たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「盛るP」のスーパー変拍子ミクトロニカワールド

今こんな企画が起きています。
『恋は戦争』野良REMIXコンピ企画:『恋は洗脳』概要記事 重箱の隅

「恋は洗脳」と題されたこの企画、「恋は戦争」のリミックスをみんなで応募しよう!という趣旨で、現在めきめきと「恋は戦争」のすさまじいリミックスが応募されまくっています。
詳しくはこちらも。
恋は洗脳 ニコニココミュニティ
 
面白いので色々聞いてみるといいと思いますが、その中でも異彩を放ちすぎなのが、盛るPのこの作品。

もう原型をとどめないですね。
ここまで破壊できるリミックスが素晴らしいとしか言いようがないのですが、聞いていてやたら喉に引っかかる感じが強烈なのは、この作者「盛るP」、別名「園山モル」さんの変拍子テクニックのせいです。
 
ニューウェーブミュージックを強く意識したこの作者。一番有名なのは多分「ハイセンス・ナンセンス」。

一度見たら一生忘れられなさそうな、ミクっぽいなにかの変な踊りと、かわいい女の子。
POLYSICSのようなテンションの高さとテクニカルな曲作りが非常に印象的。しかも題名の通りとことんナンセンスです。
躁状態に意味なんていらない。
ちなみにこの黒髪ハイネックの少女は「傲音みく」と呼ばれており、熱烈なファンが多いです。
「傲音みく」のイラスト一覧 [pixiv]
傲音みくとは (オゴリネミクとは) - ニコニコ大百科

特徴:極端に外連味の強い、またはキワモノ動画作品に稀に住み着く。

いつも憂鬱な顔で、くまが出来ているのが特徴。アンニュイなムードがかわいい。
 
もっとも、盛るPの曲のすごさは、キワモノなだけではありません。
エレクトロニカブレイクコアの匂いももちながら、とにかく枠にとらわれないようにリズムと音のタガのネジを丁寧にゆるめようとしています。
歌詞が脳内の躁鬱を反映しているため、さらにその混沌さは加速。

盛るPの傑作の一つ。
傲音みくの憂鬱な顔と白黒のコントラストがエロティックな上に、非常にサディスティックです。
一応初音ミクをツールとして使っていますが、声も相当にいじくっていて、「初音ミク」という枠も絶賛破壊中。
もちろんそこから離れることもせず、初音ミクに対して畏敬の念すら抱いていることで絶妙なバランスになっているのですが、どちらかというとボコーダーを駆使したニューウェーブミュージックの香りがします。
 
そもそも「ニューウェーブってなんぞや」と言われると非常に説明のしようがないんですが、新しい挑戦、とでもまとめたほうがいいんでしょうか。
ニュー・ウェイヴ (音楽) - Wikipedia
秩序の破壊や新機軸において、野太い音や楽器の音の原点に戻っていったのがパンク、過剰装飾と音楽のテクニックで幅を広げたのがニューウェーブミュージック…うーん、すごい曖昧なんですが。
 

鬱担当が傲音みくだとしたら、躁担当がミクっぽい何かさんですね。
作品を色々見てみると分かりますが、この躁と鬱の振り幅の面白さと音楽のバランスを非常にうまく楽しんでいる作りです。
躁鬱のバランスにあわせて、ハードコアを流し込んだり、アンビエントに傾いたりと自由自在です。
この曲は戸川純とヤプーズを彷彿とさせる、耳障りないい意味で攻撃的なシンセサイザーの音と悲鳴に近いミクの声が、ヒステリックな感情をうまいことたたき出しています。歌詞もまた気がふれそうな寸前のラインを綱渡りして落下していて、何度聞いても神経に障るギシギシ感がたまりません。
 

それにしてもこの変拍子と、不協和音の使い方、モノクロ世界の狂気をうまく使いこなしている物です。
「変態な曲」と言い切るのは簡単かもしれませんが、なかなかどうしてこの緻密に計算されつくした曲の作りと、動画とのコラボは見事な物ではないかと思います。破壊しつつもちゃんと盛るP内のルールは守られているんですよね。
かなり不可思議な音の作りになっているので、聞く人を選ぶタイプの曲だとは思いますが、こういう曲を作れる人が発表してくれるのはうれしいなあ。
 
盛るPの曲じゃないんですが、動画提供していて、エレクトロニカとしても聴き応えあるこちらも必見。

 
KarenT(カレント):アルバム詳細 : 『傲音 / MOL.』
アルバム「傲音」は7月15日からダウンロード販売で発売中らしいです。
 
関連・モル園 作者サイト