たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「女の子=ギター」のマンガを、こっそり覗いてみよう。

今、「ギターが女の子に!」と言えばこの「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」が話題だと思います。
そもそも「ギター」という語はドイツ語やフランス語では女性名詞です。
つまり、ギター奏者は女の子を抱いている、というセクシャルな見方もできるわけです。でもだいたいあってますね。
ちなみにチェロは男性名詞なので、チェロ奏者は男性を愛撫していることになります。BL的にはあってますね。
 
閑話休題
そんなわけで、今回はちょっと昔の作品群から、「ギター=女の子」な作品を紹介してみます。
もうそのままストレートに「ギターが女の子」な作品です。シュールでエログロな部分もあるので、収納しておきます。
 
 

●わななくギター●

まず一冊目は森木靖泰先生の「甲猟館」から。

1995年発売、結構古い本です。ちょうど「吸血姫美夕」などの耽美・猟奇ホラーものがはやった時期ですね。
これは甲猟館という不思議な塔に住む住人達を描いた作品です。
まあその住人たちが狂った人間?ばかりで、人の魂をすりつぶして絵の具にする画家や、子供たちの皮をはいで人形を作る道化師、髪の毛を集めるために自動人形を作って女性の頭ごと刈り取ってしまう理髪屋などなど。とにかくばっさばっさと人が死にます。
死んだ後の人間も、皮はランプシェードに、骨はお守りに、内臓は住人のお料理にと無駄がありません。
いやあ、合理的な住人さん達です。
 
その塔の8階に楽器職人さんが住んでいます。
夜な夜な女性を連れ去ってきては、解体し、組み立ててギターを作っています。

発想もすさまじいですがデザインが強烈ですね。
このギターをつまびくと、苦痛にわなないた女性が悲鳴をあげ、曲を奏でる仕組み。
いろいろ楽器を描くマンガはありますが、このサディスティック度はかなり上位に入る気がします。
森木先生がアニメのメカや人形デザインに長けている方なので、そのデザインの淫靡さを存分に味わえる、まさに猟奇的な作品集です。
 

●悦ぶギター●

次に紹介するのが、道満晴明先生の「性本能と水爆戦」より「#」。

「征服」に収録されています。
 

こちらは猟奇趣味な世界ではなく、至って普通の、ちょっとだけ狂った世界のお話。
ここで描かれている世界では楽器はすべて男性か女性の形をしています。女の子が演奏するなら男性型、男の子が演奏するなら女性型なんです。
ちょっとセクシャルなにおいがしますが、「演奏」という行為の艶っぽさを考えると、これがなかなかマッチしています。
そう、女性を抱くように、やさしく、繊細に・・・。
とはいえ、楽器って「いったん飽きるとしまい込んでしまう」のもまた世の常。彼もそんな人間の一人でした。

あー、あるある。10年間弦張りっぱなしでさびてたりね。
 
道満晴明先生は「人間と、人間ではないものとの関係」を性を通じて描きます。
「#」ではギターである女の子と青年のささやかなつながりを描くのですが、そこに恋愛の情はありません。だって、楽器なんだもの。見た目は女の子だけど、女の子という意識はありません。
あくまでも最初から最後まで「楽器」として女の子が扱われているのが面白いんです。人間に向けるような感情を、ここでは向けません。だからこそ純粋に「楽器」のエロティックさを見ることができます。

いろいろむげにも扱われ、大事にはされない彼女ですが、抱かれて演奏されているときは確かに美しい音色で悦びの歌声を上げるのです。
エロティックながらも、ギター好きならぐっとくるシーンだと思います。そう、ギターは恋人。女性を抱くように、やさしく、繊細に・・・。
 
まあ、オチも「楽器=恋人」をリアルに描いたような道満晴明流なシビアなオチなのですが。
 

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楽器を女の子で描く、というのは色物なネタなのでそんなにたくさんはありませんが、やはり「女性を抱くように奏でる」という思想は昔からあるもの。ギターを泣かせることは、女の子を鳴かせること、なんていう人も。
まあ性差別発言なわけでなく、ここは「粋」なくらいで楽しんでおきましょう。
 

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豆知識ですが、楽器はそれぞれ女性名詞・男性名詞が異なります。
イタリアで、ソロ演奏をする際に、男性名詞の楽器は「ソロ(solo)」と表記しますが、女性名詞の楽器は「sola」と言わないといけないんだそうな。
ちなみにベースやコントラバスは男性名詞、トランペットは女性名詞、ヴァイオリンは国によって男性だったり女性だったりします。ピアノは中性とかなんとか。
いろいろ面倒ですなあ。まあ、理屈じゃない世界なので覚えるしかないのですが、それぞれの楽器の性別を考えてみるとちょっと楽しいものです。