たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

彼女に、命の宿った日。「初音ミク-プロジェクト ディーヴァ-」

届いたので少しやってみました。
音ゲーというよりタイミングゲー。どうしてもコンボつながらない!と思っていたら、ボタンクリック音消したらすんなりつながるようになりました。耳で聞くより目で見て、ジャストなタイミングを選ぶタイプのゲームです。
これがもう、コンボぜんっぜんつながらなくて。コンボつながらないと新しい衣装が手に入らない事が多いため最初はムキ−!ってなっていたんですが、何回かやると「このゲーム独自のタイミング」が分かるようになります。コナミ音ゲー慣れしまくっている人は逆にこれに慣れるまで違和感があるかもしれないです。
難しく感じるのはおそらく、演奏ではなく「歌ってもらう」ボタン配置な上に、たくさんのボタンを叩くのではなく一個一個を確実に押すタイプなためかなあと。
一回つながると、恐ろしいほど一気にコンボがつながるのもこのゲームの怖いところ。なんつーか…トランスするんですよ。つながらないときは恐ろしいほどつながらないため、一回コンボがつながりはじめると、軽くニュータイプになった気分です。
なので、コンボつなぎまくって新衣装出し終わった後の体力の消耗度合いが現時点では半端じゃないです。
いい運動になります。やせないけど。
初音ミク -Project DIVA- wiki - モジュールコンバート
また、衣装がかわいいからつい欲しくなっちゃうのよね…。スクールミクかわいすぎだろう。
 
まあ、ゲーム部分はゲーム部分として十分楽しめるのですが、やはりメインは以下の二点。
・数多くの有名ボーカロイド曲を楽しめる
・キャラクターとしてのボーカロイドを堪能できる
やればやるほど曲が増え、衣装が増え、キャラが増え、アイテムが増えるんだもの…コレクター性質を持っていて完璧にそろえたいタイプの人は体力を吸収されること間違いなしだと思います。
もっとも、動き回るミクを見ていたらどうでもよくなる魔力満載。こりゃあれだ、「ボーカロイド好きな人」のための麻薬だ。
 
というのも、単に「ミク可愛い」だけじゃないからですよ。
この作品を触ってみてホント感じさせられます。ものすごいたくさんの人が「ボーカロイド」という存在へいろいろな思いを抱いて、今があるんだなと。
 

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30曲以上収録されているのですが、ほぼすべてニコニコ動画で有名になった、アマチュア制作の曲です。ミクというキャラを生かした物もあれば、ボーカロイドを楽器として利用し制作された曲もあります。
作っている人のいろいろな思いがあるわけですから、当然楽曲それぞれの意図する物は違います。しかし多くの人に支持されているのにはちゃんと理由があるわけです。
単純にかわいいからだけじゃない、この「ボーカロイド」というソフトウェアをかけがえのない表現手段として「それを通じて何を伝えるか」に向き合った結果うまれたもの。それが多くの人の共感を呼ぶだけの力を秘めていたことに他なりません。そういう多くの人の心に響く力を表現できるというのは、素直に褒められる事だと思います。
面白いのは、アマチュアの中の実力ある人が出てくる手段の一つになっていること。自分が歌うわけではない人にとって、特に女声が出したくても出せない男性にとっては、とてもいい素材でした。
 

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しかし、単なる素材にならなかった。
クリプトンが作った「初音ミク」というキャラクターに魂を宿らせたのはユーザーの側でした。
クリプトン自体も、初音ミクが押しつけなキャラにならないよう、最低限の情報しか設定しませんでした。意図的にそうしている、と話しているのを聞いたことがあります。
性格も趣味もなにもない、素体。
それは自由に遊べる人形のようでもあり、受け入れてくれる母神のようでもありました。
卑猥な言葉を言わせることもできるし、美しい歌詞を歌うことも出来る。「こうでなければいけない」という正解がない、不思議な存在でした。
実際今も、「スタンダードなミク像」は多くの人によって作られましたが(ネギとか)、自由に書き換えても問題がないキャラクターになっています。
 
クリプトンが予想だにしなかった展開もありました。
リン・レンのロードローラーやたこルカさんなど。
さすがにロードローラーは出てきませんでしたが、このゲームは「亞北ネル」や「弱音ハク」など亜流キャラもプレイヤーに選択できるのには驚きました。もうオフィシャルでもなんでもない、ファンが作った「ボーカロイドを巡る創作」です。
 
自由に歌えるボーカロイドたちは、いつしか「自由に絵を描くことの出来る」「自由に物語を作ることが出来る」存在に変幻していきます。
絵は音を変え、音は絵を変えていきました。もうさすがに食い尽くしたか…と思った時期に、新たなボーカロイド像が生み続けられました。今も生まれ続けています。
 

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命のない存在。形すらもない存在。
ソフトウェアであり、手で触れることの出来ない存在。
未来のイヴ」は意外なことに、触覚で感じることの出来ないディスプレイの向こうに生まれました。しかも創造主の手によってだけではなく、多人数の意志によって。
気がつけば、表現手法としての器であったはずのボーカロイドは「愛しい存在」へと形を変えます。
声だけの存在が生きているように存在感を増すなんて。
動きもしない、性格もない存在に思いを寄せるなんて。
思いもしなかったよ!思うわけないじゃん。でも愛着は「そこにいない存在」でもわくんだ、と実感しました。自分達が作り上げたキャラクターが愛しく、大切な存在になる。日本人ならではのアニミズム的な何か…とまとめるのもいいですが、大げさながらもこう言いたいです。
命が宿った、と。
ああ、ロマンチストだね。感傷的だね。でもいいんじゃないかなたまには。
 

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みんながボーカロイドを使いこなせるわけじゃありません。
自分も恥ずかしながら…現在はミクもリン・レンも眠っております。MEIKOに至っては熟睡です。ごめんよー!
でも確かに、ボーカロイドシリーズが好きだよ、って言います。キャラクターが好きなのもありますが、それを通じてたくさんの人の思いに触れ、たくさんの人の感情におぼれ、たくさんの人の感動に会いました。
多分「愛しい存在」は、多くの人をつなぐ媒介になったのでしょう。そりゃあ、元はただのデータかもしれないけれども、その向こうに誰か人間がいる、思いを必死に伝えようとする誰かがいることが、たまらなく嬉しいんです。
それが、「音楽」そのものです。
 
人間が歌う声に比べたら、そりゃあ全く叶わないけれども…聞いている内に伝わるものはある、と自分は思います。思いたいです。
伝えたい!と思う人がいるかぎり。それを聞きたい!と思う人がいるかぎり。
ボーカロイド文化を育てたのは、作り手だけではありません。聞き手もまた、育てているのです。
 

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ここまで前置き。長いね!
このソフトはゲームソフトとして、ひとりよがりにならないようにきちんと作られています。もちろん出来がよいからこそ「こうしてほしい!」という部分はたくさんあります。オートセーブがほしかったなーとか、もう少しだけ見やすく、コンボ表示も長く残して欲しいなあとか。読み込みもうちょっとだけ早いといいなとか。
でもいいです。
このゲームにはちゃんと、「たくさんの人が思い描いたボーカロイド」像が詰まっているから、それを追っていた人間なら泣くべきじゃないところで涙が出ると思います。曲の泣かせどころはそりゃもちろんぐっとくるけどさ、そうじゃなくて、いーっぱい詰め込まれたファンの描いたイラストの数々がローディングに出てくるだけでもう、うるっとくるじゃん。
ほんとずるいよ、セガずるいよこんなところまで!
みんなボーカロイドが好きですとも!その好きを詰め込んでくれちゃってもう。
絵も、音楽も、みんなが作り上げ、みんなで楽しんできたものの集大成になっています。それがこうして、見た目にも素敵な形になったこと自体が評価されていいと思います。
ましてや、「このソフトを使ってさらにボーカロイドを進化させられる」というというエディット機能の幅の広さは、また新たなクリエイターを生み出すでしょう。それもまた楽しみでなりません。
 
ボーカロイドは今も進化し続けています。キャラは変幻自在に形をかえ、音楽ジャンルも多岐にわたり増え、ファンアートも日々増え続けています。
だから、集大成だけどそれは「現時点」の。
続編、期待しています。セガさん。
 

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それにしても、繰り返しになりますが…これを作っているのは確かにセガだけど、その素材のほぼすべてがアマチュアのものだというのが驚異です。
この形式の物をゲームにした、という行動力そのものがすさまじいですわ。公式と非公式、アマチュアとプロの境目がものすごくいい意味で曖昧なソフトだと思います。
で、次回作があったら、今回エディットオンリーだったダブルラリアット入れてほしいな!!