たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

アニメ版「ささめきこと」の、女の子同士のキスまでの距離描写が細かい。

ささめきこと3話見たよー。
今まで3話まで見たところの感想ですが、原作が比較的ギャグ・シリアス・ギャグ・シリアスと入れ替わるまくるタイプなのでどうなることかと思いきや、かなりいい具合にテンションの上がり下がりをまとめて、ちゃんとクライマックスで切なさをきっちり描いているため、非常に好感が持てるアニメになっています。
ギャグの部分が青空みたいに明るいからこそ、すごく胸がざわめくんですよねこの作品。そこをきっちりおさえている!
 
さて、3話はキスの練習をするというナイスシチュエーションの回です。
ちょっとそこの描写について書きたいのですが、まずは簡単にキャラ説明。

村雨純夏、通称すみちゃん。
背が大きいのがコンプレックスになっている、空手をこなす才女。かなりの妄想家で、割とトリップ多し。で、基本的に視点はこの子目線で進みます。

風間汐。可愛い女の子が大好きな変態淑女。かなり変態だと思う。
けど恋と憧れがごっちゃになっている子。
 
この二枚の絵だけ見ても分かるように、風間はどんどんずんずん前に行っちゃうんですよ。可愛い子いた!と言って。でそれを後ろでいつも見守りながら、どうすればいいか分からないすみちゃん。
皮肉なもんです。自分の好きな相手が「かわいいものが好き」で、自分は大きくてかわいくないなんて…。
 

●あなたと私は背の高さが違うから。●

で、風間がすみちゃんに「キスの練習をしよう」と話を持ちかけるわけです。
練習とは言え口づけしたらカウントされちゃうので(女同士はカウントしないとかはない、だって女の子とキスしたいのだもの!)お面を付けよう、という「どうしてそうなる?」の道をがんがん進んでしまうのが風間らしい。
 
さて、問題のキス練習シーンですが、二人ともキス経験なし、というのと、すみちゃんは風間を意識しており、風間はすみちゃんを友人だと思っているの2点を踏まえた上で見ていきます。
…ギャグっぽいはずなのに、書いていて切なすぎるなこのシチュエーション。

シチュエーション設定は風間。このへんの「恋とはかくあるべし」という美学の暴走っぷりが風間らしいところです。
とにかく考えたことそのまま口から出るもんだからすみちゃん振り回されまくりなんですが。
 
で、すみちゃんは背が高いという設定がここででかい意味をしめてきます。
すみちゃんは背が高いのをコンプレックスにしているわけです。意識してやまない風間は自分より小さく、そして風間は自分よりさらに小さくかわいいものが好き。
なぜ自分は大きいんだろう…。

お面ごしとはいえキスするわけですから、背をのばさないといけません。
この脚の描写が非常に秀逸。色々考えて立ち位置を整えながら、ぐっと伸び上がるんです。実際に見ていただくと、風間の動きが非常に丁寧に描かれているのがすぐ分かると思います。
 
風間は自分が「女の子が好き」というのを分かっているけれども、風間からみたすみちゃんは現段階では「男の子が好き(ノンケ)」だと思っているんですよ。
で、すみちゃんは男の子よりも大きい場合が多いから、というシミュレーションです。
彼女の背の伸ばし方が丁寧なのは、友人に対して精一杯してあげようという気持ちの表れ。
…本当に?
 

●一枚を隔てた距離●


本当ならこれ笑うシーンだとは思います。
風間は一応「練習」だからといってお面するんです。まあ練習ですしね。
でもさ、お面越しのキスですよ。
それ普通のキスより変に緊張するから!
 
実際、この二人の近づくシーンの描写がもんのすごい凝ってるんですよ。

さっきの一瞬後。
分かるでしょうか。

 
そう、これ逆じゃないです。近づいた後、お互い一回引くんです。
もうガチガチで震えているすみちゃんはもちろんとして、風間も一瞬体をこわばらせるんですよ。
 

もう心臓張り裂けるかと思ったね。
すごく時間をかけて丁寧に近づき、そしてまっすぐにキスが出来ないことを悟ってすみちゃんが角度を変えます。
 
ウルトラマンのお面越しのキス。
視点はすみちゃん目線なので、もうガクガクブルブルですよ。
相手は、自分のことなんて「好き」だとは思っていない、そう思っているのに友情にあやかってこういう行動になることへの複雑な気持ちはあるでしょう。でもそれを越えるくらい、そこにいる好きな人に、近づきたいって思って当然じゃないですか。

風間をつかむ手もガタガタ震えているんです。
ここで、お面の効果一つ目が発揮されます。
練習とはいえ顔を近づけるのですが、すみちゃん今のこの関係でキスするほど顔なんて近づけられなかったでしょう。
通常であれば「ばかじゃないの」で済んでしまうようなこの行動に自ら出ることが出来たのは、風間がお面を被ってその表情を隠しているからに他なりません。
 
加えて、お面の効果はもう一つあります。

すみちゃんには見えない視点、観客であるこちらにしか見えない視点です。
風間の手も力んでるんですよ。
元々風間が言いだしたこととはいえ、やはり緊張するのは当然。
しかし本当に緊張しているだけなのか?
すみちゃんのことは「大事な友人」と言う風間だけど、暴走して「かわいい子好き!」と騒ぐ風間だけど、すみちゃんの気持ち、すみちゃんへの気持ち、もう気づき始めているんじゃないの?
でもそれはここで見えちゃだめなんです。原作を読んでいる人にはもう分かると思いますが、まだここでは早いんです。
お面で風間の顔が隠れることによって、風間の本当の気持ちが隠されるという効果がもたらされます。
すみちゃん視点では風間の顔はお面でしかありません。
しかし、視聴者はこの光景によって、お面の下の風間の本当の顔を考える余地が与えられるのです。

客観的に見たら笑われるようなシーンを、視聴者の気持ちを一気に飲み込み、すみちゃん視点と風間視点両方に流れ込むように仕組んだ、細かすぎるくらいの描写に、年甲斐もなく死ぬほどドキドキしました…。
生殺しも生殺し。だがそこがいい。
 

●風間とすみちゃんのプライベートなゾーン●

今回の「練習」は、風間のプライベートな間合い(人が入ってくるのを許容できない自分の周囲)が極めて無いに近い無防備だったから起きた現象でもあります。
と書くとセクシャルですが、ようは「アホ」なんですよね。
自分からもすいすいと人のエリアにやりすぎなくらい入ってしまうし、自分の所に入ってきても気にしない。
それって本人は平気かもしれないけど、周りはドキドキだよ?
多分この子モテていると思う。実はすっごく。実際第一話で色々ありましたし。
 
すみちゃんに対しては特に友人であるが故に、それが適用されていくわけです。
すみちゃんは逆にプライベートな間合いがでかいです。割と人を拒絶しているフシがあります。人嫌いとかじゃないんです、あまり近づかれたくない、というだけです。
二人の距離感を表している決定的なシーンはこれですね。

下に手を置いているのはすみちゃん。すっと何も考えずに手を乗せてくるのは風間。
 
手はね…百合において最重要な役目を果たすよ。
唇でも胸でもおしりでも脚でもないです。手です。これはもう、手がおざなりな百合は物足りない、といっていい、と思う。
ふとしたはずみで手がすっと触れる時に、相手とのバリアが一気にほどけるんですよ。風間の手が触れた時のすみちゃんの感情を考えてみてください。うれしいのと悲しいのといっぺんにくるわけですよ。でもそこにある手を握りしめたいんですよ、でもできないんですよ!
 
この二人のプライベート感覚は、原作でも事細かに描かれています。心の部分も、実際の距離も。
それがすごい近いかと思ったらすれ違ったり、不器用に行き来してどうしようもなくこじれて…。

アニメで何度も出てくる、切なすぎるツーショット写真。
見るたびにひたすら胸が痛くなります。
 

                                                                                                                                            • -

 
風間の設定がぶっとんでいるため、どうしてもバランス崩れそうになるのではないかと危惧しますが、それがないのがこの作品のすごいところ。
すみちゃんはそれを保つのは無理です、だっていっぱいいっぱいだもの。
だから、第三者。

そう、俺の嫁キョリちゃんです!
3話からやっと「キョリちゃん」ってよんでましたねー。ウフフ。
キョリちゃんはもう完全にノンケなんですよ。風間がどんなに「かわいい女の子いいよね!」と言っても「ふーん、そうですかー!」で受け流せる。かといって拒絶するでもなく、理解してくれます。
百合作品ってどうしてもクローズドな閉鎖空間になるのが前提としてある場合が多いので、息苦しさを感じることもありますが、キョリちゃんの存在によってうまーく「女の子が別に好きだというわけではない子の視線」を差し込み、バランスを保つわけです。

いい突っ込み役ですね。
だからその点をくみ取って、ローソンはキョリちゃんのカレーパンを作って売るべきだと思うよ。
 
ささめきこと 1 (MFコミックス アライブシリーズ) ささめきこと 2 (MFコミックス アライブシリーズ) ささめきこと 3 (MFコミックス アライブシリーズ)
ささめきこと 4 (MFコミックス アライブシリーズ) ささめきこと 5 (MFコミックス アライブシリーズ)
原作を見るときのポイントはやっぱり二人の距離。
どんどん近づいたと思ったら一人になってしまった表紙に注目。
今回のキスシーン、原作だとわりとさっくり終わるんですが、ちゃんと風間の感情を原作読んだ上で噛み砕いて注ぎ込んでいるのがGOOD。丸々一話かけて、クライマックスのお面キスへと向かうシーンのときめきはハンパじゃなかったです。
アニメ化による、丁寧な機微を持ったすばらしいシーンをありがとう!
ささめきこと 第1巻 [DVD]
 
ささめきこと 公式サイト
風間のキス練習ゲーム公開中。でもなんというかかんというか、面白いんですが・・・その唇は僕らのものじゃないですから! すみちゃんのものですから!!!
 ↓
やってみた。
すみちゃんになって、練習するゲームでした。キョリちゃんの壁紙ゲットしましたひゃっほう。
友人が「すみちゃんが必死にこのアプリやってそうだ」と言っているのを聞いて「ならありだな!」と思いました。
そんなもんです。