たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ふおんコネクト」は、頭を柔軟にして、論理的に楽しめる4コママンガだぞ。

ざら先生の「ふぉんコネクト」の3巻がでました。
この4コマ、自分は読むのにすごい時間がかかるのですよ。いい意味でものすごい濃度なんです。
というのも、4コマギャグの合間にものすごくテクニカルなネタがいくつもしこんであり、それらがさりげなくつながって一本の線になる形態を取っているため、読んでじっくり理解しないと面白さの大事な部分を取り損ねてしまうから。逆に言えばじっくり読んで脳みそを働かせるほどに、じわじわ面白くなるからこのマンガはすごいんだなあ。
4コマで脳みそ使いたくないよ!と言う人もいるかもしれませんが、笑いながら脳にがんがん刺激を送れるのなら、それもまた一興です。
 

●策士ふぉん。●

主人公は、頭に○の二つ付いたちっちゃな高校生、境ふおん。
いわゆる破天荒暴走系のキャラなんですが、普通のキャラとちょっと違うのは「策を巡らせて暴走する」ところ。
もう主人公の設定からして、このマンガは「テクニック満載ですよ」というのが前面に押し出されているわけです。
たとえば、連載時も話題になったこのシーン。

新聞部存続のために、面白そうだからと首を突っ込んでくるふぉん。当然新聞部が好きとかそういうわけじゃないです。常に「面白そうなことには首を突っ込む」だけです。
ところがこの突っ込み方が半端ないわけですよ。この一コマはマスコミのもう一つの可能性をかなり真っ黒な感じで書きだした物。
ここでは「報道しないことによって情報操作ができる」というのを例にあげています。高らかに声をあげるのではなく、語らないことで伝わるものを、作り出すことが出来るというのはなんとも恐ろしい話ですが…これ実際使えるんじゃないの?

仮想敵をつくったイメージアップ戦略。
ふぉんの行動は時々めちゃくちゃですが、ほとんどの場合それが成立するからすさまじい。
まさに策士ヒロインの誕生であります。
 
マンガはそれを追っていく回が多いため、作品そのものが「仮説」「証明」「実験」で成り立っているんですよね。
「こういう事件があった。」「ならばこうすればこうなる。」「それをこうねじ曲げたらどうなる?」
論理性が求められるため、ちょっとした推理ゲームになっています。
もう一人、ふおんの行動を止める常識人で完璧主義者の天才、三日科交流もこれまた策士。

これは姉の夕先生のミスを、別の手段を用いて埋めあわせた上に夕が感謝されるよう策を巡らせているところ。ぶっちゃけ、交流がいればだいたいのことはけりがつきます。そのつけかたが、金の力などではなく彼女の技術力によるものなのが面白いのなんの。
 
何か一つ事件があると、交流がすばやい行動力と独自の「完璧の美学」を使って収め込みます。ふおんもまた自分流レトリックで対抗してくるので…その頭脳戦が痛快なわけですよ。
まあ頭脳戦って言っても4コママンガです、そこまでややこしいものではないですが、推理トリックにも近い、…いやどちらかというと「違う角度で見たらそれは使えるかもしれない」というかゆいところを突いてくるから面白いんだなー。だから、それを理解するのために「あれ?」と読み返すこともしばしば。分かったときのすっきり感がまたたまりません。
一つ一つの話にいろいろな、破天荒な物から生々しい物まで仕掛けが仕込んであるから…読むのにはすごい脳みそを使うんですが、よくまあこれを毎回描けるなあとひたすらに感心することしきりです。
 

●閉じない世界●

この作品はきらら掲載で、いわゆる「萌え4コマ」のくくりに入る作品だと思います。
「だと思います」というのは、萌え4コマって言葉自体曖昧なものだから。確かにかわいい女の子達がいっぱい出てきてわいわいやっているのは「萌え」るのですが、どうもこの作品の根幹はそこじゃないんじゃないかなあ?と。
先ほども述べたように、まず話のテクニックを楽しむのがメインであるのがその要因です。
当然4コマなので、その4コマでネタは完結していますし、一回分15本でさらに完結していくわけですが、「AであるからB、BであるからC、よってAであるからC」みたいな1回分そのものがネタになっていることも多いです。そこに、最後にオチ的な、あるいはちょっとほんわかいい話が4コマが添えられるという構成は、うまい。
 
で、もう一つこの作品の特徴をあげるとしたら、常に外側に外側にキャラクターが向かっていくことなんじゃないかなと思います。
内側に内側に、限られたキャラの魅力をぎっちり濃厚に詰め込む作品もすごく面白いんですが、ふおんをはじめ、交流といい、夕先生といい、どんどん新しい物に飛び込んでいきます。新しい物に飛び込むのだから、当然新しいキャラ、新しい環境、新しい場所がガンガン出てきます。
たとえばこれ。

ふおんをはじめとする周辺キャラは、みんないい人ばかりなのですが…学校規模で見た場合、そりゃー性格に難あり、漫画のキャラとしてはきっつい子もいっぱいいるわけです。
ふおんは、八艘飛びをするヨシツネのようなキャラ。とにかく新しい所や見落としている視点をばっさばっさと切って飛び回ります。だから外部の物か内側かなんて問題じゃないんですよね。
それが快感でもあり、同時にこの作品がどえらい幅の視野を持っている要因にもなってきます。どえらい幅だからこそ、これまた読んで整理するのにいい意味で時間がかかります。
ようは、大量に入ってくる情報を、読者が脳内できちんと整理していく必要があるんですよね。その整理するための手引きがいろいろな所にちりばめられており、整理して「分かった!」となった時の心地よさも、このマンガの面白さの一つなんだなあ。
ほんと、読み終わった後笑いながら、すっごい脳みそ動かした感じになります。心地よい疲れ−。
女の子かわいいしな!
 

●もっと柔軟に。●

3巻で面白かったのは、先ほどの新聞部の回と、この回。

テーブルトークRPGで英語の補習をやってしまおうという。その発想は普通ないわ。
上にいるちっちゃこいのが夕先生という、ダメダメながらも憎めないちびっこ風(ちっちゃいだけ)教師。「ちょいダメ女教師」好き必見。自分とか。
「これはないわ」というのをふおんと夕はがんがんやっていくわけですよ。で、「これはない」を「これもあり」にしてしまうのがすっごい気持ちいいんだな!
 
そもそもマンガなんだから「出来ないことはない」わけですが、この作品はその「無茶」に必ず理由付けがあります。
理由があるからこうなる。こうするために理由を考える。
そんな頭の柔軟性が問われるため、読み終わった後に、見慣れた生活を変えてみる刺激が得られます。
 
この作品を象徴しているのはこのカットじゃないかと。

ふおんが「出来ないことを出来るようにする方法」を軽快華麗に、時に迷惑に切り抜けていく様が、「ふおんコネクト!」というマンガそのものの面白さじゃないかと思うのです。
 

                                                                                                                                            • -

 
まあ、三巻で一番驚いたのはこれだけどね!

そうきたか!
ざら先生、…「ふおんさん」の続きが見たいです。
 

ドラマCD ふおんコネクト!
イメージ・アルバム 斎藤千和 小林ゆう 名塚佳織 今野宏美
フロンティアワークス (2008-05-23)
売り上げランキング: 3357
ちょっとした「脳トレ」感覚で楽しめる4コママンガ、という感じ。
それを差し引いてもふおんと夕先生のめちゃくちゃっぷりや、通果の百合っぷり、交流の家庭環境の物語など、面白さ満載だと思います。
アニメ化、しないのかなー…ネタの濃度やちりばめられたオタネタの濃さからしても、シャフトとかで是非…ないのかなー。