たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

百合とBL、両方読むのは「ココ」が好きだから。

WEB拍手より。

はじめまして。最近こちらのブログを見始めたばかりものです。たまごまごさんのレヴューは、作品に対する愛情や誠実さが感じられ紹介されている作品のどれもが読みたくなってしまいます。現在は冬コミの原稿中なのでしょうか。お忙しいとは思いますが、頑張って下さい。
 
ところで話は変わりますが、過去の記事を読んでいると、たまごまごさんはエロ漫画、百合、BL等と様々な漫画や小説を読んでおられるようですが、私は百合とBLは読んだことがなくこれらのジャンルに関しては全くの無知でとても未知の世界です。
そこで疑問に思ったのですが、百合とBLはどちらとも同性愛を扱った作品ですがこの2つのジャンルには何かしら共通する部分があるのでしょうか?それとも同じ同性愛ジャンルではあるけれど全く違うのでしょうか?
私の友人には百合好きとBL好きがいるのですが、彼等は百合好きはBLを、BL好きは百合を全く読まないそうです。なので百合もBLも読んでいらっしゃるたまごまごさんの中で、百合とBLの違い(もしくは共通点)があるのならば、是非聞いてみたいです。
 
それでは、これからもブログ応援しています。

褒めすぎです><
とりあえず入稿終わりました。ありがとうございますー。好き勝手やったなあという感想ですが、色々な人にご協力いただきワイワイとした本になってますのでよろしくです。
 
はて、自分は「百合」も「BL」も好きです。といってもBLは専門ってほどではないので、いいのがあったら薦めてもらって読む程度です。好きか嫌いかと言われたら間違いなく好きです。
百合は新規開拓をするほど好物です。むしろ自分で百合妄想して日々過ごすのが楽しいくらいってなもんです。
どうしてもこの二つの共通項や違いって、気になりますよね。どちらもテーマが同性愛ですし。
しかし、わりと根本的なところが大きく違う、というのと、百合の発展状態がBLと異なっているため、ジャンル自体は一概に比較できないのが現状かな?と思います。しかし、それぞれを好きな人の円と円が重なる部分もやっぱりあるんですよね。
ここでは「自分から見た双方の好きなところ」を書いてみたいと思います。あくまでも個人の意見なのであまり役には立たないかもしれませんが、傾向の解釈の一部にはなれば幸いです。
 

●広がりずらい百合市場●

BLも百合…というかGLも、そもそも大きな目で見たらかなーり前からどちらもあります。
しかし単純に数だけで「明確にそれを目的として作られているもの」をカウントすれば、BLの優位は圧倒的です。百合はまだまだ小規模です。
これは、BLがその分勝っている、とかではありません。
まず、現在「百合ジャンル」を意識した作品は拡大中だと思います。数量においてもそうですし、また内容の多様性もそうです。「百合=女学校」だけではない作品もたくさん出始めています。
 
しかしながら、百合は保守的な美学を併せ持っているジャンルでもあります。
温室的な女学校でたおやかな時間をすごす少女達…というイメージはもうすっかり定着していますが、それが「古くさい」のではなく、そこを見つめ憧れる視線が百合の大きな原動力の一つ。
なかばノスタルジー。人によってはその定型自体が好きな人も多いでしょう。自分もやはり「女学校」とか聞いたら「むふー!」ってなります。ナルヨネー。
 
このへんはキャラクターが少女か青年かの違いが大いに関わってきます。
百合を描くことは、恋愛や人間関係など以上に、出てくる少女像をいかに魅力的にするか、というキャラクター性の部分に力を注ぐことが比較的多いです。特に男性向け百合作品はその傾向が強いかな?と。
そうすると、どうしても「一瞬」とか「秘める思い」とか「過ぎ去りし」のようなポエミー(?)な言葉から切り離せません。
ものすごく丁寧に囲った温室で、お互いなかなか近づくことも離れることもできず、守られている少女達。こうなると「男性」という性は不要になるんですよね。入ってくる必要がなくなって、どんどん純化された「少女性の園」が誕生します。
 
このクローズドな百合セカイは、決して古くさいものでもなければ、思考停止的なものでもありません。むしろ、イメージ美学への追求でもあります。
自分はそういうクローズドな百合は、外から観客として眺めるのが好きです。
 

●動き始める「百合」●

今もその閉じた楽園像は発展中です。
同時に「男性の排除」「若さ・幼さの必要性」「女らしさのあり方」という呪縛から開放され、徐々に新しい形の百合像が生まれています。
森島明子先生なんかは積極的に生々しい大人の女性同士の恋愛に挑んでいる作家さんだと思います。

「百合=ガールズ」、である必要はないです。また「百合=学生の一瞬の輝き」、である必要もないです。
また「百合にエロスは不要」という流れも昔からあるのですが、最近は手をつなぐことと同等に女性同士の性関係も描かれるようになりました。このへんは現在進行形で描写技術が開発中なのではないでしょうか。結構増えたようで、まだまだ少ないです。
 
そして、今最も多いのは「女性しか出てこない百合的な作品群」かと思います。
別に最初から百合目的で描いているというわけではないんですが、百合の持つ温室性がいかんなく発揮されているセカイのこと。
きらら系4コマや「らき☆すた」などでは、当然のように男がいません。東方もそうですね。
これは男が排除されている、というよりも、キャラクターの少女達の視野がそこまでしか及んでいないから、とも言えます。
リアルの厳しさを作中に見たい人には「ゆるい」と映るかもしれませんが、まあ疲れている時はそういう「ゆるい」のが見たい時もあるじゃあないですか。そのゆるゆる空間で、魅力的なキャラ達を自由に想像してキャッキャウフフさせる楽しみ、これが今もっとも発展している百合の突端ではないかと思います。
つか、二次創作的な色合い強いですけれども、そのへんの読者と作者の無言のキャッチボールも自分は好きです。
 

●百合の中の男、BLの中の女性●

「百合に男性はタブ−」という掟も少しずつ打ち破られています。いや、もちろん男がいないからこそ完成するふんわり空間も大事だと思いますが、別のベクトルとして、ですね。
しかし、それでも百合に男が出てくると百合ファンはものすごく身構えます。時にそれは「少女達の幸せは一瞬の気の迷いだった、そして彼女は男の元に行くのだった」という楽園の崩壊を意味することがあるからです。
つかそういう現実を目の当たりにしてくると「創作の中でまで突きつけなくていい」という気持ちにもなるってものです。女性ならなおそうでしょうし、男性も女性間の男を巡るトラブルはなるべく関わりたくないでしょうし。
 
ここで「その男を捨ててまで自分のことを愛してくれる女性が私にはいる!」という力強い百合作品が増えると面白いのですが、まだあまりありません。
ぶっちゃけ、それだけリスキーなんです。
 
一方、BLはというと…これがうって変わって正反対な気がします。
BL好きの友人が言っているのを聞いてすごく納得したんですが、「その女を捨ててまで俺のことをあいつは愛してくれる!」と書いたら燃えませんか。自分はそういうBLばかりしか読んでないからかもですが!
言っちゃ悪いですが、当て馬というか、障壁というか。それこそ奥さん持ちの男性が他の男の所になだれ落ちていってしまうその心苦しさ、悩み、葛藤…おお、甘露すぎる。
 
そういう意味ではBLの女性は「いてもいい」度合いが百合より高いと思います。そりゃーもちろん「結局女の所にいったとさー」ってのは「うあー!」ってなりますが、なんでしょう、BLだとその時の悲しさも心地よいんですよ、自分は。残された男と、突き放した男の心のせめぎ合いすら愛おしい。
これが百合だったらショックで寝込むんだけどなあ。
 

●BLの許容度と、動く男達●

BLだって別に昔から優遇されているわけじゃないです。色々苦労に苦労を重ね、開発に開発を重ねてジャンルを広めていきました。
ですから、BLをそこまで深く知らない一読者としては、屯田兵が広げた開拓地の広さにびびるわけですよ。えっ、こんなのもありなの!?こういうことやってもいいの?と。
もちろん「全部で一つ」ではありません。棲み分けが出来ている、ということです。
しかし、棲み分けされるほど種類が多様ってのはすごいもんですよ。だって…自分の好きなジャンルを選べるんだぜ?!うわー、おいしい楽しい。
百合は細く狭く結晶のように純化されている部分と、がばーっと広がる部分がおそらく重なり合わないと思います。BLもそのへんはかみ合わない部分多々あります。しかし裾野が広がっているので許容される場所が出来つつあるのはいいことだと思います。
 
自分にとってのBLのもう一つの魅力は「こういう見方の楽しみ方もあるのか!」というのを教えてもらえること。
そりゃ好んでみるジャンル(自分だと年下攻めとか)でによによするわけですが、あんな楽しみ方、こんな楽しみ方ととにかく多様。とてもバラエティーに富んだ食事が出来る気分なのは魅力の一つです。
 
加えて、それだけバラエティーに富んでいるせいなのか、はたまたBLに出てくる男子達がもろいせいなのか、BLの男はとてもよく動く感覚があります。
百合ってあんまり動かないんですよね。ものすごくおしゃべりして、ものすごく一緒の時間を過ごすんですが、実際に「好き」とかは言葉にあまりしません(するまでが長くてじれったくて…そこがいい!)。
しかしBLの男はとても動きます。めっちゃ悩みます。すげー色々します。もちろん作品によってそれは違うんですが、状況打破のための攻めの姿勢を見せるのは魅力の一つです。
 

●百合とBLの「喧嘩」と「関係性」●

たとえば不穏な状態が二人に流れたとき、比較的ガチ口論するのがBLは熱いです。感情がぐあー!っと高まってぶつかりあうのは作品的も盛り上がるところ。わくわくです。さあ、もっと喧嘩をするんだ!。
これが慣れ過ぎちゃうと、男同士の喧嘩が痴話喧嘩に見えるから困る。
 
はて百合はと言うと、マリみてレイニー止めが有名なように、「お互い言えない」ことが多いです。誤解が誤解を招きどんどんこじれて、引き×引きで時間がめちゃくちゃかかります。
このお互いのこじれていって悩む様と、その後で言葉以上のもので通じ合う瞬間が気持ちよくてねー!

こじれてはいないけど、特に何かするわけでなく、またものすごいハッピーがあるわけでもないのに通じ合う距離感が絶妙なのがコレ。そういう微妙なバランスも楽しみの一つですね。
 
はて、あわせてBLはとにかく「関係性」が面白いと思います。
極端な話、関係性があればキャラそのものが存在しなくてもいいことすらあります。
以前も無機物BLの話をしたときに、こんな話がありました。
 
WEB拍手より。

擬人化BLについて。
私の姉は天井×床が至高であると言います。
二人は平行なのです、どこまで行っても交わることはなく、しかし互いに互いを見つめ合っています。
天井は汚れませんが、床はどんどん埃などによって汚れていきます。
そして天井のない床はありますが、床のない天井は存在し得ない。(間に柱の存在がありますが)
 
ここからは私の考えですが
部屋の外(二人よりも外)から見ると、今度は天井(屋根)が床を守っていると考えることも出来ます。
身近にロマンスは転がってるものですね。

これは面白いですよね。キャラではなく関係性に萌える文化だからこその内容なんですが、こうやって丁寧な言葉にしていただけるとすごくよく分かる。これはぐっときますよ。
関係性があるならば、擬人化の必要すらないのですね。擬人化百合は最近出始めてますが、まだ男性向けジャンルの域なので、ビジュアルありきなあたりはちょっと違うかも。
 

                                                                                                                    • -

 
まだまだ山のようにある百合の魅力とBLの魅力。
どちらもやはり一度はまるとやみつきになるものですが、「全く違うジャンル」であると同時に「同じ裾のの一部の棲み分け」でもあります。
自分はたまたまその百合のおいしいところ、BLのおいしいところをかじりかじりしているだけなんですが、人によっては「BLの関係性が面白いからそちらへ」「百合のじれったさがドキドキするのでそっちへ」と行っていると思います。比較はできなくても、やはりある部分ではかぶるんですよね。
どちらも「関係性」が大事なジャンル。その中でどこでもいいです、好きな部分が見つかったら、とれはとても幸せなことです。
 

                                                                                                                    • -

 
あわせて、「ハッピーエンドをこのむか、バッドエンドを好むか」「ドロドロを好むか、いちゃラブを好むか」の差異で何を選ぶかも色々面白そうな所。これはもうちょい細かく考えてみたいところです。
 

                                                                                                                    • -

 
はて、んじゃなんでそんな安息の地(自分なら百合とか)を見つけたのに、さらに開拓しようとするの?と聞かれると…。
そりゃ「もっと面白い物があったらもったいないから」に決まっておりますがな!
いつも参考にさせていただいておりますが、面白いBL教えてくださいー。百合百合しいものあったら教えてくださいー。
このへんはいつも貪欲に貪欲に。
 
〜関連記事〜
BLや百合の「エロス」が、肉体を刺激するたあ限らない。
「百合的作品」で性的にドキドキする瞬間はありますか?
男が感じるBL「同級生」のほんのりエロティシズム
この百合の花園は、風通しのいい場所ですか、秘密の園ですか。〜クローズドな百合作品と、オープンな百合作品の魅力〜
少女達への変わらない憧憬〜広がり行く今後の百合のカタチ〜
「百合的作品」群から見た少女幻想と、ネバーランド住人たち。
男女が見る百合への視線を、「百合姫」シリーズから考えてみる。
タカハシマコ「タイガーリリー」の、終わらない少女感覚
おっと、無機物擬人化BLは、相当に面白い妄想遊びだぞ。

この本はまじでおすすめ。