たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

大木凡人みたいな女の子は意外とかわいい。「鴨川ホルモー」

●無口キャラはリアルに横にいると苦手だったのですが●

無口クールキャラは、二次元だととてもかわいいです。
しかしリアルに横にいるととても困ってしまいます。
あれですよ。たとえば同じ部屋に綾波レイがいて、1時間過ごせと言われたら正直チキンなおいらはどうすればいいかパニックですよ。
「今日はいい天気だねー」「そう」「どこからきたの?」「言う必要はない」「好きな食べ物なに?」「特に。」「趣味は?」「ない」
うわー、間が持たない。ぞっとします。これはプレイの一環でしょうか。
 
万城目学原作、渡会けいじ作画の鴨川ホルモーにもそんなキャラが出てきます。

いやあ…こりゃしんどい。間が持たない。
照れ屋なのではなく、思考が読めず、もしかしたら嫌っているんじゃないかというくらいクールな彼女の名は楠木ふみ。
もっさりした地味すぎる服装に、適当な髪型。そして大木凡人のような眼鏡
だが、そこまで極端に「地味」に走ると、逆に萌え要素になることをぼくらオタクはかぎわけてしまうのであった…。
 

●いかにも大学生●

帯には「いかにも京大生、イカキョーが繰り広げる青春活劇!」と書かれているこのマンガ。
いや、うーん、京大生っていわれてもよくわからないからなあ、とは思いつつも、表紙の楠木の顔に惹かれて、なんのマンガかすらわからないまま買っていました。もちろん原作は読んでいません。

ね。
なんかこうピンとくるじゃないですか、レーダーが。
とはいえまだ分からないわけです。ホルモンじゃなくホルモー。しかもこの子最初全然出てこない。てっきり大学に入ってこのもっさりした楠木と仲良くなっちゃう話しかと思ったらそうでもない。
そう、京大生はあんまり意識しなくていいです。「いかにも大学生」な緩さで物語は幕を開けるわけです。
主人公は特になにかあるわけでもなく、お金がないので新歓コンパめぐりをしているぼんくらな青年なのですが、彼が最初に一目惚れするのが早良京子さん。チャームポイントは鼻。

絵に描いたような美人なわけですよ。
いや!正直コンパにこんな子がいたら、そりゃ自分が大学生なら視線はちらちらいきますわな。
とはいえ、それでいて手を出せないあたりがまたなんともしょんぼりだらだら大学生らしい。そういう曖昧チキンな男、嫌いじゃないぜ。
 
だがしかし、なんだかレーダーが反応するわけです。
エマージェンシーエマージェンシー。一目惚れしたきれいな女の子キャラとはうまくいかない結末があるんじゃないのかねBOY。
まあ原作読んでいる人はこの時点でどうなるかもう分かるのでしょうが、ここは妄想させてください。
 

●気にくわないおんなのこ●

そんな「早良さんかわいー、仲良くなりたーい」というぐだぐだ生活に、二つの点で波が立ちます。
一つは「そもそもこのサークルなにするの?」ということ。これはネタバレになるので書きません。ぶっちゃけ謎のまま、1巻の半分くらいまで進むほど引っ張ります。本の最後までいってもいまいちわからないほどです。
そしてもう一つが、先ほどの大木凡人…じゃなくて楠木ふみの存在。
とにかく愛想がない、会話しようとしない、人に興味がない、冷たいと、神経すり減らしそうな女の子なわけです。

まあ、M属性な人にはゾクゾクするほどステキな子なんですが、明るく優しい早良さんとの対比がマンガだと強烈すぎて、なかなかどぎついキャラになっています。
会話の端々で、さも気に入らないようにしゃべるもんだから「なんだよ」と一言も言いたくなります。打ち解けたかと思えば「黙れ安倍」の一言。
これで仲良くし続けるのは至難の業です。
 
ですが…何だろう、この子から感じる「何かあるよ」オーラは。
 

●意外とかわいい、ってベタだよな。●

うさんくさい部活、うさんくさい先輩、うさんくさい女の子。
それらも早来さんがいれば、あの子がいればぼくの生活は幸せさ!ってな−。
しかし、ちょっとした瞬間に「なんかいやな女の子」は急にかわいくなるからこりゃ大変。

どきん!
な、な、なんだ?このドキドキは…。
他の扉絵にも彼女が出ているのですが、やはり妙にどきどきさせる視線を送ってくるからまいります。そもそも表紙が楠木じゃないですか。
地味でぱっとしなくて、冷たい子がかわいいかもしれない…なんてベタだな!とマンガ内の台詞で言ってしまうほど。
だがそのベタがいい。いいよいいよー。
 
実際、男の子って地味な服装の子が好きな割合高いと思うんですよ。必ずしもではないですが、地味で飾らない外見からふと見えるかわいさを見つけると、ドキドキ度5割り増しな公式があるからです。その後人間関係を築けるかどうかで好意は変わってきますが、マンガの中で、かつリアルなような曖昧なような空間でそのような少女が出てくると、それは恋のように胸を高鳴らせるものです。
だから、ちょっとしたこともまるでイベントのように感じられてしまうのです。

ほんとベタだな!(にやけづらで)。
原作はどうなのかちょっとわからないのですが、このマンガは「日常の中の非日常」の描き方が巧みなゆえに、楠木のような女性との出来事がめちゃめちゃ輝くように描かれています。主人公は確かに早来さんに気があるのですが、楠木の描写が多いため「ひょっとしたら楠木のこと気になってるんじゃないの?ってかおれが気になるんだが!」となってしまいます。
 
地味な子が実はかわいい、というのはむかーしからある手法ではありますが、ただそれではもう読者は釣られません。
しかし、うまいこと配合された「大学生のゆるさ」と「非日常」が、そのエッセンスを思い切り引き立てるのです。隠し味によってうまみが増すように。
よし、じゃあお兄さん、釣られちゃうぞー。
楠木さんかわいい!
 

●うさんくさいくさい●

楠木という少女の不思議さうさんくささに拍車をかけるように、このサークルの存在もうさんくさいです。そこが一番面白いところ。
特に先輩のスガさんのうさんくささが軽快。

うさんくせー。
究極超人あ〜る」の鳥坂先輩ほどしっかりしておらず、「涼宮ハルヒの憂鬱」のハルヒほど奔放でもない。なーんかうだうだしていて、なーんかいい加減。信じて付いてこいってほうが無理なこのキャラの飄々としたところが、作品のキモにもなっています。このキャラがいるから、主人公や楠木さんがひきたつわけですよ。
 
結局「ホルモーってなによ」とか「このサークルなにもの?」とか「楠木さん何考えてるの?」など謎は多いのですが、それは内緒。読んでのお楽しみ。
とりあえず楠木さんのかわいらしさや、全体に漂ううさんくささに惹かれたらおすすめです。とっても軽快に、スローな大学生ライフ+αを楽しめます。
 
にしてもね。やっぱり高校・大学生の不思議サークル活動もののマンガってのは、なぜこうも面白いんでしょうね。そこに在籍したい、っていうのもあるのかなー。

鴨川ホルモー
鴨川ホルモー
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万城目 学
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原作の万城目学氏の「鹿男あをによし」は大好きでした。ホルモーも原作買おうかなと思いつつ、マンガが面白いのでネタバレが怖いので保留中。