たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

エロラブコメと見せかけて何気にシリアスラブな「鬼灯さん家のアネキ」が熱い。

各地で話題になっている、エロ姉貴による弟いじりマンガ鬼灯さん家のアネキが、M属性持ち、姉属性持ちにとってはバイブル状態です。
どんなマンガか説明するのはもう一番最初の4コマ見てもらうだけで一発で伝わると思います。

エス。フォーリンラブ。
これが最初の4コマなんだからすごいオーバードライブっぷり。
こんな感じで、ひたすらに姉のハルが弟吾郎を様々な方法で弄びまくる作品です。「もてあそぶ」って言葉普段使いませんが、この作品を一言で言い表すなら「もてあそぶ」以外ありえません。いやあ素晴らしい姉素晴らしい。
 

●ハルについて考える●

さてこのハルなんですが、ポイントが何点かありまして。
ある点、そこがこの作品のキモでもあるのでちょっと見てみます。
 
・身長が吾郎より明らかに小さい。
頭一つは違います。とにかくハルが小さいんですよ。だからこういう「妹」ネタなんかもできるわけで。
姉なのに小悪魔! 
小悪魔なのに姉!
姉ラーならにやけてなりませんね。大きいお姉さん好きもいらっしゃると思いますが、自分のようにロリコンで姉好きとなるとここまでどストライクなキャラなかなかいません。
身長が小さいおかげで、姉っぽさがそこまで画面内に溢れていないのもうまいところ。
このへんは、後述する理由と絡んできます。
 
・言葉の一つ一つがサディスティック

ハルは吾郎の気持ちをよーーーく分かっています。吾郎が自分のちょっとしたエロ行動、エロワード一つ一つに過剰反応することも、異性の匂い漂わせた言葉ひとつひとつに焦燥するのも。
だから口を開けばハルは吾郎が苦悩するような……いや違うな、煩悩で死にそうなくらいの言葉をどんどん吐きかけます。マシンガンのように浴びせかけます。
なんてうらやまやらしい!
 
・血がつながっていない
さて。最大の問題点はここです。
ハルと吾郎は血がつながっていません。義理の姉弟なんです。
ここで姉モノ好きな人なら「なんてこったい!」という人も出てくるかもしれませんね。「血がつながっていてこその姉ものだろう!」と。
だが待って欲しい。
義理の姉が、弟を弄んでいるエロラブコメなこの作品。
確かに読者的にはインナー視点で見て楽しめるけれども、果たして外部から見てどうなんだろうか?
特に、血縁関係者から見たらどうなんだろうか?
 

●心から気持ち悪いんだけど●

この作品が「姉エロラブコメ」という言葉では収まらないのは、ハルが義理の姉であることと、実の姉が登場することにあります。
一巻の最後の方で、吾郎の実の姉が出てくるんですよ。ここで頭をバットでぶん殴られるような感覚に襲われます。

「お前ら普段からあんななの? 心から気持ち悪いんだけど」
まあ、この実のお姉ちゃんはハルに敵意を持っているというのもありますが、この言葉結構真実でもあるんですよ。
だって、義理の姉が弟をもてあそんで、しかもギリギリなラインまで迫りつつオドオドする弟を見てニヤニヤ笑っている様子って、二人は楽しいかもしれないけど血縁者からしてみたら「なにやってるのあんたたち」と言われても仕方ない。
自分が吾郎なら天国ですよ。
しかし「自分の弟が義理の姉と恋人でもないのにキャッキャウフフしている関係にあった」としたら、きっと「なんかいやだ」という人は必ずいるはず。
これなんですよ、この作品が異質なのはここなんですよ!
 
ブコメ作品は、基本的にインナーな「自分たちの園」があるからこそ楽しめます。
極端な話、親が出てこないラブコメ作品が多いのも「自分たちの園」作りの演出の一つだと思います。
他者の介在しない、お互いの好き嫌いで成立しているラブコメ空間は非常に心地良いです。
加えてどんなにシスコンだろうと、吾郎は絶対手を出さないのも分かっているわけで、そういう意味では「永遠にこの空間が続けばいいのに」という楽園感があるからこそラブコメは面白い。
しかしずーっと姉が弟をいたぶっているパラダイスは気持ち悪いの一言であっさり片付けられます。
そうなんだよ、マジョリティ視点で見たらおかしいんだよ。
あっという間にパラダイスが破壊される様は圧巻。
と同時に一気に浮き彫りになります。
吾郎が性的な意味で姉ハルのことを好きなのは分かっている。
じゃあハルはどうしたいの?
 

●近くて遠くて●

二人だけのイチャイチャを描くだけでもこの作品十二分に成立すると思います。
しかしそこに他の魅力的なキャラクター達が入ることで、外部からの視点が投げかけられます。一番でかいのは先程も書いた実の姉です。
その他、クラスメイトの変わり者水野さんなど、第三者もこの二人のイチャイチャワールドに入ってきます。意図的な介入ではないです、年相応の人間関係です。

しかし第三者の介入は、ラブコメの空間を刺激することになります。
ずーっと「弄ぶお姉ちゃん」「たじろぐ弟」のままではいられない。
永遠にループ出来たらそれが一番幸せなのかもしれないけれども、そうはならないのが人間。
あぶり出される二人の気持ちが、現実の難しさと直面するハメになります。
 
確かに手を出せない弟、エロ意地悪をする姉の関係は楽しいけれど、姉弟である限り一線を越えられない。
エロマンガなら超えちゃうかもしれないけど、二人は越えられないんです。

泣けるシーンじゃないんだけど、実の姉さんの「気持ち悪い」を読んだ後にこのシーン見るともう泣けて仕方ない。
「なんかこういうのは違うよね」
限界ギリギリまでエロいたずらをしていたのに、ハルは「義理の姉が弟に悪戯をしている」というシチュエーションに寄りかかっているため、本心を全く出せないんですよ。
 
本作は非常によくできたエロラブコメです。
小さくてかわいい義理の姉にさんざん色々な悪戯をされたいという思いを存分までかなえてくれる素晴らしいラブコメです。
であると同時に、カウンターとしての現実が叩き込まれることで、かなうにかなわない二人の思いが浮かび上がって苦しい思いをするハメになる、極めて切ない物語でもあります。
うーん大げさかな。でも自分はハチャメチャコメディであるが故に、すかさず返ってくる「これからどうするの」という問いかけの切なさにモヤモヤしっぱなしでした。
でしたが。

吾郎のシスコンっぷりを見ていると清々しいのもまた事実でしたとさ。
めでたしめでたし。
 
……になるといいなあ。
ぎこちない姉弟に幸あれ。
 

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エッチなアネキに弄ばれたい弟達よ集まれー!『鬼灯さん家のアネキ』1巻 DAIさん帝国/ウェブリブログ
ハルも水野さんも京ちゃんも最高にかわいいです。
しかしそんなハルさんをドン引きさせる美咲が最強かもしれません。

もうほんと色々最低で最高です。 
 
余談。「けいおん!」の憂も進路調査票に同じ事書きそうです。