野屋
  

2、ヴィシャス(影崎 夕那)


性をストレートに描きつつも、極めて鬱要素の強い短編集。連作中編になる「ヴィシャス」は、直球のヤンデレ物語です。個人的にあんまりヤンデレエロマンガって見たことがなかったので、出た当初はガツーンと来ました。恐ろしいと同時に、ハラハラドキドキが快感でたまらなかったものです。今だからこそ、ヤンデレ好きな人に見ていただきたい一冊。
これに出てくる少女の恋愛と欲望が極めて純粋で、なのに難解なのがいいんですよ。それは愛情と性欲と、父への嫌悪感のすべてが混沌としていて、まったくもって出口が見えません。そんな心が生まれたのが、ものすごく閉鎖的な環境だった館という特殊環境だからというのも効果的です。絵柄的にはかなりかわいらしく読みやすいのですが、全編を覆う圧迫感がたまらないんです。
我楽多市場
 

3、SEASON(田沼雄一郎

 
昭和50年代。自分はその光景を覚えていません。しかし確かにこの作品にはその50年代を駆け抜けた一人の少年と一人の少女の、まっすぐな瞳と性の形が描きこまれています。50年代を生きた人ならば、その郷愁とファンタジーのような性愛の形に飲み込まれていくはず。同時に話が向かっていく現実のカベに答が見えず、痛みと切なさが襲ってきます。子供と言えども性におぼれれば、人間のカベに突き当たる日がくるんです。
しかし、二人がおぼれていく性の姿はとても率直で、こちらも酔わせてくれます。ええ、ものすごくエロティックです。だからこそ感情は増幅されていくんです。ちなみにショタ好きの人にもオススメ。

 

4、HONEY BLUE(花見沢Q太郎)


花Qから一つどうしてもいれたくて悩みに悩んだ末に、これ。18禁じゃないですが、M属性+ツンからデレへの移行がたまらなく好きな人は必読の本。しかも剣道着。
そういう直接的なエロ感覚にも訴えかけてくる花Qの絵柄ですが、同時にものすごい勢いで「憧れている青春の姿」を体言しているのがいいんですよね。このほか「ちまちまはいすくーる」「痛快すずらん通り」「スイカと海と太陽と」などもそうですが、若々しいエロを含みながら、ちょっとずつ芽生えていく感情と、入り込んでくる事件に振り回されてしまう心の動きがとても見ていて心地よいです。
花見沢Q太郎作品の中毒性を、初期作品から考えてみる。
花見沢Q太郎公式HP
 

4、幻覚小節(町田ひらく


町田先生もどれにしようか迷って迷って、これ。やっぱり最初に手にしたこの本で。
町田ひらく先生作品はどれも、少女が美しく可憐で卑猥であるほどに、男性が卑しく堕落していきます。そんな跳ね返りが自虐的であると同時に、極めて少女崇拝の空気を持っていて、痛いほどそれが分かってしまうのが辛いからこそキモチイイんです。
この短編集で衝撃的なのは(全部だけど特に)「美女とのけもの」の一編。絶望というのはこういうときに使うんだと思いました。目の前に石炭袋のように広がる、暗闇よ。
 

5、オママゴト(あめかすり)


一応18禁じゃないですが、性が主題になっている、個人的にはたまらないくらい大好きな作品集。
二重三重になぞられる特殊な描写の線で、女性側の感覚をごりごりと描いていきます。妊娠してから生ごみを食べ続ける女、精神薄弱で喋らない女の子、誘拐犯を愛する少女。女性視点から特殊な環境をうまく交えつつ、詩のようにその身体と心の感覚をつづっていく美しい作品です。
とある作品のセックスシーンでは、骨や心臓や血管まで交じり合う描写があり、心を激しくゆさぶられたものです。
 

6、おつきさまのかえりみち(三浦靖冬


独特な世界観の描写はもちろん、廃墟の中で寄り添う少年少女の姿が美しすぎる三浦先生の作品集。特にこの中に収録されている中編「とおくしづかなうみのいろ」の行き場のなさ、やりきれなさは、性が描写されるがゆえに激しく増幅されます。どこまでも見えない光、どんなに歩いてもたどりつけない海。ただ目に映るのは、見渡す限りの捨てられた物たちと、命の宿らない時間。
三浦先生作品は画集としても見ることが出来るとおもいます。個人的にはロボット物語の載っている「花喰幻燈機」も非常に哀愁に満ちていて好きです。
 

7、としうえの魔女たち(むつきつとむ

としうえの魔女たち 1―Brand new love story (マンサンコミックス) としうえの魔女たち 2 (マンサンコミックス)
むつきつとむ先生作品が全部集めるほど大好きなので、その中からとりわけ好きなこの作品を。
むつき先生の描く女性はみんなすごくサバサバしていて、性にもあっけらかんとしている場合が多いのですが、それが男性のダメっぷりと弱弱しさぶりをうまく反映していて非常にそのバランスが心地よいです。そう、温泉というか、ぬるま湯というか。男性側も次第にがんばるのですが、なんだかんだで女性に支えられてエンド、という物語の流れがなんともほっとします。
この作品は、自分の母親なみに年上なのに、見た目どうみても少女以下というギャップがたまらない設定で描かれています。しかし、ギャップがあるからこそ、ものすごく大人の女性の気持ちが分からなくて戸惑ってしまう、それがいいんだな。やっぱり男ヨエー。
むつきの部屋
 

8、うろしま物語(福山庸治

うろしま物語 (F×COMICS)
エロティクスFより。18禁じゃないのですが、ある意味18禁マンガ以上に18禁な陰鬱さと狂った感覚が楽しめます。
楽しめるっつうか、自分は最初もう読んで吐き気がひどくて封印していたのですが、また開きたくなるから恐ろしい。好きな人は大好きな、嫌いな人はとことんあわない作品なんじゃないかと思います。
わけもわからず迷い込んだ謎の町「うろしま」。ここが狂ったほどのセックスフリーの町で、最初はそれに戸惑うんですが、主人公も気づいたら色情狂といわんばかりにのめりこんでいく様が圧巻。そして、快楽は次なる快楽を産むわけではなく、ループし続けるのか、いつ終わるのかわからない地獄を生みます。ラストの混沌とキチガイぶりがすさまじいんですが、エロマンガ・サブカル系マンガに慣れていない人にはおすすめしずらいです。
ナマヨジラ館
 

9、霧の中の少女、霧の童話(ほしのふうた


「霧の中の少女」に前半が、「霧の童話」に後半が収録されています。
どうも自分は閉塞された村や町での性描写が好きなんだと思いますですよ。「花園メリーゴーランド」とか。ほしのふうた先生は極めて記号的なロリ・ショタを見事なまでにエロティックに、かつラブラブで明るく描ける作家さんですが、この長編はその閉塞感を生かして陰鬱なゆえに生まれる激しい興奮をきっちり描いています。世界が閉じていけばいくほど、相手をみつめる視線がどんどん密接になっていくのでしょうか。
ほしのふうた先生作品はどの本もロリ・ショタ属性の人の神経の部分をかわいく鋭く描かれている(しかも読み終わってほっとできる)ので、どれも大好き。

 

10、ディファレント・ビュウ(ナヲコ


最後にちょっと明るい作品。ナヲコ先生の貴重な、そして名作ともいえる18禁マンガ。とにかく出てくる女の子たちがみんなイキイキしていて、いたって普通に悩んだり笑ったりします。少女漫画的という表現が的確かどうかわからないですが、そこにある性行為はその愛情表現の延長上なので安心して読めるのがいいです。
ゆったりと描かれる少女たちの成長していく体と心を、やさしく温かく見守った作品集です。
 
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エロがあるから引き立つ物語。どうしても短編が求められるエロマンガの世界では難しいジャンルだと思いますが、だからこそ詰め合わせられた名作が多いのも確かだと思います。
他にもヨネケンとか入れたかったのですが、今回は保留。性をも突き詰めたストーリーテラーがこれからも増えていくことに心から期待しています。
 
エロ編に続く。
 
集計用 とりあえず有効票はこっちで。
 
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