たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

少女の触れられた感覚を紙の上に。「ツイン・テイル」

●触覚、味覚、嗅覚、視覚、聴覚●

人間は自分以外の人の感覚を知りません。
同じものを見ても相手がどう感じているか分かりません。同じものを食べても同じように味わっているか分かりません。
そして、恋人同士で触れ合っても、相手がどのように感じているか分かるようで分かりません。
 
でもね、マンガってすごいんだぜ。
その感覚を紙の上で、できる限り伝えられるんだぜ。
 

●触れられる感覚●

快楽天」ではじまった関谷あさみ先生の「ツイン・テイル
もうこれが読みたくて読みたくて、何度もコンビニに行った上、快楽天を手にしてから知人(無論マンガなんて読まない人)にあったというのにうれしさのあまり快楽天を見えるように持ったままだった自分がいるほどです。冷静に考えたらどう思われていたかもう分からない。
 
まあそれはともかく、関谷先生といえばとても丹念にやさしく触れあう関係性と、その感覚の描写力のするどさです。
今回の「ツイン・テール」第一話・二話(二話一挙掲載!!)はセックスシーンこそないものの、その「感覚」描写が極めて秀逸なので、ご紹介させていただきます。
 
主人公は双子の兄と妹。それぞれ似たような雰囲気ですが、片方が成長していくのが気になって、急いで彼氏や彼女を作っちゃったりします。そんな短いお話。
 
まず妹の日世子と彼氏。まあまあラブラブながらも、日の浅いカップルです。えっちをするような踏ん切りはつかず、日世子もついつい兄貴の話をしてしまう、そんな関係。
とはいえ、やはり若い男女、近くに触れ合ったら気持ちが徐々に高まるわけです。この「徐々に」がくせもの!いかにじらし、少しずつ距離を詰めていくかはエロマンガ永遠のテーマであり、同時にページ制約との永遠の戦いでもあります。
しかし関谷先生はすごいね。ストレートなセックスシーンなしで極限まで女の子の「触れられる感覚」を描いてます。
 

最初はそんなにキスしたいわけでもないのに、鼻息あらい彼氏についつい触れられてしまう日世子なんですが。
耳ですよ耳。この手がまず髪の毛にゆっくり触れ(ここがまたすごくイイ!)、その指先が耳にいって、やさしくやさしく触れるんです。耳が真っ赤になるほどに。
この反応と指の動きだけで相当な量の「触れられる感覚」の情報が詰まっています。コレを見てビビっとくる人もいれば、指の方を見てグッと来る人もいるでしょう。どっちの感覚になるかは性別もあるでしょうし、読む人次第。両方楽しめば二倍キモチイイ。
 

男側はもう、どう攻めるかでいっぱいいっぱいなんですが、女の子側が感覚に流されながらも時々思考が別にいくのも面白いですね。ここではキスではなく、ぶつかっている鼻に意識がいっています。
このへん、自分は男なのでよくわからないのですが、お互いまだ初々しい状態で「何も見えなくなる」のか「なんだか妙に周囲のどうでもいいことが気になるのか」は、描かれ方によってかなり興味深いところだと思います。
 
そして、一番秀逸だった「感覚」の描写のシーン。

男が調子こいて、手を股間にこっそり触れたシーンなんですが、「ああん」とか「ビクンビクン」とかじゃないんですよ。
「ぞわあああ」
冷や汗の描写がまたすごい。
ですよね。自分は女性じゃないからこそ、この感覚の描き方には感服するばかりです。エロマンガ脳だとどうしても「触ったらすごく気持ちよくて・・・!!!!」みたいなストレートな絵面を想像してしまうのですが、そりゃそれは最高ではあるのですが、触れられることで鳥肌が立つほどに全身が震える感覚をたたき出すことに圧倒されます。
また、友人が言っていたのですが、男の子側が真っ黒なんですよね。
これは相手を軽んじているわけではなく、感覚がすべて少女側に集中しているから。「これはぞわぞわしている接触部分にだけ神経がいっているからじゃないか?舌にも神経が行っているから、こんなに艶かしく照っているのかも」と言われて超納得。もうそこにしか意識がいってないわけですよ。
 
その繊細さと、ちょっとびっくりするような瞬間的に体を駆け抜ける感覚描写に、まるで自分が少女になったかのようにその感覚が神経再現されるから驚くわ。
一生かかっても感じ得ない異性の体の感覚を、マンガを通じて体感できるなんて、幸せなことです。
 

●少年の感覚●

二話目はお兄ちゃんのほうの話。
こちらは身体感覚以上に、彼女との関係が面白いのでそちらを楽しんでいただきたいのですが、もちろん少年の「触れられる感覚」もしっかり描かれています。
セックスはしないんだけどね。

体がこわばり、力が全身に走ってしまうようなこの少年の描き方。
むしろ男性だとこのオトコノコに感情移入して「エロさ」を感じるのではないでしょうか。
またこれに対する彼女側がよくてねえ。

この瞳と、脳内麻薬の出っぷりときたら。
エンドルフィンびりびり出てます。いわゆるスイッチの入った状態。
セックスはしませんが、かえってエロいよ、この子たち。
 

●初々しさ・・・という名前の感覚●

「初々しさ」というのは何も心の若さだけではありません。
心は体に直結する、心が敏感なら体も敏感になる。
関谷あさみ先生の作品は、体を通じて常に心の部分を描いてきました。
今回はそれがさらに、「心」と「体」の感覚の部分に焦点を置き、あせらずじっくりねっとりと描かれています。
これからショート連載ということで、これがじわじわ読めると思うと幸せ。
そりゃーもーオトコノコなのでえっちなシーン早く見たいという思いもなくなくなくなくなくないのですが、ここはちょっとずつちょっとずつ距離をつめていく、五感が駆使された感覚を楽しみまくりたいです。月の楽しみがまた増えました。

 
ちなみに今月の快楽天でツボだったのは、小梅けいと先生。「パンツじゃないから恥ずかしくないエロマンガをやってくれました。ありがとう、ありがとう!見たかったんだこういうのが!
とはいえ乱交の小梅先生、あれだけの人数を個性豊かに10ページに詰め込みまくるのは想像を絶する作業量な気がします。10ページだけど20ページ分のパワー使ってると思います。まさに「パンツじゃない」パノラマ。