たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

オタクの叫びをオタクじゃないキャラが言うからいいんだな「俺の妹がこんなにかわいいわけがない」

 
もうあっちこっちで話題だらけになっていて、確かに表紙もキャッチーだし、端々に出てくるディープなネタも面白いし…と思いつつも、いかんせん妹ちゃんがむっちゃムカつく。まじでむかつく。
そこがいい。そんな作品。
真の妹萌えさんにはこの妹ちゃんも可愛いんだと思いますが、結構リアルな感じできつい言葉吐いてくるんですよね。普段は全然話もしない、ってあたりが妙に生々しいです。
ただ、その向こう側にある本心もわからんではなくて「しゃーないなー」というのが伝わってくるのが本当に生々しいんだもの。ようは「だからかわいくて好きになる」じゃなくて「兄としてほっておけない」感じがしっかり描かれているのが良くできているんだなあと。
まあ、キャラの好き嫌いは人それぞれなのでそこはおいといて(自分は断然、麻奈美派なので!)2巻を読み終わっての感想。
ああ、やはり叫んでくれる作品は好きだ、と。
 

●価値のあるものとないもの●

オタクの好きな物が、他から見たら価値がない、っつーのは当たり前のことです。
オタクに限らず、どんなジャンルでも他から見たら価値なんて分かりません。どんな芸術品だってその価値は知らない人にはちんぷんかんぷんです。んで、それが悪いことかというと当然悪くない。その高級な芸術品よりも、大好きなアニメが一本あるならそれで幸せじゃない。そんなかんじ。
この作品って1巻も2巻もそんな価値観のすれ違いが大きなポイントになっているんでしょうね。
特にクライマックスになる部分は「誰も悪くない」のがミソ。ようはそれぞれがうまくかみ合わなくて、涙ぼろぼろ流しながら苦しむしかない有様が、特に隠れオタク経験者のハートをぐさりと刺します。
そうなんよね。
どんなに好きで、胸をはっていいと信じていても、言えないことってあるのよ。価値観が違うから。
 

●第三者視点に置き換えて●

真摯に向き合って本気で好きなものを持っている人が、大きな声で「好きなんだ!」って叫ぶのは心を打ちます。そういうのが自分は心の底から好きです。
しかし、この感覚を「オタク」と自覚のある人がどんだけ叫んでも、オタクじゃない人にはあんまり意味はなさないんですよね。ある程度伝わるかもしれないけど、完全ではない。
その熱さをどう伝えるか、というのを変化球にしたのがこの作品。
ようは「オタクって、本当に好きな物があって心燃やして、ニコニコできる、バカだけど幸せなやつらなんだぜ!」というのをオタクじゃない人が言っているわけです。
 
主人公の兄貴は、オタクじゃないです。多少おおげさな描写もありますが、なかなかいい具合に「オタク文化の価値が分からない人」として描写されています。
そんな兄貴が「わかんねーなー」と思いつつも、妹のどっぷりはまりながら、本気で好きでいるその姿に心打たれて、守ろうとする姿にオタクである自分は自分を重ねます。
これって面白いですよね。オタクじゃない立場の人間の言うことに、オタクな自分が心重なるんですもの。
 
妹の桐乃が、本当にオタ文化を好きなことは兄視点から見てすごいびんびん伝わってくるんですよ。ええそりゃもう、価値があるのかないのかわからないでしょう。
しかし「好きなんだ」と言うそのオーラ!好きなものは諦められない、ねじ曲げられない、自分の心に嘘はつけない!それを直に伝えるんではなく一般人な兄経由で見えるのが本当に熱い。うまい。
 
やっぱりね。
色々な角度から、オタク賛歌が聴きたいのです。
オタク文化圏の中でくらいは。
オタク文化が、「キショい」って言われるのはもう分かってるからさ。ファンタジーの中でくらい、確認したいんです。
そして、キショいっていう人もいるかもしれないけど、やっぱり好きだよ!大好きだよ!ってもう一回言いたいわけですよ。
 
いい小説だなー。
単に「オタクは素晴らしい」でとどまるんじゃなくて「卑下する人もいる」「生理的に受け付けない人もいる」「とけない誤解も多い」というのも突きつけているし。
それに「面白ければなんでもいい」というわがままなものではなく、やることをちゃんと努力するからこそ得られる娯楽、として置いているのもいいですね。うんうん。努力して得る漫画本やゲームはとてもいいものだ。
コミカライズがエロマンガのふにふにないい絵を描くいけださくら先生とのことで、楽しみです。