たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「別冊少年マガジン」の取り組みは、漫画雑誌を変えるのか?

なんか宣伝戦略が少ないせいなのか、思ったよりあんまり話題になってない感じがする別冊少年マガジンなのですが。(いや、すごい売れまくっているみたいですが、もっと大騒ぎになるかと思っていたので…。)
 
なんかさ。
悔しいほど面白いじゃないか。
 
特に雷句先生。
表紙のどうぶつの国がこの雑誌の看板作品ですが、最初絵見た時子供だましっぽくてなんやねんとか思ったのですよ。正直。ガッシュみたいに好きなキャラから入ろうとしてもなんじゃろこの生き物?と。
ところがですよ。
第一話からフルスロットル。感情をモロにぶつけてきてこっちを押し流す勢いの雷句節炸裂しまくり。
くそう、くそう、面白いじゃないか!(泣きながら
ものすごくマンガが好きで、マンガが人間を変えると信じている人のマンガだと思う。
 
にしても雷句先生。
復帰直後、いきなり5誌掲載244ページは単純に凄まじいと思います。
 

●アンケートはがき無し(記事修正)●

この雑誌の取り組み、ある意味とんでもないことしていると思います。
「アンケートをとらない」。少年誌ではずいぶんと思い切った手段に出たなあと。
 
追記・アンケートに該当するものはケータイからの応募のみ、が正解ですね。
別冊少年マガジンの読者アンケートの形態がユニークでした - さよならストレンジャー・ザン・パラダイス
実際にやってみたのですが、質問内容は「面白かった作品3つ」「一番面白かった作品」「単行本で読みたい作品」「作品の感想(2つまで)」でした。「つまらなかったもの」の選択肢は無いです。「単行本で読みたい作品」がポイントなのではないかと。
 
この雑誌、「アンケート至上主義」ではないのだろうなと考えてます。それは、それぞれの第一話が「ムリしていない」から。(あとアンケートの形式と内容)
「一話が面白い」作品が大事なのは当然なんですが、アンケート気にしすぎて一話に詰め込みすぎて破綻するよりも、ちゃんと「次の号を楽しみにしてね」「本一冊になって作品としてみるようにがんばるぜ!」という気概がそのまま生かされている感じです。
なので他の雑誌の「第一話」にくらべると、ボリュームが多い上にまだ見えない部分があって「おや?」となるんですが、だからこそ「次も見ておこう…」と感じさせられる作りに、雑誌全体がなっている気がします。はいベタ褒め
 
アンケート第一主義が個人的に苦手なのです。「正しい」「間違っている」ではなくて、単純に「苦手」。
単行本で面白いのに、売れてるのに、打ち切りとかもういやなんだ!
だから、詳しい業界事情とかさっぱりわかりませんが、単純に応援したくなるのですよ。
願わくば、アンケートに左右されず「単行本は必ず出してから作品の如何を考える」形態であってほしいものです。
 
もっとも、この雑誌の如何によっては、「やっぱりアンケート大事だね」となるかもしれないのも興味深いところです。
ケータイのみってことは、ケータイない人は応募できない?=小学生などの少年層はアンケートが出せない?
このへん気になりますね。この後にも書きますが、わざとのような気がしてなりませんが。
 

●広告無し●

この本、広告ありません。
そのかわりに掲載作品の宣伝が載っているというのはすごくいい!
 
いやあ。だって、見たいのは広告じゃなくてマンガだもの。
単行本の後書きを見るのが好きな人にしてみたら、毎月それが楽しめるのはおいしいんじゃないかと。「しっぽまであんこが入っている漫画雑誌」というのはいいコンセプトです。
気になるのは「それで経営出来るのか?」ですが、もし難しいようだったら今後広告がはいるでしょうし、出来るようでしたら広告無しを貫くでしょう。どう進むのかものすごく気になります。
とにかく全て漫画。「漫画」のために作った雑誌、という感触が壮絶です。
 
あとはそれぞれの作品が面白いか否か。
雑誌の大きなコンセプトは「冒険」「ファンタジー」「少年漫画」。
ただ、読者層が少年狙いかどうかはちょっと分かりません。
どちらかというと、「少年漫画が好きな大人」向けのにおいがします。まあ、一冊ではなんとも言い切れませんが。
 

●作品それぞれの雑感●

ちょっといくつか気になった作品の感想をメモしておきます。
 
じょしらく久米田康治・ヤス
久米田先生×ヤス先生ってなんじゃこりゃと思いきや、ヤス先生のかわいい絵で久米田先生の毒がそのまま出てくるというとんでもない怪作に。
やってることは「絶望先生」と同じなんですが、絵が変わるとこうも印象が変わるものか…。いや、絶望先生のキャラはものすごい可愛いと思いますが、こちらは「女の子かわいい>ネタ」と割り切って、お互いのいいところを打ち消さないように、設定とか丸投げで乗り切っているのがとんでもない。なんで落語の楽屋が舞台なのか分からないですが、今まで何十話もやってきたかのように自然に始まるんだものなあ。
この化学反応が吉と出るか凶と出るかはわからないですが、どちらのファン層にも受ける野は間違いないと思うです。

そもそもヤス先生の作品が元々、かわいいのに毒っけ強いのが魅力だったし、自分はすごくいい組み合わせだと思ってたりします。
にしても初回から飛ばすなあ・・・あ、危ないネタが・・・。
 
惡の華」 押見修造
なにこれエロい、と思ったら「ユウタイノヴァ」の人だった。どおりで!

長門や「謎の彼女X」とは違うタイプの無口不思議ちゃんメインな話なので、そりゃあもう惹かれるのですが、体操服つい盗んで「惡の華だ」と言ってしまう青臭さに悶絶。
体操服盗難事件>>越えられない壁>>人生。一大事なのがよーく伝わりました。
ボーイミーツガールが「未知との遭遇」なのをかなり変化球で投げてきたなあという印象ですが、大人視点だとそここそが心地よいので期待大。
 
「蓬莱ガールズ」 山田瑯
スパッツ!!!!!スパッツですか!!!(いいえズボンです(でもスパッツだと信じてる))
最初髪の毛ロングの娘×2で画面がもやーっとした印象でしたが、髪を切って一気に画面が開けました。ああ、第一話としての役割はこのコマにあったのか、と「閉じ込められたセカイ」との対比がすごく爽快。静と動、圧迫感と疾走感の対比が画面全体から出ているのがすっごく気持ちいい。冒険するぞ!という意欲に満ちているのが楽しいです。
とりあえず父さんの意図と、実際の世界で何が起きているかが分からない現時点では、ヒロインと同様「何が見えるかさっぱり分からない」状態のままなんですが、そここそが一番ドキドキする瞬間でもあるので、次が楽しみ。重い話になるのかな?と思いきや題名が『あー、びっくりした』と軽いので、軽快に女の子二人が走り回る話になると自分はうれしいな! 女の子を縫いたいな! てへぺろ
そういえば第一話はチャイナな世界観の服装ですが、見開き扉絵は現代ガールズ風。何か大きく変わるのかしら。ってか二話からいきなり現代社会だったらちびる。あのお父さん支配の死体の世界が何なのかが、一番引っかかるんだあなあ。
 
そんな未来はウソである」 桜場コハル
一回読んでなんだかわからず。
二回目読んでやっぱりなんだかわからなかった。
というのは、面白くないと言う意味ではなくて、叙述トリック(?)合戦なので、「なんだかわからない」を楽しむのが正解なんじゃないかなあーと思いながら読んでいたから。こじれた糸をそのまま遠くから眺めているのをニヤニヤ眺めるタイプの作品です。ややこしいですが、とりあえずこの二人が腹の探り合いをしながらラブイチャ状態になる同人誌が出る所までは妄想余裕です。
 
進撃の巨人」諌山創
これもまた感情をたたきつけるような絵柄とタッチが強烈な作品。
感情が激しくなる部分は絵も激しくなっていく状態は個人的に好きです。紙の向こうから「この作家さん泣きながら描いてるんじゃないか」という漫画力というか。ああ、こういうの言葉にするとしょぼくなっちゃいますね。かといって一コマ切り取っても伝わらない。
もっともっともっと激しく何もかもを奪って、絶望させて、そこから反撃に出て、またつぶされて…という、おーらふざけんじゃねえよタチムカウ的な展開を期待したいのですが、どうなるのかまだ読めず。ただ、たぎるものは確実にある作品だと思いました。
ただ、煽り文の「漫画読みに問う この才能は本物か!!?」には「?」が。「少年向け」の雑誌で出る煽り文ではないってこと、ですよね。
 
超人学園 混沌魍魎青春事変」 石沢庸介
ものすごい現代少年雑誌風なPOPな絵柄と、黒ベタと余白のバランスが目に焼き付く作品。ストーリーの丁寧さよりも、アクションの面白さや無茶苦茶な展開を楽しむタイプの作品なので、画面の破天荒な作りがどう変化を遂げていくかが一番楽しみ。第一話も出会い編になっていて、「超・主人公体質人間」の解説がまだ終わっていないの感があるので、今後それがオスカのめちゃくちゃさと相まって、想像を超えた設定になっていってほしいと願うばかり。
超人達の面々…という「これから出るよ!出るよ!」と煽るコマは、何歳になってもドキドキしますねえ…。
 
「バニラスパイダー」阿部洋一
えらい特殊な絵柄で、少年誌らしくないなあ…と思っていたら「まこら」の人ですか!なるほど、この絵と内容はこの人にしか描けない。ただ、この作品の存在感が強烈すぎて、この雑誌が「少年誌」に見えなくなっています。きっとわざとだと思います。
多分別マガは「少年誌に似た大人向けの何か」を作ろうとしているのではないかしら。
耳が取れるシーンや、寄生していた生物の造型など、違和感違和感の連続。「ありえないモノで斬れるってのがいいんじゃないの」というセリフがこの作品そのもののように感じました。
 

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だいたい600ページ未満くらいの厚みですが、一本一本が初回ということでえらい長いので、一冊読み終わった後の「読んだああああ!」という感覚が凄まじいです。えらい満腹感。
しかも比較的感情的な作品が多いので、読後の疲労感が半端ないです。心地よいです。
詳しい業界事情とかはわかりませんが、コンセプトといい作品群といい、何かを企んでいるのは感じます。漫画で、漫画に、何かを突き立てようとする意志は感じます。
そういう熱い思いを感じるものは、好き。
少しでも何か変える挑戦、一読者としてしかと見守らせてもらいます。
 
コミックナタリー - 別冊少年マガジン会見で、ムツゴロウが猛獣・雷句を手玉に
イベントがカオスすぎなんですが、それよりも。

「本体である週刊少年マガジンをも潰してやるくらいの勢いで、これからも雑誌を作っていきたい」と、どこまで本気か計りかねる野望を語った。

おおおう。なんと反応すればいいのやら!