たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

浦井民先生の「Hole Sweet Hole」が持つ、悩める性への感覚の世界。

LOで連載されている浦井民先生のマンガの話です。
18禁なので収納ー。
 
 

浦井民先生の処女単行本がでました。
表紙を見ていただいても分かるように、とてもキャッチーでキュートな女の子が出てくる、かわいらいらしいエロマンガです。
ところが、この作品集見た目に反して非常に中身が不思議な感触があります。
今回はLO読者の同志、漫画脳のササナミさんとその点、お話させてもらったので、記録しておきます。

 

●ちんこもげた●

たまごまご: で、ここから本題なんですが
ササナミ: はい。
たまごまご: 浦井先生のちんこの扱いがすごい気になってて。
ササナミ: そこなのww
たまごまご: いやー……短編でもそうだし、長編でもそうだけど、女の子に酷いことしたら、相手の男ラストにちんこもげるじゃないですか。あれが実はすごい衝撃だったんですよ。
ササナミ: ある意味水戸黄門的なね。
たまごまご: うんうん、成敗! …というと聞こえはいいんだけど、そのへんが実は浦井先生の持つ性への感覚な気がしてならなかったんです。浦井先生ってエロマンガに置ける「セックス」に対してどう感じてるんだろう?って。
ササナミ: わたしもちょっと気になるところだったなあそれは。そもそも読み手としてはどの層が狙いなのかなあと。陵辱好きな人に向けて描いてるとも思えないし。
たまごまご:『LET'S GET LOST』*1の主人公カップルは確かにいい関係なんだけど、それ以外のセックスに対して「キモチイイ物」っていう感じが無くて、なんか後ろめたいんですよね。そうそう。いわゆる「凌辱もの」ではないと思う。
ササナミ: 不思議なジャンルですよね
たまごまご: ジャンルで言えば凌辱物なんだけど、男性が成敗されちゃうんですよねえ。なんだかすごく不思議。 かといって町田ひらく先生*2ほど達観していないというか、淡々としていないというか……。
ササナミ: うん、それが単行本で1作2作入るくらいの量ならまだ今までにもあったかもしれないけど、作品ごとに確実にあるオチっていうのが。
たまごまご:『LET'S GET LOST』のドーナッツ*3にしても、なぜ「ちんこ」にこだわったのかが気になるんですよね。
ササナミ: ふむぅ。
たまごまご: 凌辱作品のいいところ(?)って多分「エロを男性側が思う存分享受できる」って所だと思うんですよ。なのに、浦井先生のって凌辱する男性すごくヘタレじゃないですか。どういうことなんだろう、自分はどうも男性に感情移入して読めないんです。女の子に視点行っちゃうんですが。
ササナミ: 陵辱してる側の台詞とかもあるんだけど、あえて女の子のモノローグで打ち消してる感じがしますね。
たまごまご: 「ヤクザは黙ってろクソ親父」とか。

(「誰を怨めばいいのでございましょうか」より。後半のモノローグの流れが圧巻、)
ササナミ: かといって、「陵辱されても折れないほど強い」ものとしても描かれていないところがまた不思議。
たまごまご: 女の子が許容している、っていうほどでもないんですよねえ。「そんな体に殺してやりたい相手のものが入ってくる」とかすごくリアルだなあと。
ササナミ: 許容してたらあのオチはいらないとも思いますw
たまごまご: 普通はちんこもげなくていいのか…w すっごい性に対しての嫌悪感みたいなのも感じるんですよね。
ササナミ: もげなくてはいけない(っていうとアレだけど)のが浦井漫画! って言うとすげえ
たまごまご: すごい痛い(股間が)w
ササナミ: ロリ物だから、なのかなあ
たまごまご: ロリ凌辱は作中で断罪されねばいけない? あっ、そか、『LET'S GET LOST』の同年代カップルは許されていますよね。
 

●大人の世界と子供の世界●

ササナミ: そう、だから「大人」の表現なのかなと自分は思ったのですが。
たまごまご「あたし達子供のセックスは、医学的にも、法律上も、教育の上でも、もちろん心情的にも、悪いこと、すべきでない好意に分類されていた。あたしもその通りだと思っている。」()ここがすっごい引っかかる。
ササナミ: うん確かに
たまごまご: 悪いこと、なのか?(ファンタジーのエロマンガの中で)子供同士のセックスでもすごいリスキーではありますよね。
ササナミ: そういう要素は確かにエロ漫画にはあって然るべき部分でもある、けど他のエロ漫画とはちょっと違う気もしますね。
たまごまご: たとえばほかのエロマンガだと、どんなリスクがあるかしら? 抜き特化でリスクのない作品も結構あるかなとは思いますが、確かにありそうだしちょっと気になる。
ササナミ: うぅん ありそうなのにすぐ出てこない;;
たまごまご: 一番ぴんと浮かんだのは、田沼雄一郎先生の「SEASON」*4かなあ。 あれは妊娠して、学校からも転校してますよね。
SEASON 1 SEASON 2 (ホットミルクコミックス)
ササナミクジラックス先生の「らぶいずぶらいんど」*5もそんな感じかなあ? でもドーナッツ(『LET'S GET LOST』シリーズのこと、以下ドーナッツ記述)の場合は最終的に河東と栗原は救われてるから単に「子供のセックスが悪」という感じでもないし。
たまごまご: 途中ではすごく自己嫌悪に陥ってますね
ササナミ: 男達に犯されているのが「自業自得」と言ってますしねえ
 

●ドーナッツ●

たまごまご: そのへんが「ドーナッツ」の理論なのかなあ?
ササナミ: 栗原も自分の手を汚すことでこの修羅場を切り抜けてようやく最後は落ち着くに至るけど、他の短編の男達や集団レイプ犯にはそういう救いがないんですよね。
たまごまご: あのラストがなかったら、栗原はどうしようもない男のままですねたしかに。
ササナミ: まあ強姦と子供同士とは言え和姦(一応)だから比べるのは何だけど。ただこういう波のない単なる子供同士の和姦を描きたいとは思えないかな。
たまごまご: ラストがなくてもなんとでもなる作品ですしねえ。
ササナミ: こうでもしないとお互い自分の気持ちに気付かなかったと考えると気が遠くなる恋物語かもしれないw
たまごまご: 彼らはドーナッツ本体だったのか、穴だったのか… 穴かな?

(「LET'S GET LOST」より。左の少年が栗原。右の少女が河東。この二人が話の軸になっていくが、常に「なんでドーナッツには穴があるのか」をテーマにしながら思考を繰り広げていく。ドーナッツをドーナッツたらしめるのは穴だが、穴は食べようとしなくてもドーナッツを食べるとなくなってしまう。しかし穴は食べようとしても食べることが出来ない。なぜ穴があるのか? 禅問答のようにぐるぐると作品上を巡り続けている。)
ササナミ: 栗原が行き着いたラストを考えると、ドーナッツ本体かなと思ってます。
たまごまご: ふーむ。なにかがあるから、穴ができる。穴が存在するわけじゃない。
ササナミ: いまだにドーナッツの意味が理解しきれていないなあ〜
たまごまご: 栗原と河東がドーナッツの本体だとしたら、二人がいるから穴が存在する、ってことなのかな。 いやーそんな単純なもんじゃないかー。
ササナミ: 意外と単純なことなのかもしれんですよ。
 

エロマンガの感覚と「ちんこもぐエンド」●


(「続続続LET'S GET LOST」より)
たまごまご: 人間の体は筒だ、ってのはすごかったですね。
ササナミ: そんな解釈はじめてみましたもんw
たまごまご: 一瞬ゴージャス宝田先生の妖精をおもいだした…w*6
ササナミ: あれはすごすぎw
たまごまご田倉まひろ先生も描いてましたねw
ササナミ: 新ジャンル…?
たまごまご: 流石に広まりはしないとは…w 人間はドーナッツだけど、女性の穴はドーナッツではない。ってのもおもしろいですね。
ササナミ: さすがにそんな日本は病気すぎる。エロ漫画界隈にいると感覚が麻痺しますぜ。
たまごまご: まったくだー。 すごい当たり前の基準で考えたら「子供がセックスをするのは悪いこと」っていう浦井理論は「当たり前」なんですよね。 でも当たり前ってなんだかわからなくなる。
ササナミ:うん。それを完全否定しているわけでも、やさしく認めているわけでもないのが浦井先生の描き方かな。
たまごまご: 読者にゆだねているのかなあー。
ササナミ: 強姦魔は必ずちんこもがれるけどそれでホッとできるわけでもないという・・・。
たまごまご: 個人的には結構あれは見ていてすっきりしますよw 女の子視点でみちゃう上に、全然きもちよさそうじゃないじゃないですか。でもそこもエロいんだけど。
ササナミ: 完全にエロ目的の人にとってはどうなんだろうなあ〜
たまごまご: ぎょっとするとおもう。エロマンガにおいては『その人が死ぬ』よりも恐ろしいことですよね>ちんこもげる 水戸黄門的爽快感って言うのは本当にあるんだけれども・・・
ササナミ: 完顔先生の魔女っ子ものでももがれてた気がする。まだ単行本入ってないはず。アキバで魔法少女に出会ってってやつ。
たまごまご: あ!!!あったあった。*7
ササナミ: レイプではないけど。しかも何人もいた。来月出るのには入るかな?
たまごまご: うわあ、ソーセージ切りまくってるw
ササナミ: ちんこもぐエンド(ひどい言い方) ってありそうだけどそんなになかったかしら…。
たまごまご: そんなにないはず…。
ササナミ: 殺されるほうが多いのかな。
たまごまご: やっぱりエロ目的のエロマンガにおいてはタブーの一つだし…。 死ぬのは多そうですね。
ササナミ: ううむ。やはり犯したタブーはちんこをもって償うべきというメッセージなのか。 実際問題ちんこってもげても命に別状ないの…か?
たまごまご: ないない。ほら、おかまさんとか。
ササナミ: あ、そりゃそうか
たまごまご: あ、ひょっとしたら去勢は「死ぬよりも重い罪を」ということなのかなあ? 浦井先生の作品だと、短編のはそういう感じしますね。エロマンガにとってのチンコって、場合によっては人格そのものじゃないですか。
ササナミ: 意識が残っている状態でちんこがもがれるというのに意味があるのかな?
たまごまご: あっ、それはありそう。 基本目線が女の子だから、「氏ね!」じゃなくて「ちんこもげろ!」なのかな?
ササナミ: かなあ・・・
たまごまご: さっきもササナミさんいってたみたいに、ものすごくモノローグ多いからどうしても女性視点になりますよねこれ。
ササナミ: 女の子がその傷を持って生き続けるように、犯人もそれを刻まれたまま生きていかなければいけないとか。 ですね、女性視点は意図的にやってると思う
 

●ドーナッツの不思議●

たまごまご: 自分は河東の気持ちは痛いほどわかるんですが(自己嫌悪とか、後ろめたさとか、流される気持ちとか)、ササナミさんどうですか? きっと「いやそれはおかしい」って人も必ずいるとは思うんだけど…。
ササナミ: わかりますよ、そこはやっぱり。それが正しいかどうかじゃなくて、このときの河東にとってはこれが精一杯だったと思うし・・。
たまごまご: 精一杯かあ。そうならざるをえない?
ササナミ: 相手の気持ちも自分の気持ちもわからないままだったから余計にそうなんじゃないかなあと。 栗原自身がわかっていなかったのでわからないのも当たり前ですけど。
たまごまご: 途中で倦怠期になりかけたっぽい時の空気が一番困惑しました。
ササナミ: うん、えっ?って思っちゃう。
たまごまご: ここまできて、そっち!?って。 あれもほんとうに倦怠だったのか今となってはわからないけれども・・・・
ササナミ: あれは河東を罠にかけたのが栗原だと読者にも思い込ませるミスリード的なもんだったのかな
たまごまご: あっ、そっか。 確かに最終回前まで、栗原がなにかした、と思っちゃいますね。
ササナミ: ただ、それでも自分の気持ちがわからないことと「飽きてきた」とは勘違いしないですよねえ。ちょっと不思議な表現でしたわ。
たまごまご: ササナミさんすごく「不思議」って使いますねw 確かに不思議なエロマンガだ。ストーリーマンガだと考えたら・・・不思議かな?
ササナミ: いやーだって不思議ですよ
たまごまご: 感覚、がかな?
ササナミ: ていうか読んでたときより話してたらもっとわからなくなってきたw

(「終LET'S GET LOST」より)
たまごまご: 自分はやっぱり、あえて謎を巻いてそのままにしておくのが不思議かなあ。
ササナミ: 二人のラブストーリーとして読んだらそれなりに納得ができたんですけどね
 

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ドーナッツは穴があるからドーナッツなのか。
ドーナツがあるから穴が存在するのか。
そもそも「穴」というものは存在しているのか。
そんな不可思議な問いを、性を通じて人間の有様として描いていくのが浦井作品。答えは明確には描かれていません。
エロマンガという媒体において、性の感覚を非常に特殊なタッチで描き、読み終わった後にじわっと考えさせる後味を映し出す浦井民先生の作品、読んだ人それぞれの答えによって見え方の変わる面白いマンガです。
 

*1:本作品に収録されている、長編作品。全7話。

*2:少女達が凌辱されていく姿を淡々を描く作家さん。ハッピーエンド的な展開は少なく、少女達の達観し、希望を持てない目線が痛い。

*3:殺したレイプ犯達を、お互いの口にちんこをくわえさせ、ドーナッツ状につないでいるシーンがある。

*4:小学生の女の子が男の子に手を出して、二人でセックスしまくる日々を送るが、実は女の子の方はお父さんとセックスしつづけていて、最終的に男の子との子供が出来てしまって離ればなれにされてしまう話。2冊組の長編で、舞台は80年代日本。じわじわくる名作。

*5:LO掲載。目の見えない男性と、自分の年齢を偽って近づく少女の恋愛譚。エンディングは非常に切なく、どうにもならない現実の壁が描かれている。

*6:骨のない小さな妖精さんとのセックスをするシーンがあるが、ほぼオナホール状態。マンガってすごいね。

*7:2008年8月号収録「ブレイド・ウィッチ・ストロベリー」のこと。おちんちんの悩みを叶える、という魔法少女の話