たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ねこみみ少女を巡る、男と女のラブソング「いきなり☆ねこキック」

むつきつとむ先生のエロマンガが大好きで、ほぼ全部持っている自分にとって、「いきなり☆ねこキック」は衝撃でした。
一般向けでネコミミ!!
あの独特のテンポ漂う「むつきつとむ空間」がエロじゃない萌えに行くの!?いや確かに今までエロマンガでも少女達は萌え度高かったですが、どちらかというとその体から漂う「女」の匂いがよかったから、ねこみみ…ねこみみ…。
萌え…MOE…

ねこみみ+幼女+スパッツ
YES! むつき先生万歳!
 

●「ネコミミ少女」というシンボル●

はて、完全にスパッツに心奪われて読み始めたわけですが、やはりさすがベテランというか、むつきつとむ空間はエロ無しでも全く変わっていませんでした。
エロマンガむつきつとむ先生の面白さについては別の機会に書こうと思いますので、大まかな概要だけ。
むつきつとむ先生は今まで18禁マークなしのエロマンガを舞台に長く活躍されています。
もちろんエロマンガですからセックスシーンはあるのですが、基本男と女のもやもやした行き場のない感覚を、ある一点を「軸」にしながら描写することが多く、ストーリーの度合いが非常に濃いです。
激しい情熱のこもった恋愛、というほど激しくない。友達以上恋人未満、というほどのんきでもない。
友達以上、セフレ以上、恋人未満くらい。はっきりしない独特の歯ごたえの空間が悶々と続くのですが、これがまた読んでいて面白いんです。それらも何らかの「軸」がなければそのまま永遠に終わらないんじゃないかと思われるほど。
しかし、「軸」があるが故に物語と人間関係はすこーしずつ変わります。たとえば「としうえの魔女たち」だとそれは「体を重ねた女性が自分の母親と同じ歳だった」という軸です。まあ、男女の間の場合、何もなしではいかないよね。
 
「いきなり☆ねこキック」は表紙だけ見ると、一見ネコ娘の萌え萌えマンガに見えますが、さすがむつきつとむ先生というか。
このネコ少女全然人間語しゃべらず、外見が人間になっただけで行動は完全にネコなんですよ。「ご主人様大好きだニャン」とか言いません*1。むしろネコそのままなので無茶苦茶して周囲は大変な目に合います。
極めて純粋な行動のみを取るため、「作品におけるマスコット」であり「気まぐれな周囲の人間の気持ちの反映」でもあります。本質は周囲の人間達の有様です。
 
それでも、ただのネコだったら「軸」にはならなかったんでしょうけどね。
人間型というのはやっかいなもんで。ましてやネコがすりよるそのままの様子を人間型で行えば、男女の間に不思議な感情が渦巻くというもの。

ようするに、ネコミミ少女ちゃろを軸に、男と女の若くも生臭い感情が渦を巻くマンガ、なのです。
この構図が、そのままこの作品らしさになっていると思います。
ちゃろはかわいい、キュートでかわいくて仕方ない!が、この眼鏡っ子と、ぱっとしない少年の心情やいかに。
 

●流される男、惚れ落ちてしまう女●

むつきつとむ先生作品の男女関係はちょっと独特です。
全てではありませんが、だいたいにおいて「流される男」と「それに惚れてしまう女」を描くことが多いです。
とにかく男性キャラがぱっとしなかったり、だらしなかったり、頼りなかったり、なんです。

作品によって人のいいわるいはありますが、「軸」となるものに流されることが本当に多いです。
この作品だと、自由奔放ねこそのまんまのちゃろに、少年優くんが流されっぱなしです。
あれですよ、ネコかわいいでしょう。でもめちゃくちゃするでしょう。まあ小さいから押さえ込めるししつけもカンタンでしょう。
それが人間サイズになったとしたら。そりゃ大変だ。
誰が巻き込まれても大変な事態ではあるんですが、このマンガにおいては優の「いかにも普通で頼りない感じ」を表現するのに一役買っています。
 
ぶっちゃけ「あまり印象に残らない」ように意図的に描かれているような、影の薄い彼。しかし人間って不思議なもんでそういう相手ほど惚れてしまうものです。むつき先生作品はそんな女性達の心の機微を描くのが本当にうまい。

優の姉の由羽。委員長をやっており、先生や母親のフォローもこなすしっかり者。ぽんやりほややんな弟とはえらい違いです。
とはいえ優を見つめる由羽の視線はそんなにのんきなものではありませんでした。いや、ちゃろが来なければ「姉と弟」として平和な日々を送れたでしょう。でもそんな平穏な、終わらない平日は続かないのです。

わかっちゃいるけど、止まらない。
それが、複雑な女心。
 
別に由羽は、だめんず、ではないんですよ。
優の地味さはそりゃあもうすごいんですが、一冊を通して読むときちんと「ああ、こいつは好きになる気持ちがわからなくもない」というのがしっかり描かれています。

ちゃろのみならず、他の男女をも巻き込んで事態はどんどん複雑に。
ツンデレ」とか「シスコン」のような言葉で片付けられない、それは女としての心です。
もどかしくて。イライラして。苦しくて。腹立たしくて。
そして愛しい。
 

●ちゃろかわいいよちゃろ●

こうやって書くと「ちゃろって単なるオマケ?」と思われるかも知れませんので力説しておきます。
ちゃろはかわいいです!ちゃろはかわいいです!
名前の由来は「茶色だから」。精神年齢は人間じゃないので完全に幼いネコレベル。本当に人間の姿をしただけで中身ネコそのまま。だからこそ破壊力抜群。言葉は全く話しません。全部「みゃあ」です。

ネコが犬を散歩するの図。
この散歩シーンが非常にのどかでいいんですが、この子が散歩をしているのも実は単なる好奇心からの物まね、というのがなんともネコらしい。
そして裸足スパッツです。
ぽっくりした膝小僧、それにスパッツはあまりにもよくマッチしているとは思いませんか!これを着せるとは、すばらしいファッションセンスであると言わざるを得ません。
 
また、ちゃろは優にものすごくなついています。優は下心なんて何もなくて、単に動物好きで世話焼きな性格だからなのですが、それがこの子を通じて表現されています。
だから、優なら、優ならばちゃろに愛されていい。仕方ないのだ。

優ぬいぐるみを抱いて至福のちゃろ。かわいい。
この裏表のない感情表現っぷりもステキです。とにかく表情豊か。泣いたり笑ったり怒ったり、好奇心いっぱいだったり。そうそう、ネコといえば好奇心と甘えんぼ、ですよな。
そして裸足スパッツです。
ぷっくりした脚の柔らかさを見事なまでにスパッツが引き立てています。これは見事な計算と彼女の魅力の増幅。スパッツで裸足だから自由にかけまわります。スパッツだからどこまでだって走っていけます。
このスパッツをチョイスした家族はすばらしいのです。
 
弱々しい男と惚れ込んだ女のもやもやを楽しみたい人も。ねこみみスパッツ少女のキュートさに胸を打ち鳴らしながら悶えたい人も、満足の逸品です。
 
あ!由羽も一回だけスパッツです!
 

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ほんと言うと、むつきつとむ先生独自の「女くささ」がライトで無味無臭になるんじゃないかと不安だったのですが、そんなことなくて大満足でした。エロマンガのほうも続けてほしいなあー。というかお姉ちゃんと優のエロシーンがあるならそれでもう(略「としうえの魔女たち」と「ぽちとお嬢さま」はむつきつとむ作品の中でも傑作中の傑作だと思うので非常におすすめしたいです。って、ぽちとお嬢さまは二回廃版になるという目に合っているので、新品の入手は難しいかもですが。
むつき先生流エロマンガの「流される男」「惚れる女」の構図はすごく好きなので、いずれまとめてどこかで。
 
あと、スパッツネコミミといえば「ねこむすめ道草日記」は忘れるわけにはいけませぬ。YES!

*1:それも見たいけどナ!