たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

犬星先生が描く、小動物的少女の王国「おにいちゃんが、すき。」

犬星先生の新刊の感想とかです。
エロマンガの話なので収納なのよ。
 
 

●小さきもの達へ●

犬星先生の描く少女は、とても小さいです。
「少女が小さいのはあたりまえだろう」と言われるかもしれませんが、なんというか実寸のサイズよりも、感覚的に「小さい」ことが非常に強調して描かれているの気がするのです。
たとえばこのカットなんかは顕著ですね。

だきかかえあげられるサイズです。
このコンパクトサイズが基準値なので非常に男性との比較をすると小ささが目立ちます。
とはいえ、ただサイズが小さいだけならそこまで特別感はないんですが、犬星先生の作品の女の子はちょっと特別に小さく自分は見えます。非常に感覚的な部分なので、そうは感じない人もいるかもしれません。
 
簡単に説明してみます。
まず描かれている女の子たちが手足が華奢で頭が大きめということ。
いわゆるアニメ体型なんですが、それでいてちゃんと体についているお肉のぷっくり感も描かれているので、デフォルメされているのに妙に生々しさがあります。
 
次に描かれている少女達の動きにしながあるということ。

ところどころで妙に女の子たちが「子供」ではなく女性の動きをします。女っぽさがにじみ出るポーズをとったりすることで「女」らしさが強調されるんです。
ようするに視線の問題です。男性が女性を見る視線で少女を見ているんですよ。
ひどいロリコンですね!
そう、男はわりと駄目な感じなんです。ヘンタイ兄貴という表現が割とぴったりなだめっぷり。
 
だから、逆に少女側の視線になっているときは、少女の行動や体型はものすごい幼さが全開になります。
このカットなんかがわかりやすいかと。

少女は自分の姿を認識するとき、自分は小さい(大人の男の人よりも)という感覚。
大人のロリコン視線で見ると、小さいけれど確実に女の性をたたえている、という感覚。
このギャップが、犬星先生の描く女の子キャラを非常に小さいイメージにしている気がしてなりません。
そしてその感覚の差異が、とても愛しいんだなあ。かわいいから愛したいという気持ちと、微妙な背徳感。
 
ちなみに両方の感覚がポロッと外れる瞬間があります。
男の人も女の子も、「小さい」と感じている瞬間ですね。性的な視線が入らない時です。

こんな感じ。
もうデフォルメされてしまって、リアルさは撤去されています。
お互いの感覚のバランスで、極端に小さい頭身から割と生々しいサイズまで、違和感なくうまく調節されているのが、犬星先生の少女美描写だと思うのです。
 

●「おにいちゃんがすき」な少女像●

犬星先生の人気のポイントの一つに、徹底して女の子が純粋に男性キャラを好いているという点があります。

色々な思惑や人間関係はあるんですよ。
少女達なりの感情はあるし、どう接すればいいか必死に考えたり距離を取ったりもする。
色々ぶきっちょに思いをめぐらせて悩み疲れたりもするし、時には何も考えずワイワイ騒いでいるだけだったりもします。
しかしそれらの様々な感情を全て超越するくらい、好きでどうしようもない気持ちが渦を巻いている。
もう好きで仕方ないのが波のようにおしよせてくる。
 
エロマンガなのでもちろんエロシーンが大事なのは言うまでもないんですが、やっぱり「好き!」って言われたいんですよ。少女達が「好き」って感情爆発させてしまうのを見たくて仕方ないわけですよ。
特にまだ精神的にはちっちゃい子たちですから、不器用だったりもします。不器用な分、ものっすごくストレートで一生懸命で裏表が無い。
そんな「好き」が最高級のご馳走なのです。

大人の側の、ちょっと後ろめたい性的な視線を飛び越えてくるくらいの、「大好き」が欲しい。
それはファンタジーだ、と言われたら「そうです!」と肯定します。ファンタジーなのです。
ファンタジーで夢を見たいのです。
(夢=女の子に好きって言われること)
題名の通りなんです。「おにいちゃんが、すき。」って言われたい。
だからここにいるのは、生身の少女ではなくて「おにいちゃんがすき」な少女像です。「好き」の気持ちに支配された少女像の王国です。
 
ハッピーエンドが当然圧倒的に多いのですが、ラストの「アキナ」だけ全く別の切り口で、犬星先生としては異例な作品になっています。
普段が「好き」で一貫した安定性を保っているため、ある意味衝撃的だったファンの方も多いのではないかと思います。それでも安心して読みきれるのは犬星先生のマンガの力でしょう。

絵柄もまたいつもと全然違うのが面白いところ。視点や観点での描き分けが巧みです。
この話は、年の差的にはいつもの犬星先生作品とあまりかわらないんですが、視点が女の子側に常にありつつ、女の子のほうが大人びた考え方を持っているのがちょっと特殊。おにいちゃんが「絶対」の存在じゃないんです。
「おにいちゃんがすき」な少女であるのは全く変わりませんが、考え方が変わるとこうもエロシーンの見え方も、ラストシーンも変わるのかとなかなか興味深い作品になっています。
そういえば「おじょうさまのひみつ」の中の「お嬢様の憂鬱」の一編で、そういう報われないにおいを少し漂わせている作品ありましたね。
是非とも今後もこういう作品が見たいところですが、純粋に好き好き大好きな女の子も見たい。うーん、犬星先生両方期待してます!
 

「好き!」純度の高さがものすごく高いのが今回の作品集だと思いますが、他の作品集もみんな女の子が「好き!」なので幸せいっぱいです。
絵柄がかわいいので「ロリ初心者(初心者ってなんだ?)におすすめ!」と言いたくなるところですが、体のサイズ比的に女の子が非常に小さめなので、あんまりその属性が無い人向きではないかも?ロリ好きならもうドストライクです自分とか。
とにかく「女の子に好きって言われたい」願望があるなら、最高に満たしてくれる作品集ですのでオススメします。
 
犬と星の大冒険
作者オフィシャル。
ヘドバンしながらエロ漫画!  犬星『おにいちゃんが、すき。』

欲望と愛情の果てにロリっ娘達とセックスしてしまう男性達の“駄目さ”加減も、そんな野郎連中を優しく迎え入れ性の悦楽を満喫してくれる少女達の“非現実性”も、犬星作品においては全て許されるのだという安心感と一種の連帯感こそが作品の幸福感を下支えしていると僕は思うのです。

まさに非現実の王国。この本を開けば幸せになれる、という感覚が非常に幸せです。