たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

乃梨子と瞳子が呼び捨てだったことから考える、二人の関係

マリみて新刊情報きましたね!たまごまごです。4月1日発売。
マリア様がみてる 新刊情報(マンガ王倶楽部 ネタバレあり注意)
 
さて、バレンタインシーズンはこえましたが、こうなってくると乃梨子瞳子は裏でチョコとか色々していたかどうかを気にしている諸氏も多いと思います。日本で自分を含めて500万人はいると思います。
 
そもそも、友チョコとかやるじゃないですか。友チョコ。あと友ホワイトデーとか。
乃梨子瞳子はいくらスールべったりとはいえ、そのへんぬかりないと思うわけですよ。記憶があいまいでなければたしかあげてるシーンはなかったような気がします。
とはいえやはりやるじゃないですか。ましてや、乃梨子瞳子の関係ですよ?
お互い呼び捨てにする仲ですよ。ほかに呼び捨てするのは今のメンツだと令・祥子くらいですよ。卒業した三年生はみんな呼び捨てでしたが。あの親友の由乃祐巳志摩子さんですら「さん」づけですよ。
その中で乃梨子瞳子は呼び捨てです。二人きりのときのみ、ごく限られた瞬間のみ。
 
これはマリみてという作品において重大なポイントなわけですよ。
スールという制度が、二人の関係を結婚のようにオープンにする効力があるからなおのことです。ではそのスール関係がない二人の間に、強いつながりが出来たらどうですか。
まあ言ってみてればそここそが一般の学校の友人や恋愛関係みたいなものですが、同級生におけるそれはスールというものがあるがゆえに、かえって埋もれて見えない分、絆は深く深く地下でつながるわけです。
由乃さんと祐巳さんなんかはそうですよね。あの二人がお互いによせる絶対的な信頼感はゆるぎないものを感じます。
しかし、まだお互い気を使っているような感覚がある由乃祐巳
それに比べて乃梨子×瞳子はそれをある一瞬超越しました。
そう、瞳子が呼び捨てにした上で乃梨子を激しく求めたあの瞬間です。
これは今、描写されていないだけで二人の間には深遠で太いパイプがつながっていることを予感させざるを得ないわけです。日本で自分を含めて500万人は予感しているはずです。

そこで、私は予想いたしました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
バレンタインのごたごたも収まった数日後。お別れ会のごたごたがはじまるその合間。
山百合会で黙々と作業する乃梨子瞳子がいました。
瞳子は普段はにやけ顔を出す事は決してありませんが、乃梨子と二人の時だけ顔の筋肉が弛緩します。
「ねー、乃梨子ー」
「んー?」乃梨子は筆記作業に没頭しているわけですよ。
乃梨子ー。んふふ」瞳子乃梨子の後ろから覆いかぶさります。今まで誰にも見せた事のないようなテンションです。
「あー、瞳子うっとうしい。」乃梨子は肩を払うように瞳子をぱっぱと払います。
「今日はなんか冷たいですのね、乃梨子。」
瞳子は口を尖らせながら言います。
「そんなことないよ。」乃梨子は黙々と作業をしながら言います。しかし心なしかほほを見ると、赤らんでいます。そして瞳子には目を向けようとしません。
「あれ?乃梨子?」瞳子乃梨子の顔を覗き込みます。
「もう、ほんっと、うるさいなあ!」乃梨子は大きな声を出して机をバン!とたたきました。それにびくっと体をこわばらせる瞳子
「ご、ごめんなさい、乃梨子…さん」
瞳子もさすがにこれには驚いて身を引きます。
「ん」乃梨子はそんな瞳子をとめるように、視線を向けずに瞳子の腕を握り締めます。顔の色は見えません。
「え?」
「ん!」
乃梨子は顔をそむけたまま、瞳子に小さな箱を手渡しました。
『ハッピーバレンタイン Dear Touko』
「あ」
瞳子は急に顔が赤くなりました。そりゃあもうゆでたタコどころじゃないです。ゆでたエビみたいな感じです。
「あ、ああ、あ」瞳子は何といえばいいかわからなくなってどぎまぎしました。
「なに?い、いつもどおりだよ、いつもプレゼントとかあげてるじゃん。同じだよ!」乃梨子は頬杖をつきながら言いました。しかし顔はこっちを向きません。
「えと・・・いつもどおりですの?」瞳子は恐る恐る聞きました。
「いつもどおり…と、特別だよ、特別!くそうっ、本当に瞳子は。聞くなよ!」
乃梨子は真っ赤な顔のまま瞳子に向き直りました。
「特別なんですのね」瞳子は今までにやけていた顔がいっそうにやけるのを感じました。そりゃあもう必死にそれをこらえようとしましたが、今は目の前に乃梨子がいるだけです。隠す必要はありません。
「の、乃梨子さ…乃梨子乃梨子!」瞳子は思いっきり乃梨子に抱きつきました。いつものように。
「ちょ、瞳子!」
「いつもどおりですわ!」
「いつもどおり?」乃梨子瞳子の瞳を見つめながら言います。
「いつもどおり…特別ですわ!特別!」瞳子は視線をそらしながら、耳まで赤くなるのを感じました。ぎゅっと抱きしめていた腕に力が入ります。そうすると、乃梨子の二の腕の柔らかさを手のひらに感じ、なんだか胸が高鳴るのをおさえきれなくなります。
瞳子、んじゃ特別ね。」
乃梨子はどぎまぎしている瞳子のほほに唇をそっと寄せました。
「!!!」
「まだ慣れないんだね。でも特別だからいいんだ、特別!」乃梨子は照れを隠すようにそっと微笑みます。「なんだか照れるね」
「もう、ほんと…乃梨子ったら!」
響き渡るような大声で瞳子は言いました。

そこで、コンコンと鳴る、山百合会のドア。
瞳子はビクッ!として乃梨子から離れて、そそくさと書類整理をはじめます。乃梨子は目を一瞬泳がせながらも、顔の赤さを隠せず挙動不審な瞳子を見てくすりと笑いそうになるのを必死にこらえていました。
入ってきたのは可南子。山百合会の小さい扉をしゃがみながらくぐります。
「あら?ごきげんよう。他の方はいらっしゃらないの?」
「ええ、まだきていませんわ、ねえ『乃梨子さん』。」瞳子は可南子に対して、目を細めながら言います。
「うぷっ、え、ええそうね。まだ来てないですよ。」瞳子のあからさまな行動におかしくてしかたない乃梨子。「何か用事だった?」
「ええ、書類を届けに」可南子は紙を乃梨子にわたしながら言います。「じゃあ、これ渡しておいてね」
「了解ー」乃梨子は可南子に微笑みながら言いました。瞳子は黙々と作業中。
扉から出ながら、可南子は瞳子に言います。
「二人ともがんばってね。」
「言われなくても。ねえ、乃梨子さん。」
「そうね、瞳子乃梨子はもう笑いをこらいきれない様子でしたが、それを耐えつつ瞳子のぴくぴくおちつかない口元を見ていました。
「そうそう。」可南子は振り返りながら言いました。「ここ、結構音漏れるから。『瞳子さん』」
パタン。

「〜〜〜〜!」
超音波のように声にならない音をのどの奥から漏らす瞳子。まるでドリルが天に向かって逆立っているようにすら見えちゃうんだもの。
げらげら笑う乃梨子
乃梨子ーーーー!」
「特別、特別」乃梨子は座ったまま、じたばたする瞳子の手を握り締めました。指と指をからめて、恋人つなぎで。
「特別・・・ですからね。」
瞳子乃梨子の指のぬくもりに安心感を得るかのように、ぎゅっと握り締めるのでした。
 
 
おわり。