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映画「デトロイトメタルシティ」の夢と、「プリキュア5」の夢

映画版のデトロイトメタルシティ見てきました。
感想だけさくっと書くと、いやー面白かった。予想以上にしっくりきているというか、あんなにきわどい題材なのに家族でも楽しめるくらい見事にまとまって作品として成立していました。加減も見事なので、自分は原作付き映画として納得の出来どころか、思った以上に楽しめました。
根岸のノーマル状態とクラウザー状態のギャップに面白さを凝縮したのが軽快に楽しめるポイント。一番のキモの部分をしっかりつかんでいるので、マンガ読んでない人でも楽しいです。
そして、なんといってもクラウザー役の松山ケンイチと、社長役の松雪さんの演技が超一品。怪演すぎ。
おおげさがかった芝居がとーっても気持ちいいんだこれが。ほかの映画ではこれはなかなか出来ないでしょう。
そしてもうひとつ注目すべきはOP。すげーセンスよくてかっこいいです。必見。
 
はて、DMCは基本ギャグなんですが、映画の中では「夢」のあり方が問われていました。まあそれもネタやギャグによっていくのですが、なかなかただ笑ってすますにはもったいないポイントをおさえていたと思います。
このへんを、プリキュア5とシンクロさせながらちょっと書いて見ます。
ネタバレってほどでもないですが、一応収納しておきます。
 
 

DMC、根岸の夢とファンの夢●

主人公根岸の夢は、マンガ版映画版ともに「おしゃれなミュージシャン」。
そもそも「おしゃれってなんだよ!おしゃれファックめ!」と突っ込みたくなります。お前は音楽がやりたいのか、おしゃれ文化にあこがれているだけなのかと。
実際根岸の憧れって的を射ておらず、形式にこだわりすぎているのがギャグとしての面白さでもあります。芯があるようなないような。それでも佐治君が惚れ込むくらいだから、しっかりはしているのですが、形にしがみついて空振りしているのも確か。
社長がそんな彼を「天才」というシーンが映画でもあるんですが、ここはぐっときますよ。彼の形式だけのオシャレっ子ではなく、根っこに眠っているデスメタル精神と音楽性と、パフォーマーとして相手の心をつかむカリスマ性を見抜いているわけです。
 
マンガではそのカリスマに魅入られたファンがまた滑稽で面白いところ。「でたー!クラウザーさんの1秒間に10レイプ発言だ!」なども映画でも健在。いやあとばすとばす。
しかし、映画のような媒体で生身のファンがクラウザーさんに心酔する姿は、夢を追う人間の輝きもまた持っています。もちろんプロレス的なノリの中での出来事ではありますが、そんな理屈ではなくクラウザーさんをたたえるファンの様子には心打たれたのは自分だけでしょうか。
 
根岸はそんな中で「もう夢なんてかなわない、どうでもいい」と自暴自棄になりますが、そもそも「夢」ってなんだろう?というところに焦点が当たっていきます。
わからない言葉です、夢。クラウザー信者は陶酔しているだけで夢はないのか?根岸のオシャレポップは本当に夢なのか?
 
この映画はそのへんも軽快に笑わせてくれますが、同時にどうしようもなくやさしく語りかけてくれます。正直ね、DMCで泣きそうになるとは思わなかったですよ。
特にお母さん。何もいわず全肯定する母親の姿は、夢を忘れたり挫折した大人には反則なくらいです。不意打ちでした。
夢は「かなう・かなわない」じゃない。夢に貴賎はない。
クラウザー根岸はどの夢を選ぶのか…それは見てのお楽しみ。
 

プリキュア5の夢●

ちょっとここでプリキュア5で描かれる「夢」と、映画版DMCの「夢」を照らしあわせて見ます。
すごい極端に違うようですが、実は根っこの精神は同じです。
 
プリキュア5では子供向けに「夢」を描き出しますが、わかりやすい地点の職業に夢を置いているようで、実はそうでもない描写がちらほら見られます。
主人公ののぞみも今では先生になりたいという夢がありますが、かつてはありませんでした。それで行き惑い、特技がないことを憂い、悲嘆することもありました。
しかしそれらすべて含めて、全肯定するんですよね。特に小々田先生がそのへんを「それでいいんだよ」と言うやさしさを見せます。
無印5のころの気球の話なんかはその色がとてもよく出ていました。実際彼女はリーダーシップをとる信頼される存在ではありますが、ほかの4人に比べて特技がないです。だけどそれをつなぐ存在として機能していました。
彼女は、いるだけで誰かの夢を助ける、という補助的な夢の使者でした。
 
今回GOGOの26話では、都会で本当のヒーロー(ヒロインではない)になりました。
彼女たちは「何かに秀でる」というよりも、「人の夢をかなえる」存在として描かれています。
 

●それでいいんだよ●

DMCクラウザーさんも、映画版ではヒーローですが、実際の中身は貧弱な坊やなわけです。
しかし彼は「人の夢をかなえる」存在になっています。彼がいることで誰かの夢が生まれるわけです。それがはりぼてでも「それでいいんだよ」と全肯定です。それでいいんです!
 
夢ってなんだろう?というのは人間の永遠のテーマ。かなえてこそ夢、という人もいれば、その過程が大事、という人もいます。
DMCプリキュア5も、それ以前に「夢を見ること自体がいい」「夢見られることはすばらしいこと」という根本的なところで許容しています。
それがとても心地いいし、勇気わきます。
 
ああ、夢かあ。たまには見てもいいかもしれない。
笑いの多い映画ですが、「夢」を考えながらしんみり見るのも、なかなか楽しいですよ。