たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

男に負けたくないとがんばる女の子は、輝いているじゃないか。「さよならフットボール」

さよならフットボール」は表紙の女の子が元気そうだったので思わず買いました。
読みました。結論だけ言うとすげー面白かったです。
それは後でじっくり書くとして、問題は次巻予告なんですよ。

【完結編】、今秋登場!!

ちょ! 一巻でた時点で、二巻で終わる宣言!?
はやい、はやすぎですよ。女の子の描写すっごいいいのに二巻で終わるて、人気あろうがなかろうが終わるのか!?
・・・と思って改めて題名を見ます。
さよならフットボール
そう、さよならなのだ。
さよならには、深くて苦しい意味があるんだ。

 

●越えられない壁●

スポーツの世界で、男女を分けるのは常識として考えられています。
種目自体は普通に男女別。格闘技なんかは当たり前。陸上なんかだと道具の重さなどが基本的に別扱い。
当然だと思ってました。当然でしょう。体の作りが違うからさ。
しかし、それを「ハンデ」と見るか「平等」と見るかは大きな差があります。
ある程度体の作りが違うんだから仕方ないよ、と割り切れればいいのですが、団体球技はそうもいきません。
野球、サッカー、バスケなどは、男女混合にできないのです。体格差があるからです。
 
この作品はヒロインの恩田希が、どうしても、心の底からサッカーで男子に勝ちたいと望んで必死に戦う様子を描いたマンガです。
サッカーの技術は間違いなく高いし、死ぬほど頑張ってる。
だから、だからさ。どうして男子の試合に出してくれないの!?

「「男の方がレベルが高い」って顔されると、「違うよ」って大声で言いたくなるの。」
サッカー技術のうまさ、得意さに男女差はありません。
しかし体の大きさや力が圧倒的に違います。だから男子サッカーに入れない。
 
不満じゃないですか?
私の方がうまいよ?
私の方が頑張ってるよ!?
この作品は恩田希が必死にそう訴え続けます。
しかし、誰もが、特に顧問は絶対に認めてくれません。まあ認められるわけがありませんルールですし。
理不尽なんです。おかしいですよ、男子に勝てる力を持っているのに、努力しているのに、性別ででられないなんて!

この価値観のぶつかり合いが非常に面白いし、見ていて辛いです。
見せてくれるんです、希は本気で頑張る子で、強くて、テクがあることも。
なのに「女子だから」というだけででられないこの歯がゆさ。
納得なんて行きませんよね。
 

●私の在り方●

この性別問題は、今現在進行形で起きているスポーツ界の問題でもあるでしょう。
しかし大人の体になってしまったら、もう仕方ありません。諦めるしかありません。
このヒロイン希が諦めないのは、まだ間に合うからなんです。
まだこの年齢では体格差はついていない。なんとかなる、なんとかなりそうなんだよ!

実際にはルールなので「なんとか」なりません。
しかしなんとかなると信じ戦う姿が全編に渡って描かれています。
残酷なものですね。とはいっても「基本男女混合」だったら男子が勝つので全肯定ができないのも辛いです。
「おはよう、フットボール」と言いたい。しかし言えないし言っても仕方ない。
だから「さよなら」なんです。
特に、これから成長することを考えるなら・・・「男子サッカー」からはさよならしなければいけない。
 

●あなたがまぶしいから。●

見所の一つは、希が必死な分、むちゃくちゃにかわいいところです。
もっとも鈍感でサッカー馬鹿な彼女は、モテていることに気づいていません。
でもね、必死に何かに向かい、笑顔を見せる女の子って、かわいいじゃないですか。
一緒にサッカーしている男子たちにしてみたら考えても見てください。「負けるか!」と刺激にもなるし、同時にこんなにかわいく見えることないですよ!
スポーツ少女の魅力は、男女の差をひゅるりと乗り越えて華麗に動けることです。

自由奔放、時に適当、でも俺たち男子より遥か高いレベルで練習して行く。
そんな彼女がまぶしいはずが無いじゃないですか。
 
この作品にはサッカー部の男子が山ほどいます。
希はマスコットになるつもりなんてさらさらありません。サッカーがしたい!それだけなんです。
だからこんなにも輝いて見えます。まぶしいです。ひたすらに。
 
少年たちは、希に惚れます。
元気で、明るくて、一生懸命なんですよ?
惚れないわけいかないじゃないですか。
惚れているとは直接書いていないんですけどね。でもこうなるよね。

なんともやるせないシーン。友達以上、でも恋人なんかなじゃない。意識もされない。
俺のことも、見て欲しいのに。でも分かってる、分かってるんだ。せめて彼女に喜んで欲しい。
背中に感じる、希の脱力した天真爛漫さに多くの人も癒されるはずです。サッカー部男子みんなそうなんです。
過ぎて行ってしまう残酷なリアルと、中学生らしい恋愛模様を描いた、とても優しく楽しく、そして切ない作品。次でラストとのことですが、どうなるのか楽しみです。

 

 
題名の「さようなら」は一体何を指しているのか、今ではわかりません。
そして、各々も今は・・・・気付いていないかもしれません。
自分のように「おいしいものは取っておきたい派」だと尚の事。
少女の時間は過ぎて失われるからこそ美しい。
そして少女の気持ちを無視して進んで行ってしまうから恐ろしい。
少女は「女」になり、少年は「男」になる。男と女になったとき、もう体の作りの差は埋めようがなくなってしまうのです。
限りなく中性的で、そして限りなく「少女」なこの一瞬、本当に美しい。だから少年達も恋をしながら、触れることが出来ない。
彼女が男ならば、と希の気持ちを痛いほど理解できても、それすら叶わない。
だからこんなにもキレイで輝いている。残酷なことです。
 
しかしながら、少なくとも、この本には少女のかけがえの無い、今この時しかない一瞬は刻まれています。
「さよなら」は、来るべきこれからのための一言。まださよならじゃない、まだだ!
だから見守ってあげて!
「現代のスポーツの問題にメスを入れる」なんて大層なものじゃないですが、少女の痛い気持ちと、少年達のやりきれない気持ちを爽やかに描いた青春群像劇です。サッカー漫画としての描写もしっかりしているので楽しめますよ。
 
余談。
大笑したWEB拍手

さよならとタイトルにつけながらも四年以上連載しているギャグマンガもありますしね…

でーすーよーねー。