たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

今こそよみがえれ!オールディーズの青春と興奮。「青春デンデケデケデケ」

●バンドマンガ、増殖中●

最近なぜか、バンドマンガがぷちブーム中です。
以前もちょっと書きましたが、「GO−ON」「フールオンザロック」「けいおん!」などそれぞれ方向性が違ってなかなか面白いです。
昔からバンド青春ものは様々ありますが、その中でも金字塔になっている、芦原すなお先生の小説。青春デンデケデケデケもこのタイミングでついにマンガ化しました。
んでこの表紙がいいんだわ。

うわーお、ポップ!
オレンジに黒という色の組み合わせが脳にしこたま刺激的。
 
青春デンデケデケデケ」の原作って読んだ時とても泥臭いイメージがありました。映画もいなかくさいノリがステキでした。
そこにきてこのマンガの独自のセンスには驚かされます。いやっ!やってることは極めて泥臭いのですが、この描写方法はなかなか新鮮です。
 

●パイプライン●

新デンデケデケデケ、とにかく感性がポップです。
そもそも原作の「青春デンデケデケデケ」の舞台が、60年代〜70年代です。
その時代に生まれて経験したことがあるわけじゃないので、その頃の情熱は分かりません。知っている情報の断片を寄せ集める事しか出来ません。
だけど、音楽があるじゃないか。音楽を聞いた時の興奮は、変わらないぞっ!
 
たとえば、かの有名なベンチャーズのパイプライン。

ぬう、すげーかっこいいじゃんっ。
これを聞いて「デンデケはんの電気的啓示」を受けるシーンを引用してみます。

今にしてみたらレトロな音だけれども、当時衝撃を受けた感覚の再現を絵で描くとこんなに見事なイラストレーションに。そう、リアルを描くんじゃなく、音を楽しむ感覚を描くことに、この作品は重点をおいています。
このほかにも、音楽を体感させるシーンが山盛り。
たとえばドラムの巧がまだ楽器届いていない時のシーン。普段はエロ妄想ばっかりのくせに「たたく音」の快感に目覚め一心不乱にオケをたたくグルーヴ感のまあなんとかっこいいこと。
 
感覚を描くのは音楽マンガのキモですが、この作品はかなり特殊な角度から実験的に挑んでいます。
若い頃にとにかく夢中になる興奮、だけどなんだかへっぽこだったりおっさんに囲まれたりする田舎臭さ、そしてカラフルな原色が色あせた感じの60年代カラー感覚。それらをうまーくミックスした上で、現代的な味付けしているのは、それだけでも一見の価値ありです。
これは、今この時代だからこそ描けるんだろうなあ。
 

●サティスファクション●

新デンデケデケデケ、ワクワクと興奮が詰まってます。
絵柄はサダカネ先生のオリジナリティ溢れているのですが、真髄の部分は原作の味をしっかりおさえています。
なんせね、未知の世界に楽器を持って挑む若者達の心が暴走しないわけない。ハートビートがBPMを刻まないわけがない。

自分が大好きなシーン。みんながそれぞれバイトしまくってはじめて楽器に触れた時の場面です。
「叩いても…えんやろうか?叩くの悪いみたいな気がすんじゃ…」「真心込めて叩くんならえんとちがうか…?」「ほうじゃの…それやったらええやろの…」
主人公のちっくんも、ギターが好きで好きで好きで、でも買えないからノートにギターの絵をずーっと書いていたりするあたり、キュンとなります。あるある。
スポーツも絵画も音楽も、若い時はみんな、何か向こうに見える新しい世界に必死に手を伸ばしてるんです。今だって昔だって変わらないよ。
ただ、無謀なだけじゃない。最大の尊敬と憧憬の目線を持ってそこに挑むから、いつだってワクワクするんだ。

The Rolling Stones「Satisfaction」)
I can't get no satisfaction!
満足しないわけにゃいかないぜ。
 

●ア・ハードデイズ・ナイト●

新デンデケデケデケ、男の子たちがとにかくキュートです。
原作読んでいたときは、男子高校生のあせくっさいイメージが強かったです。実際一人が坊さんだったり、一人がにきびまみれの子だったりとやっぱりドロ臭い。
そのへんも含めて、考えてみれば若くていきいきぎゃあぎゃあやっているんです、見ていて面白いはずなんですよね。

この作品、オレンジと黒をチョイスした時点でかなりセンスがいいと思うのです。そもそも改造もなにもしていないキリリとした学ラン、いいじゃないか。少年のシンボルだよ。
最初見たときは古屋兎丸先生の「ライチ光クラブ」を思い出したのですが、そちらは学ランを耽美なものとして描写していました。こちらの学ラン姿は突き進む若さのシンボル。ビートルズ初期の衣装の印象にかぶっていきます。
加えて、白黒のメリハリがある画面がとっても心地よいです。ダサアイテムじゃなく「この学ランを着て楽器を持っていたら、おれたちどこまでもいけるんじゃね?」というのが爽快なんです。

The Beatles「A Hard Day's Night」)
踏んだりけったりなので、気持ちは「ア・ハードデイズ・ナイト」。でもそんなことすら楽しいんだよね。
 

●ジョニー・B・グッド●


Chuck BerryJohnny B. Goode」)
Many people coming from miles around
To hear him play his music till the sun go down
Maybe someday your name'll be in lights,
Sayin' 'Johnny B. Goode tonight''
難しい事なんて考えない。曲にあわせてただ快感と夢(時々欲望)が噴出すだけさ。音楽が聴いてもらえる日を夢見るだけさ。
マンガの中に、ときおりこのチャック・ベリーが顔を出すのも効果的。
オールディーズを知らない少年少女も、ぜひ音楽を聴きながら読むのをオススメします。そしたら興奮5割り増し。曲が分かるだけで楽しさは数倍に膨れ上がります。
作中のオールディーズレコードのジャケットもうれしいところ。
原作好きの人も、まったく未読の人も、老若男女問わず音楽片手に楽しんでワクワクしてほしい作品です。
 私家版 青春デンデケデケデケ (角川文庫) 青春デンデケデケデケ デラックス版 [DVD]
あ、この作品ならこれ欠かせないっすね。最後に一曲。

(Little Richard - Long Tall Sally)