たまごまごごはん

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「二十面相の娘」さんが必死に手を伸ばしていたのはなんだろう

二十面相の娘 うつしよの夜1 (MFコミックス フラッパーシリーズ) 二十面相の娘 1 (MFコミックス)
アニメ見てないけど、食わず嫌いしてた「二十面相の娘」をまとめ買いして読破しました。
一気に読むといろんな感情が噴出してうまくまとまらないんですが、とにかく書き残したいのでメモしておきます。
 

●ヒロインたるヒロイン、チコ●

この作品、何か分かりやすくて目立つわけじゃないので、一般受けするのは難しいというのが最初の感想でした。
読んだら一気に読まされるパワーあるんですが、正直自分もアニメ化の話なかったら読んでなかったです。菫画報は大好きだったんですが、こちらは表紙で内容が分からなかったんです。申し訳なさすぎる。
 
でもね。これは80年代+90年代オタク必読だと思いました。
そうなんだよう、求めていた究極のヒロイン像、宮崎駿がコナン、カリオストロの城ナウシカラピュタで描いたヒロイン像が、恐ろしいほどびっちり詰まってるんだもん。
 
どこまでもひたすらに信じ戦う少女。寡黙で、一人の信じる男性とその思想のために生きる少女。
そして、世界を包含して自分で背負ってしまおうとする少女。
近年あまり見ないくらいがっちりしたチコのヒロイン像にしてやられました。
一気に読んで最後でやりきれないくらい悲しくなって。それも、ヒロインのヒロインらしさを掴みつくして。
読んだあとにものすごく色々な感情が噴出するんですが…彼女が追い続けた二十面相は、本当はなんだったんだろう?
 

●チコとクラリス

色々なところで言われているのが二十面相の娘」のチコと、「カリオストロの城クラリスの対比。
クラリスは「おじさま連れて行って」といって、結局連れて行ってもらえません。
でもチコは自分の意思でついて行きます。さらには能動的に新しい事をし続けることで、二十面相が出ていないシーンでも逆に二十面相の存在感をじわじわ出していくのがとっても気持ちいいんだ。
 
そういう意味では二十面相の存在と、「フリクリ」のハルコさんは対極にありながら、似たような立ち位置だと思いました。
ハルコさんも子供の思想と行動力にものすごく影響を与えていくんですが、少年が大人になるときに二人の関係はまったく新しいものになります。なるけど、あの「一緒に過ごした瞬間」は残るんです、一生。永遠に。
チコと二十面相も、詳しくはネタバレになるので書けないですが、1巻の時点から、いや、題名からしてすでにその「一緒に過ごした時間」が伝わる関係が出来上がってます。
 

●ヒロインは駆ける。●

今友人にあびゅうきょ先生の同人誌と作品集を借りているのですが、その中での「母性的な女性」「尽くし戦い守る少女」が信仰に近いような愛情をもって描かれていました。
あびゅうきょ先生はその後「今はそれは失われた、我々には絶望しかない」とネガティブな力でものすごい作品を描いています。我々はさらに価値がない、ただ絶望を持ちながら死ぬしかない、と。相当アクは強いのですが、ヒロイン像を考える上では欠かせない作家さんだと思います。
 
はて、小原先生は逆に「ならば自分が作ろう」としてチコを描いています。もうね、とにかくチコはものすごく「理想のヒロイン像」を体言していくわけですよ。
あらゆる面で万能っぷりも披露するんですが、それが「おじさんについて行きたい」「おじさんに会いたい」一心で、必死にやっているのがいいんですよ。最初から完璧なんじゃない、もう血を吐くような努力と根性と憧れとで。
古風なヒロイン像です。でも理想のヒロイン像の一つであることに間違いない。
 
チコが手を伸ばしていたのは、二十面相。
でも本当に手を伸ばしていたのは、二十面相という姿の何か。
そして、それを追うだけじゃヒロインは完成しません。彼女が手を伸ばしていたものと、小原先生が描こうとしていたのは、同じ一つのものだと思うんです。だからこそ、あのラストで一つになっていく様に震えてしまうんだ。
だからこんなにも読んだあとチコが好きになる。
 
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余談。
チコは「かわいい子」として描かれているんですが、それが本当に全編に溢れていてかわいく見えるのが魅力だと思います。読み進むほどにかわいく見える!
 
あとは明るさと重さのメリハリ
個人的に親友の小糸さんが死ぬほど好きです。とことんまでマイペースでムチャで、おてんば少女を貫き通したのは好感もてます。重い展開の中での清涼剤でした。
多分キュア小糸とキュアチコでなんかできるよ!
あ。アニメはEDだけ見たんですが、少女探偵団メインなのがいいですね。いや、女探偵団?
 
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小原作品がアニメになったこと自体が驚きだなあ。もうさ、菫画報アニメ化しましょうよこの際!
 
〜関連リンク〜
少女怪盗の冒険「二十面相の娘」(しばた@OHP)
チコと二十面相の冒険の日々「二十面相の娘 うつしよの夜」1巻(フラン☆Skin)
小原愼司「二十面相の娘(8)(完)」(幻想のさ・く・ら)