たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

UFOは存在すると思えば存在する。ゾンビはいると思えばいる。

ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ、リメイクものゾンビにもの申す! - シネマトゥデイ
痛いニュース(ノ∀`):ジョージ・A・ロメロ「足の速いゾンビを作ろうとは思わない、ゾンビが走ったら足折れるだろ」

面白すぎる記事だったのでつい。
自分もゾンビ映画・ゾンビゲーム大好きです。
アイラブゾンビ。
 

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で、どうでもいい戯言を書きます。
「ゾンビが走って脚がもげるか」問題。
そもそも腐っているとしたら、脚どころか立ち上がることすら不可能なわけです。
巨神兵みたいな状態ですね。

まずロメロ監督は、「決して足の速いゾンビは作ろうとは思わない」と自身の映画に登場するゾンビへのこだわりを明かしてくれた。「僕の最初の作品で、『ゾンビはいったん死んでいるから、身体がメチャクチャだ』と保安官が言うシーンがあるんだけど、まさにその通りで、ゾンビが走り出したら、足が折れちゃうと思うんだよ」と、意外にも現実的なことを考えているようだった。

このロメロ監督の意見には敬意を表します。
うらー、と歩きながら脚がもげたり手がもげるゾンビがいてもいい。
ゾンビ映画に出てくるゾンビの恐ろしいのは「死体が蘇って襲ってくる」「恐怖心や理性がない」という点。
ようは「死」への恐怖心を煽ること
吸血鬼伝説が恐れられるのも、同様に「すでに死んでいる存在」という設定だったり「殺しても死なない」という設定だったりします。
ゾンビの場合は吸血鬼と違って何の能力もないですが、体がバラバラになってもぴくぴく動いて襲ってくるってのは恐ろしいものがあります。
だからロメロ監督の中のゾンビが、走ったら脚がもげる可能性があるというのは非常に「ファンタジー内のリアリティ」があって、僕は好きです。
 

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じゃあ走るゾンビは嫌いかというと、大好きですね!
死んでいることによって、生きている時に使わなかった体力を使って恐ろしいスピードで走ってくるゾンビ!
筋力の限界を人間の理性で止めていたのに、それを超越して、体を破壊しつつも飛びついてくるゾンビ!
最高ですね!
 
ここ、やはり映画やゲームの見せどころです。
ようは死体であるゾンビが「いかに体を崩さずに動けるか」を考えればいいんです。
 
「レフトフォーデッド」シリーズはこのへん、「感染者」という扱いにして、まあ実質死んでいるゾンビ状態なんですが、ぎりぎり死んではいない病原菌感染者として描きました。
ゾンビを走らせても不自然じゃないようにするために設定にこりまくった例の一つ。

走ります。超走ります。
ぶっちゃけ人間より早いです。困る。
特にハンターと呼ばれる(命名される)やつらは、人間の限界を越えたスピードで飛び掛ってくるので洒落になりません。
そして2になると、とあるシナリオで「感染者に襲われた、主人公になったであろう生存者」が登場します。
 
めっちゃ走るゾンビと言えば「ドーン・オブ・ザ・デッド」でしょうか。まあ、ロメロ監督も言っていますがゲームっぽいノリではありますね。
あんまりにもすげー勢いで走ってくるので、一番最初に見たときは吹いた記憶があります。
これはこれで。
 
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知能がある上に、いくら殺しても、ヘッドショットしても死なない。うーんかっこいいゾンビ。
トライオキシンによって蘇るという設定も面白い。人間の「ゾンビ愛」への知能ひねりまくりですね。オバンバ。
 

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ゾンビ系作品の面白さは「感染する」ところにもあります。
かじられたら自分もゾンビになる恐怖。吸血鬼になった方がまだましだよ!みたいな感じはありますね。
理性を失い、さまよい歩く自分の姿が恐怖心を呼ぶという面は、やはりゾンビ作品の見せどころではあります。
逆に言えば「感染さえしなければ何をやってもいいぜひゃっほう!」というのをネタにしたのが、ゲーム系のゾンビ。
特にこれ。

ジャンル名が「ゾンビパラダイスアクション」ですからね。
なんだよゾンビパラダイスって。
すげーわかるよ。
もう現在は「ゾンビ」というのは固定化された妖怪じゃなくて、「動く死体」というオブジェになっているので、ある意味合法的に人間っぽいなにかを好きなようにぶっつぶせるという残虐な爽快感あふれる世界になってます。悪趣味ですねー最高。
まあ言い訳をすれば、倒してあげた方がゾンビになった人達のためには幸せなわけで。デッドラは感染というより、寄生虫によるもので、理性が完全に失われています。
 

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このへんの「怖くないゾンビ」「シューティングの的のようなゾンビ」に対しての好き嫌いはあると思います。
ようは「ホラーのボス」だったはずのゾンビが、「倒されるための雑魚」になりさがっているわけで。
とはいえ、どちらも面白いとは思うんですよね。
ロメロのホラーのボス的なゾンビの怖さは、一体の凶悪な敵ではなく、群体であるという事だと思います。
なので、個々が持っている「死」の恐ろしさがにじり寄ってくることこそが恐ろしいのであって、「走れないだろう?」というのは納得の行くところ。
 
逆にキョンシー(僵尸)なんかは死体でありつつも腐敗しない、妖怪化するという伝説があります。
キョンシー - Wikipedia
しかし実質ゾンビとおなじ。
こちらの特徴は「人を食う」「元から死んでいるから倒しても死なない」「時が立つほど強くなる」という恐ろしさ。
「増殖」が怖いゾンビと違って、一体がボスキャラ状態になるというのは面白いところ。
 

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「動く死体」が腐るか腐らないか、どのように感染するか。
それは全て創作者がどこに力点を置いているかで変わります。
なので、「これこそが正しいゾンビだ!」というのはありません。
100ゾンビあって100ゾンビ正しい。乱立するB級映画ゾンビ達も、「それが見たいんだよ!」と思って作っているのであればもう「よし、正解!」であります。
 
じゃあゾンビが現実にいるかいないか、という話になってくると伝奇伝承の話になってきますが、こちらは妖怪や呪術に近い部類になってくるでしょうね。ハイチとかアッチの方の。
映画のゾンビとはちょっと別質ですが、「動く死体」はいると思えばいる、いないと思えばいないというのが答えかなーと思ったりします。
UFOも「いると思えばいる、いないと思えばいない」という、科学を越えたところの観念論が面白いのと同様で。本当に「いる!」と思って探している人と「いない!」と思って探している人で考え方が絶対かみ合わないのがこのへんの超現象の面白い部分ですし。ってオーケンから学んだ。「いるかいないか」を考える人間が一番面白いというオチですね。
 

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オーケンといえばゾンビ作品の傑作を、書いてましたね。

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UFOやゾンビ大好きなオーケンが描く、切ないゾンビの……いや、美しいゾンビの物語。
15歳から17歳の少女たちのみが、突然死んでゾンビになるという設定がすごい。しかも165分割の肉塊になるまで解体しないと死んでくれない。
しかもその少女たちを殺す権利を持っているのは、親族と恋人のみ
そう、ゾンビ作品の最大の恐怖は「自分が死ぬ」じゃなくて「家族がゾンビになること」なんですよね。
全く未知の生物に襲われるのも怖いけど、知人がゾンビ化し、それを自分の手で解体しなければいけない恐怖はやりきれないものがあります。
愛する少女が理性を失い、生ける屍になってグルルルとヨダレを垂らしている姿を見てどうするか。もう救うことは出来ない。再殺するしかない。
 

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「襲われる恐怖」「倒す爽快感」「家族がゾンビ化する戦慄」。
それぞれ色々なテーマがありますが、後はそこに対して「どのような設定を加えるか」が最大のポイントでしょう。
トンデモでもいいですし、科学的でもいい。人間が狂って死んで、再び動き出す「理由を考える」のが一番面白い。
 
生ける屍をどう動かすか考えるために必死に知恵を絞る人間の姿こそが、一番面白く、興味深く、尊敬できると思うのです。
 

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ゾンビ映画好きとして「ゾンビが出てくるエロ漫画」を猛烈にプッシュしてみる - さよならストレンジャー・ザン・パラダイス
山下クロヲ先生のゾンビ少女話は非常に秀逸すぎたので、単行本が楽しみです。というかクロヲ先生の漫画は毎回設定がすごすぎる。よくこれネーム通るなあと言うくらい強烈すぎる。大好き。
田倉まひろ先生の「カスタムゾンビちゃん」は考えてみたらゾンビというよりフランケンシュタインですね。
ゾンビが「襲い来る不死の恐怖」だとしたら、そこを超越して「可愛くて萌える、人権を失った存在・ドール」に近い(死姦とは違うんだなこれが)というのはロメロどころかあの時期の人には思いもしなかったかもしれません。
人間の想像力は偉大だわ・・・(草薙素子顔で
個人的には、道満晴明先生の「ゾンビーナ」かわいすぎて死ぬ。

ゾンビは怖いだけじゃない。
知能を持っていて、愛があれば、それは……切なく悲しい終末思想に似た、死よりも巨大な恐ろしい「終わり」を感じさせます。
ゾンビが「死なない」と言うのは怖いけど、意外とゾンビになっちゃったら楽しいんじゃないか?
なら本当に怖いのは何か……全てが終わることか、永遠に終わらないことかのどちらかだ。
 
追記
コメント欄で教えてもらった「ゾンビーノ」が面白そうだったので紹介。
ゾンビーノ
なるほど、元々は人権を持った存在、しかしゾンビになったら見た目はそのままだけど、ゾンビだから人権はなくてペット扱い。このシュールさは面白い。
愛玩動物化したステーシーにも似てますね。
「ゾンビ=怖い」の枠を越えて、襲ってくるものではなくまさに「リビングなデッド」だという考え方は、死体への人間の感覚を引き出してきて面白いかも。
とはいえ「死んだ家族がペット扱いされている」っつーのはちょっとゾッとしますな。