たまごまごごはん

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そのままの姿で「性転換」したセカイへ。海野螢「逆まわりの世界」

「性転換」(TS)ネタは昔から幅広く数多くあります。
有名どころだと、「らんま1/2」。あと「かしまし」もそうです。
また、某友人曰く「まじかる☆タルるートくん江戸城本丸が性転換したところがよかった」とのこと。あー、懐かしいです。
「性転換」は「女装」や「ふたなり」とは別です。厳密に言うと「キョン子」みたいな女体化ともちょっと違うと思われます。あー、きっとこのへんは誰か体系的にまとめていると思われるので省略。
ようするに、「明らかに男性・女性」だったキャラが、性別が変わるのを、ここでは「性転換」とします。おれがあいつであいつがおれで なんかは入れ替わりものでしょうか。厳密には性転換ではないです。
 
はて、「らんま」は、男の子が性転換すると「かわいい女の子」になります。見た目は明らかにかわるわけです。「かしまし」は元々かわいい顔の少年だったので、そのままのかわいい女の子になります。
エロマンガやエロゲでも性転換は多くありますが、やはり「かわいく転換したい」ってのは大きなウェイトをしめるものです。
そこで今回は、「ぺたふぇち5」に掲載されている、海野螢先生の「逆まわりの世界」から少し見てみたいと思います。
 

●性転換=見た目は変わらず性器・性別だけが変わる?●

短編エロマンガなんですが、TSの面白い要素はかなり濃縮されてぎっちり詰まっており、エロマンガでしか描けない性の不思議もたたきだされているこの作品。
何が面白いかというと、やはりここ。

男は、男の見た目のまま女性化しているんですよ。主人公はもともと女の子っぽいので違和感なしです。
他のコマだとさらに男くさい外見の女性化が出てきたりしています。そうなってくると「性ってなに?」って話になります。「性器」が違えば性別がかわる、のか?どうかなー?
 
そのへんこの茶髪の少年なんかはそれが顕著で、見ての通りとても無邪気に自分の「女性器」に興味を示しています。心は男性のまま、なんです。
実際に自分に「性転換」が起きたら、そうなるわけですよ(起きないけど)。いきなり美女・美男子になるってほど甘くはありません。でもがっかりするなかれ、性器の感覚は確かに別性だ!…となるとやはり興味はそこに集中して当然です、少なくとも男はね。
あんまりにも美男美女になって、性欲もないかのような性転換に比べてみても、このどうしようもない不安と興味と慣れは、妙にリアルです。

女の子もそのまま、急に男になるので、女の子っぽさを残したままです。あえて髪の毛が長いままなのがニクイですね。一見男装しているように見えますが、ちゃんとおちんちんついております。
 

●性転換が描く、性への純粋な好奇心●


先ほどの女の子が、突然ついた男性器に対して抱く、ごく素朴な疑問。そりゃそうです。
性転換において重要なのはどうしても「おちんちん」になります。
すぐに見えるパーツだから、というのもありますが、特に男性読者にしてみたら「自分からそれが消失するということ」と「女性側(であった人)が自分の感覚を持つ」というダブルの魅力に捕らわれるわけです。そここそが「性転換」の面白さの一つ。
 
実際読んでいただけば分かると思うんですが、この今は男の子になった女の子のおちんちんが、包茎で小さいわけですよ。むけた経験がないのです。
性転換によって「女→男」になったキャラが感じるシチュエーションの魅力の一つは、男性側が経験してきた過去の感覚をたどる軌跡を漫画上で見ることが出来ること。
「幼い頃にはじめて勃起した記憶」
「皮がむけることをしった時の記憶」
「射精の感覚」
このあたりを客観的に見ることで、男子の内奥の感覚を呼び覚ます効果があります。この作品にはないですが、性転換した女の子が自慰をするシーンが入っている作品なんかもありますね。ふたなりではなく。
あとはそれに「セックスをはじめて知ったときの感覚」が加わっていきます。
男の自分(今は女)が、男になった女性をいじくる、という倒錯感が、自分と相手の間を往復して、人間内の快楽を呼び覚ます装置になっていくわけです。
 

●倒錯的な楽しみの世界●

男の子がそのまま女の子になっている、というのも面白いんですが、この作品は女の子がそのままの姿で男の子になっているという点がまた一つ重要です。
感覚の面では先ほど書いたとおりですが、あとは倒錯感がいかに増すかです。

なんだかんだで「心は男の子・女の子のまま」なのが非常に重要です。
心だけが入れ替わる「入れ替わり」ものとの大きな違いの一つでもあります。心を基調とした「性」ではなくて、身体感覚を基調とした「性」です。
実際このシーンを「男装・女装のプレイ」と見ることもできなくはないですが、やはり元女の子側が男の体になっているのがよく見ると分かります。体つきなど。
 
また、漫画は「視点は右から左に動く」ように描かれています。つまり右にあるものが左に能動的に動くように感じられるトリックが文法として埋め込まれています。
この絵でも同様に、右の元少年が、左の元少女を責める形になっています。この後性交シーンでは逆転していくのが面白いところ。つまり、セックスを通じて性の能動性も変化していくのです。
 
髪の毛が長かった少女は、この後ばっさりととある行動に出ます。
「全世界性転換」なんていうとんでもない事が起きたのに、本当になんてことのなかったかのように日々が過ぎていくのがとにかくなんとも心地よい。その中での元少女の行動こそが、大きな決別であり、大きな「性転換」の証にもなっていきます。
 

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性転換エロマンガというと陽気婢先生などが有名ですが、「精神」「身体」「感覚」をどう描くかが作家さんによって大きく違います。
ぶっちゃけ、ジャンルとしては極めて少ないです。ふたなり・入れ替わり・異性装は多いけど「性転換」は死ぬほど少ないです。
かなりしっかりした性転換漫画を読みたい!という人にはかなり宝石のような一作だと思います。TS物としても貴重な作品じゃないでしょうか。



「貧乳○○」「ぺたふぇち」シリーズは、「貧乳はロリのことじゃないんだよ!育っているのに貧乳なのがいいんだよ!!!」という諸兄に大いにオススメ。特に永間ひさし先生や大庭佳文先生や流星ひかる先生、そして貧乳ショートマエストロ海野螢先生などがいるこのシリーズ、なかなか毎回ツボをついてきます。
「ぺたふぇち5」はこの作品の他にもいい作品があっておすすめなのですが、9作品中1本が未完成、1本が再録なので、そこだけ注意!でもその他の作品は太鼓判を押しておすすめします。「シンプルなラインで、ちょっと生々しいえっちを描く作家さん」がめちゃくちゃ好きなんですが、翻田亜流先生や大庭佳文先生はどんぴしゃです。

エロじゃないですが、リアル性転換といえばこの作品。
あとはこの辺の人とかこのへんの人に話題を振ってみます。性転換の体系とか、他のいい作品とか。まだまだ性転換漫画の世界は、深いぜー。