たまごまごごはん

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見えない自由が欲しくて見えない銃を撃ちまくったところでどうなる?「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet
WEB拍手で教えてもらって一気に読んだ本。確かにみなさんが絶賛するだけのことはあって、死ぬほど面白かったです。
一応ラノベというジャンルの意識もあってのことか、女の子たちもちょっと最初は浮世離れした魅力が強かったのですが、後半になるにつれてなだれ込むように襲ってくる現実の残虐さと終焉の救いようのなさときたら。それこそが「少女」という語の持つ手にとどかない至高性と、奪われさる弱弱しさなんだよなあ、と心にずるずると余韻を引きずる作品でした。
 
第一まず、いきなり最初にヒロインの一人が死んでいる、というのが目をひきます。
ああ、この子は死ぬのか、と分かりつつ読むんですよ?
作品の中でどれだけ明るくふるまったり、ムカつくことしたりしても「死ぬんだよな」って分かって遠くから見ているこちら側の残酷な視点ときたら!
そもそも「終わる」から「少女性」なのだ、という儚さこそが魅力でもあるわけです。なくなってしまうから永遠にしたい、永遠にしたいけど絶対失われる。それが少女が少女期に持つ危うさです。
そんな少女観で描かれる、淡々と世界をながめるヒロイン山田なぎさと、虚言癖としか思えない言動を繰り返す海野藻屑。藻屑が最初の時点でいきなりバラバラ遺体です。読者側としてはもう藻屑のことは冷静に見られませんよ。
 
だから、彼女らが必死に撃ちまくる弾丸のような攻撃も、こちらにまで届きません。すげー必死に撃っているのにぜんぜん破壊力ないんですよ。題名の「砂糖菓子の弾丸」というのは本当によくできた言葉なもので、それは心を惹くすごい魅力的なものだし、若いからガンガン撃ちまくりたくなるけど、所詮砂糖菓子だから何にもダメージなんていかないんだもの。確かにちょっと痛いかもしれないけど、ベタベタして終わりですよ。
特に藻屑の突拍子のなさと嘘だかなんだかわからない言葉の裏には、必死になって足をジタバタさせてもがいている姿があるんですが。そしてそれはもうかわいくてキレイで儚くて幼くて、そう、マンガのキャラクターのようなんですが、現実という標的にはぜんぜん当たらない。
むしろ打ち返してくるのは現実側。
少女は所詮、どれだけ撃ってもほんの一瞬で奪われるような時間と力しか持っていないんじゃないのか、というのがいきなり最初の1Pからたたきつけられるわけです。
ああ、それを読んで少女の少女性を見つけようとするぼくらは、残酷だね。
 
でも、少女が撃ちつづける砂糖菓子の弾丸は、世界を革命する力はないかもしれないけれど、確かに甘いとも思うんだ。
撃った弾丸の甘さに酔いしれる人間もいるから、無駄弾じゃないと思うんだ。
ぼくらとかね。
なんてのも、こっちが奪う側の視点だからだよね。残酷だね。