たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

金平守人先生の、ブラックユーモアと鬱ライン。 

「とりあえずそれで」読みました。
今までの金平先生の毒だらけの暴走ネタを知っていると、意外とあっさり楽しく読めます。むしろ金平先生作品の導入編にいいかも?ここからRとかデスカとかに逆流するとちょうどよさそうです。一部のギャグなし鬱マンガは、一度読むと忘れられないインパクトがありましてな。

特に「カネヒラデスカ?」は、全体的にブラックで下品なギャグの詰め合わせなんですが、これのラストに入っている「サヨナラチビ」で本当に救いようのない気分になります。金平先生はこういうのを描くと死ぬほどうまいです。
もっともっとこういう黒いネタを描いて欲しいのですが、多分ギャグとのバランスがあってこそ成り立つんでしょうね。
 
他のマンガ家さんと比べるのもあれなんですが、たとえばさよなら絶望先生の久米田先生は自虐ネタをまじえながら、美形の少年少女をセンスよく描くことで、非常に完成した世界観を作ります。ただ毒舌なんじゃなく、ネガティブながらもエンターティナーだと思います。また時事ネタといえば木多康昭先生も切り口がそのまんまなのですごい爆弾ほおりこんできますが、「喧嘩商売」はそれに頼らず、ちゃんとマンガとしてもアクションとしても面白いから成立しています。
 
金平先生はそういう「ブラックユーモア」ネタに対して、人間のダメな部分を徹底的に残虐に掘り起こします。陰鬱とした笑いというよりは、アメリカンの「ギャハハハ」という下卑た笑いを狙っている気がします。そこがうまいんですよね。
だからふっと力を抜くと、強烈にインパクトのある悲しい話や陰鬱な話を持ってくるし、そうかと思いきや次の回でむちゃくちゃなギャグマンガを描く。まるで躁鬱のようなテンションの作品群を描いていました。
 
最近ではこの「とりあえずそれで」にしても「エロ漫の星」にしても、自分を主人公にしつつだいぶ落ち着いた感がします。だけれどもネガティブ思想といい意味での下品さは健在なので、非常にすっきり読みやすくなった、という感じです。
なので、入り口的にはもってこいです。うん。
 
ただ、個人的にはもっとアクの濃い、鬱鬱としたマンガを見たいなあ。ね、金平先生。
あと、エロマンガネタを描く、ヤングコミック「エロ漫の星」が大好きです。これも早く単行本化しないかなー、というか金平先生売れっ子だなあ。