たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

二次元で萌える?三次元でも萌える?「妹萌え」と「愛情」を巡る深淵。

ちょっと面白いWEB拍手があったのでピックアップ。

妹萌えの件ですが、自分は昔から妹には好かれていませんでした。なにかあると兄(長兄)のほうになつき
次兄である自分には大してなつきませんでした。自分もそれを理解していたため、妹の前では素直になれませんでした。しかし兄として妹の支えになろうと努力し、面倒もみようと努力してきました。
あるとき母が「昔はあんたが保育園のお迎えいくと、○○(妹)は大喜びして飛んできたもんだよ」と
言ってきて、ちょっと嬉しかったりしたんですが。
お姉さんが好きで、妹萌えとかありえない。アホだろなどと言ってきた人生だったのですが
むんこ先生と曙はる先生の「妹本」を読んで、妹萌えに対する意見がガラっと変わりました。
 
真の妹萌えとは、妹を女として愛でるのではなく「妹という存在を大切にする」ことなんだと。
以前、父が妹に「父親として最低な言葉」を吐いたときがありました。許せなくなって、父と殴り合いの喧嘩をしました。喧嘩の途中、父は家族を失望させる言葉ばかりを言い、母も妹も泣いていました。
すべてが終わってから「妹にだけは、父のこういう部分を見せたくなかった」と悩んでしまったのですが
後日、母が「○○(妹)は、自分のために体を張ってくれて嬉しかった。と言っていた」と話してくれて
ちょっと泣いてしまいました。
 
二次元の妹萌えとは意味合いが違いますが、三次元の妹萌えも存在するんじゃないかと。
こう例えると語弊があるかもしれませんが、「自分の好きなアニメや漫画をけなされてイラっとくる」
というものの最上級のかたちというか。まだ二次元でいうところの妹萌えは分からないですが
妹本での「妹は守るべきもの」というのは、すごく理解できてとても楽しめました。

妹萌え」というのはもうそりゃはるか昔からあるものですが、よく言われるのは「俺・私、妹いるから妹萌えじゃないんだよな」というセリフ。
それに対して、この意見をちょっと読んでみてください。
「萌え」という言葉の意味はおいておくとして、とても共感できる話じゃないですか。いいお兄ちゃんだなあ。
 
「妹」の語の持つ魔力に多くの男性・女性が惑わされてきました。ひいては「属性」としても扱われるこの立ち位置、語られ尽くしたジャンルではありますが、改めて整理してみたいと思います。
 

●二次元の「妹」という何か●

エロゲーの妹キャラで人生が狂った人は多いのではないでしょうか。
あれとか・・・これとか・・・。
もうちょっとさかのぼると、「くりぃむれもん」とか。
このへんはエロ前提なので、当然「性的な視線」が入っている「妹」キャラです。
そりゃ魅力的なキャラにもなります。だって生まれた時からずっと側にいる、2番目に近い女性ですから(一番は母親)。しかも親子関係と違ってかなり年齢も近いときたもんだ。
 
と、ここで実際に妹がいる人には歯止めがかかります。「それはない」と。
まあ当然です。現実社会のことを考えると、妹を性的な視線で見るということには生理的な嫌悪感がわくように人間は出来ているでしょう。動物の本能として。
じゃあ妹がいる人には「妹萌え」が出来ないのかというと、意外とそうでもありません。
もちろん駄目な人もいるんですが、そもそも人間の思考ってワンテンポおくと「全く別のファンタジー」として物事を記号化してみる力があります。それがいわゆる「属性」と呼ばれるものになっていきます。そもそもそういう切り離しながら想像する力の羽がなければ「ママ萌え」なんて存在しません。実際に「メイドさん」雇って無くても萌えるのも、「メガネ」の奥に人間性を勝手に連想して萌えるのも、切り離す力があるからです。
これは「二次元・三次元」というよりは「自分に関係しているか・いないか」に近い気がします。そもそも現実の女性でも友人の妹がかわいかったらそりゃどっきどきですよ。
ただ、これは「現実を二次元的に見ている」と言い換えた方がいいかもしれません。
 

●「萌え」の暴力●

ただ、ここに生まれてくるのは「相手の人格を無視した属性化」です。
「妹ならなんでもいい」という消費型妹になってくると、アイテムを持ったゲームキャラ扱いみたいなものになってしまいます。「とりあえずメディア持ってるからアプラサラスはとっとこう」みたいな感じです。

極北はこれでしょうか。というかそういう文化を茶化したパロディ作品。妹だらけでエロいのに萌えない、といううまいところをついた作品で、今読んでもオタクの斜め読みが出来て非常に面白いです。「妹ならなんでもいい」という絨毯爆撃です。
 
正直自分も、そういう「絨毯爆撃萌え」はしていると思います。自分の場合は「スパッツはいていれば満足」ってやつですね。むしろ性的嗜好に近いので、そこに人格はありません。(厳密に突き詰めていくとあるんですが、それはこのあと。)
いわゆる「二次元妹萌え」にこの部分があるのは否めません。なんとかかんとかのキャラ、実は妹、となると「わーい!」という気持ちもあるのです。
 
しかし、そこに人格が挟まるときに物語と読者の関係は大きく変化します。
たとえば「妹」好きな人が避けて通れないこの作品。
恋風 1
恋風 1
posted with amazlet at 09.02.06
吉田 基已
講談社
妹萌えの人でこれを読んで身を切られる思いだった人はかなり多いはず。
いやいや、実際「妹との恋愛」というのがテーマになっていくとき、それを属性と割り切るのか、そこにある背徳感に酔うのか、そして罪悪感に責めさいなまれるのかで方向は大きく変わっていきます。

一部の少女漫画・エロ漫画では兄・妹間の恋愛は「タブーだからこそ」という心の葛藤を描く場合があります。楽しみ方としてはむしろ「関係性を楽しむ」という局面にあるので、ちょっと方向は別でしょう。
これも妹を追求した作品。エロですが、エロがあるからこそものすごく強烈な負の力も作用し、物語がダイナミックに動いています。エロ苦手な人にもお勧めしておきます。
 
一方「だがそこがいい」というハッピーエンドを好む人もいます。
一時期は「Aというキャラは実の妹か、義理の妹か」で議論が起きたこともあります。その差は確かに大きく、どちらを好むかは読者の立ち位置になってきます。
そしてあるとき、人は悟りました。
「妹はおしなべて愛するものではないか」と。
 

●トゥルー妹。●

いつのまにか、属性としてのアイテム化した妹から脱し、「そのキャラを愛する」という方向に大きくシフトしたキャラクター達がどんどん作品から出るようになります。
いや、最初からそうであった人はもう、その形で愛していたに違いないでしょう。鍛えられたオタクが増えた、とも言えます。
大きな部分としては、たとえば19人姉妹の「BabyPrincess」があります。
Baby Princess ベイビー・プリンセス
もちろんエロい視線で見るのもありでしょう。見た目の属性から入るのもありでしょう。
しかし、インターネットを通じてリアルタイムに更新される情報は、そのキャラクターたちもまた受け手と同じ時間を過ごし、育っていることを感じさせ続けています。
いつしか「トゥルー家族」の名が広まり、色物でもエロ企画でもない「家族の描写」であることに気づいた時、多くの人はそこに「喜び」「幸せ」「救い」を得ました。
 
家に帰ってきたとき、家族がいる。そして妹がいる。
「萌え」の語が「愛でる」とか「ときめく」に近いなら、この癒しの空間としての妹は「愛情」に近いのです。
 
愛情といっても、親子愛、友愛、恋愛、人類愛と幅広いってなもんですが、親子愛と友愛の間にあるような「兄弟・姉妹愛」はエロスと別の次元のところに確かに存在しています。
おや、気づけば…一周してリアル妹たちへの愛情に似通ってきました。
 

●現実の兄弟・姉妹●

リアルに描かれた人間関係の中での「妹」は、やはり兄から見てとても愛しい存在です。
兄弟ではない、親子でもない、兄と妹(あるいは姉と弟)という異性なんだけど異性じゃない大事な大事な存在です。
それを愛しいと思う「愛」は、確かに存在します。言葉を借りて「萌え」というのもいいんですが、やはり「愛情」に近いんじゃないかなと思います。
時には疎ましいこともあります。時にはいなければいいのにと思うことすらも同性の家族以上に思うこともあるでしょう。
しかし、そんな妹を大切に思う兄の気持ち、存在します。
たとえば、大げさな話ですが自分がもし兄で、妹が結婚することになったら、どんな気持ちになるでしょう。
弟の立場で、姉が家から出て独り立ちするとき、どんな気持ちになるでしょう。
そのときに感じるぽっかり開いただいじな部分が、愛情であることは間違いありません。
 
物語上でその「萌え」だけじゃないものを描く作品はたくさんあります。もう3巻出るらしいですよ、はええ!でもおもしろんだもんなあ悔しいくらい。
これも妹ちゃんが死ぬほどむかつくわけですよ。本当に「恋愛はない」と言い切りたくなるくらいにイライラさせられる妹。時には兄を簡単に乗り越える能力すらあるからぐうの音も出ず、ただひたすらムカつきながら耐えるしかない兄。
なのに、兄は体を張って体当たりで妹を守ります。
なぜ?なぜなの?
…なぜだろうね。「妹」ってそういう存在なんだと思います。
 

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「妹」を見るオタク世界の視線は分離と交差を繰り返しています。
・近い異性というエロティシズム
・近親のタブー
・愛すべき共に歩む存在
それぞれ全く別物に見えますが、これが行ったり来たりして交じり合うから面白いんだな。
本当に愛して大事にしている妹キャラでも、そのエロイラストを見てしまったら「うわあ!」とドキドキするってなもんです。それは駄目なこと?愛情不足?いえいえ、それこそが「二次元」という創作世界の持つ自由度であり幅なのです。
そのキャラをどう愛し、どのように癒されるかは、自分次第。
 

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「近親のタブー」が膨らむと、非常にヤンデレ化しやすくなるのも、妹キャラの特徴。
まあ兄の方も病んでいきますが。
ああ、どこまでもぐるぐるまわる瓶詰めの地獄。
そういうのも面白いから、困っちゃうわね。
ちなみに自分は「お姉さんが年下のぼくちゃんを襲っちゃう」というシチュエーションに激しく興奮する駄目なおのこです。
加えて、妹萌えの大家のYU−SHOWさんの話を聞いていると、本当に愛情をこよなく注いでいて尊敬の念を覚えます。キャラを「愛する」ってそういうことなんだな。
 
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今停止状態になってしまっていますが、滑空先生の寄生虫+妹ものが死ぬほど面白いです。