たまごまごごはん

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サナギさんが空を向かなくなったワケ

WEB拍手より。

サナギさん5巻の表紙可愛いなぁ。ってか今回は空見上げてないんだなぁ。可愛いナァ。

    
言われてはじめて気づきました。ほんとだ!
もちろん、それほど深い意図のないものかもしれないんですが、逆を返せば今までずっと空を見続けていたことになんだか意義を感じてしまいます。
そんなわけで、ちょっと深読みしすぎな解釈を載せてみようと思います。 
 

サナギさん一巻の視野の身近さ●


何度見ても秀逸だなあと感じる1巻のデザイン。
雨上がりの澄んだ空気、反射する地面、鳥かごから出たチースケ、一人見上げるサナギさん
これから世界を見るよ、ここから視点を広げるよ!そんな希望に満ち満ちているのが非常にすがすがしいです。
内容的にはその前の「酢めし疑獄」の毒っけをうまくキャラクター性で包んで、受け入れやすくシフトチェンジしている一巻。そこに描かれる世界は、望月サナギと倉田マフユの見る、ごく身近なんだけどつい見落としてしまいそうな小さな世界。隙間からでっかい世界を覗き込むような、そんな感覚。
それが言葉のマジックで、ずいずい開けていく感覚がとっても心地よいんだ。
 
ただ、世界はそれほど開ききっていません。だからこそ、空を見ようとします。
最初の時点でもうすでにフユちゃんとサナギさんは親友です。そのほかにモリカワさんやリサさんなんかが絡んできますが、基本的に二人から見た世界です。
そんな二人にも、こんなコマがありました。

もうかなり親しい間柄なんですが、時々こんなドキッとする発言。そしてそれにドキッとするというくらいの距離感を保っているのも1巻の間柄です。心を許しつつも、成長の余地があります。
かなり信頼関係はありますが、続く巻を読むと分かるように二人の間柄はまだまだ成長していくんです。
 

●さあ、一緒に見上げよう●

 
2巻と4巻は二人が一緒に顔を上げています。
サナギさんはずっと通して上を見ているのが印象的ですが、それに寄り添うように顔を上げるフユちゃんがかわいいんですよね。特に4巻でのフユちゃんのかわいさは抜群です。
 
関連・「サナギさん」と「フユちゃん」の、手探りな距離感を楽しんでみる。

3巻では、ちょうど二人がちょっとしたトラブルで本気泣きするシーンがあるんです。それを考えてから3巻表紙を見ると、視線が別々なことに気づきます。反映してのことか、偶然かはわかりませんが、ちょっとこれは興味深い。
 
4巻ではそれを超えて、サナギさんがフユちゃんの手をひいてリードするような関係が描かれ始めます。
いかんせんフユちゃんは、極めて交友関係が狭い子。サナギさんが楽しんでくれればいいな、という思いを内に秘めて毒舌をはいているような感触すらあります。
サナギさんはというと、かなり社交的な子です。
 
5巻より。
フユちゃんはサナギさん以外と会話することはほとんどありません。サナギさんも含めて…というシチュエーションなら何度かありますが、彼女が他のキャラとソロで話している光景はあまり想像できません。
しかしサナギさんはソロで色々な子と会話しています。そして常に表裏なくイキイキしています。
 
ガンガン物事を楽しんで、日々新しい発見をしているサナギさん蒸気機関車っぷり。
じわじわとサナギさんの後をついて歩きながら、サナギさんが大好きな「びっくり」を与えようとするフユちゃんの微妙な距離感。
それが今まで180回の連載を越える中で、じわじわと描かれました。
ほんのちょっと、ほーんのちょっとずつ、それがね。近くなっているんだ。
 

●前を向いて。●


今までの凝った色使いを考えると、驚くほどに真っ白な表紙。そしてザクザクっと描かれた二人の視線は、上じゃなくてこっち向き。
一巻の表紙はサナギさんの後ろをフユちゃんがちょこちょこと着いて歩くようなカタチでした。2から4巻もフユちゃんが、サナギさんにつられて視線を向けている様子だったことと比較してみると、横に並列に並んでいるこの状態にはちょっとだけドキッとさせられます。
おや、気がつけば二人は自分の意思でこっちを向いているかのようだ。
 
本の内容は基本的には1巻から変わりません。サナギさんとフユちゃん達が考えている楽しい事を、楽しく描いています。そう、世界は楽しもうと考えるほど楽しい。
そんな楽しい事を、サナギさんが見つけて、フユちゃんが積極的に返す、という流れが多かった今までですが、5巻ではサナギさんがさらに返す様子も増えています。3、4巻の長い流れを経て、関係が熟成してきた感すらあります。まさにツーカー
とはいえ、ギャグのやりとりばかりではありません。彼女たちも時にはその距離感をかみしめます。

フユちゃんは、時々戸惑います。それをサナギさん視線で見るから、たまらなくかわいくてねえ。
ふざけてばかりのフユちゃんが真剣な顔(表情変わらないけど)をする時は、「サナギさん」というマンガの人間関係が一気に深まる貴重なタイミング。
それを積み重ねて、ゆっくりゆっくり積み重ねてできてきた、今の二人。なんだか今後もますます彼女たちの視線はあちこちへ広がっていきそうです。
だから、前を向こう。だから一緒に前を向こう。
サナギさんが先に上を見るのもいいけれど、同じタイミングで今は前を向こう。
そんな表紙が5巻なのかな、と思いました。
 
もしかしたら。今後二人の仲がさらによくなって、さらに友人たちへの視線も広くなっていったら。
この白い空間も、二人の間にある花もさらに鮮やかになるのかもしれません。
ただ、表紙をめくったところのカラーページを見ると、それはもう達成されたのかな?とも思いました。5巻一番の見所はそこかも。あとスカートおさえるサナギさん
 
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