たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ねこむすめ道草日記」に見る、視点の位置と頭身のデフォルメ

コメント欄より面白いのがあったので、ピックアップ。

うえぽん
『おおー!ねこむすめ超いいですよね?!
もう全部いいのですが、気になっていることを一つ。
頭身のバランスがばらばらなんですよね?
それがまたなぜか不自然とかではなく、むしろ自然な流れ(コマ内のテンション的な何か)で頭身が変わっているんですよ!
なんなんですかそれ!
って絵描きのはしくれとしては思いました。
総じて言えば 猫さんカワユスってことなんですが。』

まったくもって黒菜さんカワユスにつきるのですが、これはとても面白い話だと思います。
そうなんですよね、この漫画、ねこむすめの黒菜さんだけ頭身がころころ変わるんです。
漫画は相手の感覚やとらえ方によって、絵の描き方、頭身、表情などのデフォルメを加えて演出をすることができます。この「ねこむすめ道草日記」では、そんな視点の移動に伴って頭身や体つきの変化が自然に描かれています。
ちょっと比較しながら見てみます。
 

●幼い少女としての黒菜●

黒菜というのは、この漫画の主人公。化け猫娘です。
で、もともとの名前が黒菜だったわけではありません。人間につけられた名前が黒菜です。
そのため、人間とそれぞれ様々な形で関係をすでに築いているのが前提になります。人間それぞれによって、この化け猫少女に対する接し方、距離感がばらばらなのです。
 
まず、子供っぽい頭身のシーンを見てみます。

これは黒菜がちょこちょこと遊びに行っている、人間のおばあさんとのシーンです。見ての通り、かなり幼い外見をしています。10才よりも幼い感じですね。
これは、今この姿を化けて見せているのがこの老婆だけ、というところにポイントがあります。他の人間にはこの姿は見せていないのです。
つまり老婆から見て幼い女の子が助けてくれたという感覚になります。
 

●子供から見た黒菜お姉さん●

では子供たちから見た黒菜はどうでしょうか。

最初の時点では先ほどの老婆の時と頭身は同じくらいです。
これは「子供の姿に変身している」という黒菜の感覚になります。(平常時はネコミミとしっぽが出ている)
しかし、これを逆に子供達の視点から見ると、こうなります。

変身が解けたのもありますが、かなり頭身が大人っぽくなっています。
この子たちにしてみると、黒菜は「猫のおねーさん」。つまり、自分たちより年上の女の子なんです。
この2コマはそれほど離れていないページで描かれているのですが、ここだけで黒菜をどういう視点で見ているかが、頭身のデフォルメで分かる仕組みになっています。
 

●少女という性的視点から見た黒菜●

人間もみんながみんな好意的ではありません。中には黒菜を見て研究しようというよからぬ?ことを考える人もいます。
そういう人から見ると黒菜は
・未知の生物
・女性の形をした生き物
と書き換えられます。先ほどの「子供」「おねーさん」とは大きく違います。
中でも研究員の一人、小岩井くんは黒菜に「女の子の色気」を感じています。一対一の関係が無く、全くの外側からのセクシャルな視点です。

今までになかったくらい、非常に生々しい黒菜のむちむちっぷりが描かれます。
こうすることで、読者も小岩井君同様、かなりドキドキしながら黒菜のセクシーな姿を味わうことになります。
実際はここまでセクシーではないかもしれません。しかしこのようなデフォルメとリアルの切り替えで、視点が大きく揺さぶられて、この黒菜というキャラが引き立つテクニックになっています。
ちなみに仲良しのカッパが黒菜を見るシーンや、スク水姿を撮るシーンも、カッパが非常にエロい目で見ているため、とても肉感的な描かれ方をしています。要チェック。
 

●黒菜が感じている自分の身体感覚●

今までのは「老人」「子供」「外部の男性」の3パターンで見てきましたが、では黒菜本人はどう自分の身体を感じているのでしょうか。
それは妖怪同士のみでいる場合をミルトわりとわかります。
たとえばこのシーン。

まわりで見ているのは妖怪のみで、リラックスしきっている状態です。
ねこおねーさん」として見られている時よりも、幼い感じですね。ちょっと小さくて、自由自在に走り回れる姿、それが黒菜の感じている自分の体だと思われます。
 

見方によってはむちむち、見方によってはとても幼い。そんなバランスの間をこの黒菜は行き来します。
確かに頭身はころころかわっているのですが、それがごく自然で、むしろ「人間と妖怪との関係」というテーマに即した「視点」へ誘導しているのはお見事。どっぷりと作品に浸かりながら、黒菜を様々な角度から楽しむことが出来ます。そしてその角度が多いからこそ、色々な魅力が見えてくる素敵なキャラなのです。

黒菜かわいいかわいい!がやはり一番の魅力なんですが、人間との距離感はあるのにさらっと共存しようとする妖怪たちの悩みも含めて懐かしさを楽しめるのがこの作品の面白いところ。「妖怪もの」って共通して「日本の光景」らしさに根付いている気がします。絵柄がとてもやさしいからこそ、さらにその温かみがにじみ出ています。色々な人におすすめ。
まあそれはともかく、黒菜の脚、脚だよ。むっちむちだよ。太眉スパッツとか、殺人級だよ。ビバ!
 
〜関連リンク〜
Altitude Attitude
いけ先生のページ。いかにねこむすめを愛し続けてきたかがびしばし伝わってきます。同人誌が全部ほしいよう。