たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

宮沢賢治なら、少女に触れる資格があるのではないだろうか説

今日のラジオからちょっと拾い読み。
 
途中から「D.T.力」の話になりました。
D.T.力は「童貞力」のことなんですが、実際に童貞か否かは問題じゃなくて、それだけのパワーと情念を持っているかどうかというプラス思考な考え方です。
みうらじゅん伊集院光が提唱していましたね。

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みうら じゅん 伊集院 光
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アマゾンレビューだけですらグッと来るのでピックアップ。

童貞の想像力は本当にすごい。ちょっとブラひもが透けて見えた、というだけで延々と妄想することができたりする。童貞はやさしい。女を性の道具として扱うようなことはしない。

童貞のコンプレックスが今まで数々の素晴らしい芸術や偉業を生み出してきた。これも童貞ならではの想像力(妄想力?)の賜なのだ。コンプレックスを持たず、女を蔑む「ガハハ」な男(最近はDQNともいう)には、こうした偉業は望み得ないのではないか。

少しでも早く捨て去るべきもの、として語られることの多い童貞だが、みうら、伊集院のように積極的に評価することがあってもいい。男みんなが童貞力を失わずにいれば、世界はもっと平和になることだろう。

熱い!
そう、このコンプレックスと妄想力と、それによって「何かを産んでしまう」パワー! これぞD.T.力!
結構好きなんですよねこの考え方。
実際、子供でも持っている人いますし、大人でもおじいちゃんでも持っている人います。
 
ここで、「D.T.力をもっている偉人って誰だろう?」という話にラジオは発展。
まあ有名どころだとヘンリー・ダーガー
 
D.T.力を持っていたどころか、他の人との接触がありませんからね。
ぼくの敬愛する作家さんの一人です。なろうとしてなれない境地の方。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
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誰に見せるでもない作品を恐ろしい量書きためていた彼の情念は、純粋なる少女への渇望と憧憬でした。
これはまぎれもなく、妄想を創作に傾けた力強く、激しく讃えたいD.T.力。
 
さて、もう一人話題に出ていたのが宮沢賢治でした。
自分も宮沢賢治は尊敬する人ベスト3に入る人なので、色々繊細に反応しちゃうんですが、「D.T.力」という枠で考えると納得。
苦労を重ね、最愛の妹が死に、黙々と売れない童話を書いて、死んでから評価された。なんとも不遇です。
しかし、岩手をイーハトーヴォとみなし、大地に根ざして生きている彼の姿は誠に美しい。
その書いた作品の分量を考えるだけでも、生きてきた純粋と繊細の狭間での戦いも、描こうとする力を考えるだけでも、力強い想像力に圧倒されてしまいます。雨にも風にも全然負けていません。
 
以前、漫画家の町田ひらく先生のインタビューでこんな会話がありました。

−−「こいつになら女の子に触れてもいいよ」という資格のある人はいますか?
町田:宮沢賢治ですね。一生童貞だった、なんて話もあるし、そういう性的嗜好もあった、って話もあるんだけど、あの人の残したものを考えれば、かっこいいとしか言いようがないですね。
−−あとがきで、先生たちはみな性的なものを感じるだろうが、宮沢賢治だけは違う、とかかれていたことがありましたね。
町田:ああ、それはずっと思っていたことで、賢治が童貞だったとしてもなるほどなと思いますよ。難しくてあんまり理解していないと思いますけどね。
(「淫漫姫」町田ひらくインタビューより)

この意見に、なんだか納得。
 
少女に触れるという妄想。それは二次元だから許される行為。
しかし少女に触れるには、それなりの代償が二次元でも三次元でも必要です。
特に三次元は罪や悪や、相手の人生を背負うことになります。
二次元であっても、触れるためにはなんらかの「代償」としての理由が必要。
そんな中でも、町田ひらく先生は宮沢賢治ならいい」と言っていたのに自分は深く共感したものです。
 
賢治の描き続けた作品群。
生前には評価されず、死後に評価されるという寂しいものでした。
しかし、だからこそ「売れ線だから作る」ではなく、「愛しているものだから描く」という思いが加速していきます。
 
賢治が童貞かどうかは別にどうでもいいです。
しかし、激しい熱情を抱きつつ、理性と愛で補っている激しいD.T.力の持ち主だと思います。
だから「触れてもそれ以上しない」というストイックさや「あれだけの、人生の代償を払っているならいいじゃないか!」という思いが詰まっていると思います。
 
D.T.力を保ったまま、大人になって作品を「仕上げられるか」。
D.T.力さえあれば、なんとか熱意で乗り越えられる、乗り越えられた人こそが見える境地が、きっとある!
 

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褒め言葉として「D.T.力」は煮締めて、力強く叩きつけたい。ゆだったおでんを口に詰め込むかのごとく。
時に青臭く、時に信じられないくらい純金のように輝くがごとく。