たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

幼馴染…それは近いから戸惑う存在。ぽっちゃり幼馴染、桜井梨穂子さんに愛をこめて

アマガミ(特典なし)
アマガミ(特典なし)
posted with amazlet at 09.04.04
エンターブレイン (2009-03-19)
売り上げランキング: 22

先生やばいです。
アマガミ」が面白いです。
いや!ギャルゲなんて年に2・3本もやらないくらい、うとい自分ですが、だからこそアマガミはよかった!
だってすげー親切なんですよこのゲーム。ギャルゲ独特の「今自分はどこにいるの?」的な不安さがありません。明確に「これくらいの時期にイベントがある」というのがわかるヘクサマップを採用し、見てないイベントがどれかすら分かるようにしているのは偉大ですね。
会話モードもカンタンで分かりやすくなっているし、女の子と会って起こすイベントも自由気ままに選べます。
失敗したら「朝に戻る」なんてコマンドまである親切設計。なんとユーザーフレンドリーなゲームだろう。自分みたいなギャルゲ初心者向きが最初にやるにはもってこいだと思います。
 
んで、自分はさばさばもじゃもじゃした薫が好きになるだろうなーと思って始めたんですが、ものすごい勢いでぽっちゃり幼馴染、桜井梨穂子にはまってしまいました。
キャラルートも自在に選べるため、途中でストーンと梨穂子にはまって突き進んだ感じです。案の定薫の嫉妬イベントがおきました。す、すまぬ…。
 
この梨穂子がめちゃめちゃよいので、ネタバレを避けつつ彼女の魅力を書いてみようと思います。
幼馴染みなんて使い古されたネタ?いやいや、温故知新。そこをいかに描くかが職人芸なのですよ。
 

●梨穂子は髪型がすごい●

この「アマガミ」というゲーム、とにかくデザインがすごいですよね。
たとえば「仮面優等生」は、まさに仮面の奥から見つめてくるような鋭い眼光を持っています。
加えて、個々の髪の毛のデザインが本当に素晴らしい。
というのも、多くのキャラの髪型が死ぬほど描きづらいんです。
つまり、記号的ではない髪型、ということです。
記号的髪型(例・ツインテールなど)は比較的ファンタジーに近くなりがちです。逆にそれを利用して「ピンク髪ツインテール」でキャラ性を表現するというテクニックもありますが、アマガミではそれらを一切排除しています。
一応主人公の憧れ的な存在のはるか先輩はくるくる巻き毛、年下で一部から姫扱いされる浮いた感じの儚い少女紗江はツインテールで、ここだけ分化されているのも面白いです。主人公から見てどう見えるかがうまく髪型に反映されています。
 
梨穂子や七咲逢の髪型は本当に、描くのが難しいです。ぱっと見ただけではどういう形状か分かりません。
しかし髪の毛というのはそもそも自由に動くモノ。決まった形がなくて当然です。だからこそこのデザインは正しい。
 
さて、中でも難解な髪型の梨穂子です。
実際にデザインを見てもらえば分かるかと思います。
桜井梨穂子 公式設定画
おしゃれなようでいて、意外とぼさぼさしています。
長いようで短いです。
わざとはねているようで、寝癖っぽいです。
とにかく分かりづらい。そして強烈なインパクトも持っていない。
 
これって、「よく見慣れた幼馴染み」を表現していると思うんですよ。
普段からいつもそばにいて当たり前だった子だから、そこまでインパクトはなくて当然。加えて気にしなければ全然気にならない、気にしはじめるとどこまでも気になる、というキャラクター同士の距離感。それがこの髪型そのものなのです。
 

●そばにいて当たり前だった●

「幼馴染みキャラ」はその「ボーダーの低さ」が魅力です。
なんらかのステップを踏まなくても最初から知り合いな上、お互い腹をわるまでもなく知り合いなので楽。いいですな。
しかしだからこそ「恋愛」に至れない、というのが最大の命題であり見せ所でもあります。
実際自分もそんなわけで「まあ幼馴染みはベーシックにいいキャラだろうから後回しでいいや」とか思ったわけですよ。
しかし甘かったですね。梨穂子は幼馴染みのポジションゆえにいつも明るくニコニコして側にいるわけなんですが、主人公は気付いていなくてもプレイヤーは「この子どこかで我慢している」というのがびしびし伝わってくるわけですよ。
でも絶対にそれは言わない。彼女は「あはは」と笑って飯を食うのです。ほんとあからさまなことは何もしません。朝起きて迎えに来たりなんてしません。なんにもしないんです。
その言葉にしない機微に、黙っていられませんよ。目の前の子が!何年も!じっと何も言わずに笑って(飯を食って)いるんですよ!
幼馴染みポジションで甘んじていようとする彼女の心中を見ながら、他の女の子に声なんて…かけられないじゃないか…。
 
後半、もちろん恋愛展開があるわけですが、その引っ張り方が見事でした。自分と彼女の間では何も起きていないようにみえて、周囲のキャラクター達が背中を蹴飛ばすように主人公と梨穂子をくっつけようと画策しはじめるのも、たまらなくウキウキしますって。
お互いがそれぞれどう思っているかに目覚めた時の反応、そして目覚めた後の開き直りっぷり。くっついてからのいちゃいちゃバカップル状態の長いこと長いこと。
徐々にお互いが、もう見慣れた相手を再度見直す。そして自分の今までの感情を確かめなおす。見慣れたお互いの部屋でも意識してしまう。そのむずがゆさときたら。
 

●「なーんだりほちゃんか」●

で、二人の世界に入っちゃうと完全に没頭してしまうんですが(ピンク色に)、妹の美也の反応が面白いんです。
女の子を連れてきたときいて元気満々ノリノリになる美也なんですが、相手が梨穂子と知ったとき「なーんだりほちゃんか」と言うわけです。
これはリアルですね。だって幼馴染みだから、主人公以上に「いて当たり前」の人間なわけです。今までだって連れてきてたじゃん、新しくないなあと。
これを聞いて、かつて連れてきていた意味と、今連れてきている意味のギャップをプレイヤーは感じさせられるわけです。
逆に引き戻すことで感じる、相手への性的なドキドキの意識。
これは赤面せざるを得ません。妹がいるとよりリアルな現実感が得られるというのは、いいなあ。特別じゃないものが特別になるのは、「好き」という感情以外では説明ができないのです。
時間の流れが、この妹の一言に凝縮されていた気がします。
 

●ぽっちゃり●

「ぽっちゃり」と銘打たれていますが、そこまでデブじゃありませんこの子。他のキャラと比べたらまあぽっちゃりかなー、程度です。いや、あのだぼっとした服の下はむっちりだと信じていますが!
しかし、「ぽっちゃり」って語感、もっと大事なことを連想させませんか。
温厚だったり、テンポがゆったりしていたり、自然体だったり。
そう、そこ。だから彼女は「ぽっちゃり」なのです。性格が。
 
あとぽっちゃりというのは「主人公の主観」なのも面白いところ。実は周囲はそんなに意識していなくて、主人公だけが「あいつはいつも何か食べている」と思っているわけですよ。だから「ぽっちゃり」。
「いつも何か食べている」ということは、「いつも彼女を見ている」という証でもあります。
つまり、「ぽっちゃり」だと思って彼女を見ており、時々ひどい悪口も平気で言ってしまう主人公こそが、梨穂子に対して強烈な意識を寄せていたことがじわじわと明らかになっていきます。
梨穂子側は全てそれらを「あはは」と笑ってすませるんですが、その心中やいかに。
「ぽっちゃり」はとても適切で重要なワードなのです。
 

●梨穂子が愛しい●

「幼馴染み」を記号化するのではなく、とことんまで丁寧に描き、微細な心情描写がなされている梨穂子。
かわいいじゃなくて「愛しい」です。
フェティッシュなシーンが多く、びっくり言動が多い主人公さんですが、梨穂子シナリオに関してはあまりありません。むしろ「ごく普通の日常」がとても大切にされています。
きれいに着飾り、有名なところを巡って恋人気分を味わう、なんて派手なことはしません。むしろ二人で一緒に遊んでいた地味な場所を、地味な服装で地味に歩きながら、相手が愛おしいのを噛みしめ合うんですよ。
「恋愛」って地味で生活感あふれるほど、いいよね。
 

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ああもう、梨穂子が愛しくてたまらない。どうすればいいんだ!
次は七咲さんルートにいきたいんですが、ぶっちゃけ梨穂子が愛しすぎて、彼女を見捨てて他の子に行ける勇気がありません(このへんがギャルゲ初心者)。
10年たってもビアンカしか選べないぼくの気持ちを察してください。