たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

青春って、結構苦いのよね。「HR ほ〜むる〜む」

●中学・高校時代。●

中学・高校時代って妙に大人ぶってたものなんですが、今思うと精神的にも身体的にもやっぱり子供だったなーとじわじわ感じます。
「そりゃ年をとったからだよ」と言われちゃうよね。そうなんですよ。
まあ精神的にはそんなに成長してないんですが、体はイヤでも成長するもの。改めて今の子供たちを見ていると「あれ、こんなに華奢だったっけ?」と不思議な気分になることしきりです。発育のいい子もなんかアンバランスだったりね。
そんな体と心が、浮かれて楽しいのにアンバランスなのがステキな中高時代。
 

●なにもかもがドキドキだった日々●

今春に堂々完結した4コママンガ、長月みそか先生の「HR ほ〜むる〜む」が描く少年少女がね、とてもそんなアンバランスさがにじんでいるんです。
特に女の子。ものすごく華奢なんですよ。
胸もない。腕も細い。グラマーでもなんでもない。
この作品はそんな子たちが、ドキドキしたりワクワクしたり、でも辛酸をなめてどうしようもないくらい胸が締め付けられたりする作品です。
 
まずは明るい「青春」から。
男の子は女の子を見てドキドキしますよね。女の子は男の子を見てドキドキしますよね。
特に性に多感な時期ですもの。ありとあらゆるハプニングは一生の宝物レベルですってば。もうね。

透けて見えたブラジャー。運動後の女の子の胸。思わぬところで見えてしまった柔らかさ。
男の子ならたとえ子供ができておじいさんになっても、これは忘れられない。間違いない。
 
長月みそか先生のナイスなところは、それが別にバインでボインじゃないところと、決して派手な衣装じゃないところなんですよ。そう、ほんのちょっとだけ地味に!
小学校の時に比べてほーんのちょっとだけのその微妙な成長加減だからこそ、ドキドキしたんです。ああ、自分たちと異性の子の体は違うんだと。
 

なんだかわからないうちに恋をして、なんだかわからないうちにうまくそれが表現できなくて。
これは男の子も女の子も同じです。恋という言葉はわかってはいても、いざそうなったらなんだか分からなくなっちゃいます。今思うとかわいいものですが、当時はいっぱいいっぱいなんです。
幼かったかもしれません。でも確かに、ドキドキしている時の思い出はやっぱり「甘い」ものです。
 

●性のゆらぎ●

しかし、「懐かしさあふれるラブコメディ」ですまないのがこの作品の恐ろしいところ。
そもそも人を好きになる以上に、中高生の時期には抑えきれない性欲と好奇心があるじゃないですか。
中高生のラブコメディでその要素をいれると、やたらと生々しくなってしまうので微妙に避ける場合が多いですが、それをこの作品は避けません。

修学旅行のカップルを覗き見てしまった時の「いけないもの見ちゃった…!」感。
いやいや、中学生だと確かにあるさ。あるともさ。そういうのもいるさ。一部。
とはいえそういう経験ない子の方が多いわけです。思っているより中学生の時は性には純朴な子が今も昔も多いです。
だけど「自分は関係ない」ではないから困ってしまいます。イヤでも性欲に翻弄されてしまう、成長する体があります。カップルになっていると「そういうことしてるんだろうなあ」と余計な妄想に胸をかきたてられます。どんどん苦しくなります。
あっけらかんと、楽しいことだけして過ごせればと感じつつも、周囲も自分もどんどん性が育っていきます。慌てます。びっくりします。不安になります。
 

最初にも書いたように、とにかく華奢です。
中学生視点だと、どんどん育って急に大人になっているので結構たくましく育っている気がするものです。中学生から見た高校生なんて大人びていて大変です。
しかし大人から見たら、中高生はまだまだ壊れそうな体なんです。
その感覚が絵に表れているから、ほほえましいだけじゃなくてなんだかとっても危ういんです。
ただのコメディでは終わらない。「萌え」の言葉じゃ語れない。
  

●苦い。●

さまざまな少年少女たちが出てくるこの作品、もちろんうまくいく恋愛もあります。が、うまくいく人がいるということはうまくいかない子たちもたくさんいるわけです。
自分もうまくいかなかったですともさ!んで、うまくいかなかったらそれなりに何かあるかなとか思ったりもしますが、当然何もないです。ちぇ。
青春時代はハッピーばかりじゃないもんね。むしろ苦いことのほうがよっぽど多いヨ。

自分が好きなキャラがこのメガネ、島崎くん。
メインキャラというよりは名脇役です。彼を見ているともうどうしようもないくらい泣きたくなります。
すっごいいいやつなんですよ。一生懸命なんですよ。んで明るくて、それでいて冷静に友人たちを見ていて、かつ気がきくしっかりものです。時々調子がいいムードメーカーです。
そういう子ほど「いい人ね」なわけですよ。しかも好きになった相手が友人の好きな人、しかもしかも両思いっぽいと来たものだ。
ここで引くのもいいんですが、彼はアタックもします。でも「いいヤツ」だから手加減もしちゃうんですよ。
彼の生き方はとてもリアルで痛々しいです。もうひたすらに苦いです。
 
ああ、青春てうまくいかねえんだよなあ。
 

ほかにもたくさんの子たちが出てきて、一生懸命に恋をします。時には大人も巻き込んで恋愛模様は広がります。
それを明るく軽快に描いていく、とても楽しいマンガなんです。半分は。
しかし残り半分はビターすぎるくらいほろ苦かったり、もがいてじたばたしたり、幼さゆえの空回りでできています。
これはなかなか当時は冷静に見ることのできなかった部分。大人になってから思い出すからこの子たちが愛しくてたまらないんです。
 
ああ、戻ってやりなおしたいな。できれば中学生に戻りたいな。
でもさ、実は通り過ぎたから、そう感じるんですよね。だからこういうマンガで追体験できることこそが、今の幸せなのかもしれません。
苦いけどね。
 
HR ~ほーむ・るーむ~ (1) (まんがタイムKRコミックス) HR ?ほーむ・るーむ? (2) (まんがタイムKRコミックス)

18歳以上の人…いや、もう大人になった人は、できれば「あでい いんざ らいふ」はぜひ読んでほしい作品です。成長期の苦味とアンバランスさと、どうしようもないドキドキが存分に出ている傑作です。
にしても、ここまで丸襟で肩紐あるスカートの田舎くさくて幼い制服を描ける人はなかなかいません。こんな風に見えるなあ、という脆さでいっぱい。
 
〜関連リンク〜
ONEHITWONDER
長月みそか先生のサイト。今後またLOに復帰されるようです。心の底から楽しみ!
…あれ、また今日もLOの話してる…最近いくらなんでも自分がLO信者すぎる気がしてきました。でも好き。
長月みそか 『HR(ほ〜むる〜む)』(博物士)

「橋沢市立山葉第二中学校」は長月みそか作品に共通する世界になっている