たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

そして彼は自転車をこぎながら、全力でアニソンを叫んだんだ。

今、異様なまでに熱量をどんどん蓄えて、破裂寸前になっている自転車マンガ弱虫ペダル
様々なところで評価されつつも「●●と比べたら・・・」と比較対象にされやすいのは、自転車がキーアイテムになっているからでしょう。
でもね、読めばわかるよこの情熱と楽しさ。
 
簡単に書くと、オタク少年小野田坂道が、そのアキバに行くために自然に鍛えた脚力と、天性の前向きさで信じられないくらい自転車の世界に勢いよく目覚め、成長する作品です。
こののびっぷりが半端なくて、背筋がぞくぞくするんだ。そもそもママチャリでロードレーサーにかなうわけがないのに、彼は挑んじゃうんです。ジャージで。勝てるわけないじゃん。
だが!そのギャップをこえて食らいつこうとする彼の顔は、笑顔!
徐々にそのレースの中で成長を遂げ、ただひたすらに前に向かって、ライバル(?)に向かって突き進む彼の姿が心をしびれさせないわけがない!
 
…といってもこれがまだストーリー的には序の序の序なのが恐ろしい。もうクライマックス状態なんだもの。
 
はて、自分はたまらなくドキドキしながら読んでいたわけですが、不安もありました。
「弱虫ペダル」はオタクから脱却しちゃうのかしら?
どんどんアスリートとして成長していき、周りの雰囲気も自転車一辺倒になっていくこの作品。確かに面白いんです。面白いんですが、初期設定の「坂道はオタク」という設定が消えていくのが怖かったんです。
 
まあ、なんてことなく見えるかもしれません。それほど重要じゃない部分かもしれませんよええ。
あくまでも自転車を好きになったきっかけが「オタク」ってだけかもしれないですよ。ええ。
でもね、自分にとってはそこが、そここそが魅力なんです。
 
オタクがすごいわけじゃないけど、自分の好きなものがあって、そのためになら労力を惜しまない彼の姿は痛々しくも、輝いていたんです。
アニメやまんがも好き。自転車も好き。どちらも彼の原動力なわけですよ。
それが、自転車に比重がいってオタクを捨ててしまうんじゃないか、と不安になりました。まあそれでも、彼が成長するならそれでいいよ、とも思ったよ。思ったけどさ…。
 
そこに来て今回。ド素人なのにとうとうトップに追いついたわけです。
抜くか?!抜かれるか!?どっちだ?!どっちだ!!!!!
そんな一瞬、最高の一瞬の時に、彼の口から言葉が漏れました。
 
「ヒメッ!!!」
 
全力を、すべてを、何もかも出し切った瞬間に出た言葉が、彼がいつも口ずさんでいたアニソンだったのです。
ヒーメヒメヒメ(「ラブ☆ヒメ」OP「恋のヒメヒメぺったんこ」)
 
もちろんさ、歌になんてなってないよ。
もう、ただその一節が飛び出して漏れただけなんだよ。
だけど、その最高の一瞬にこの歌が出たときに思った。
勝った!!!!
 
坂道くんの原動力は「自転車面白い」と「オタク力」。
二つの好きが化学反応したときに、本当の全力、自分の中のすべてのすべてが出ないわけがないです。
この後結果がどうなるかまだわからないですが、彼がずっと心に「ラブ☆ヒメ」を持ちながら、決して捨てることなくそれを動力にしながらこいでいたことがぼくはうれしい。すごくうれしい。
だって、好きなことは「捨てて次に行く」のではなくて、「次への力に変えていく」ものだから。
 
坂道へ。
こげ。こぐがいい。
どこまでも「ラブ☆ヒメ」を歌いながら。