たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

おっぱいとか、好きなんだよ、大好きなんだよ!「わたしたちは皆おっぱい」

なんつーかもう、題名の勝利ですよね。
「わたしたちは皆おっぱい」!
「わたしたちは皆おっぱい」!
町中で叫びたい題名です。
是非書店で「『わたしたちは皆おっぱい』一冊下さい」と言える日本人になりたいですね。

パッと見きれいな外見。
だが、それは罠だ!
拡大してみると……いかにこうだめな感じかよくわかると思います。
 
もう題名からして駄目な感じ全開、で実際ダメな感じのいい具合な漫画なんですが、同時に思春期の微細な悩みもコミカルながらも真摯に描いている良作なんですよこれが。
ぶっちゃけ題名で買ったのですが、大当たりだったです。
おっぱい、いいね!
 

●おっぱい大好き!●

ヒロインの少女貴子は友達がいない13歳です。
なぜ友達がいないか。

こんな感じで目付きが悪く、人を近寄らせないオーラがあるからです。
はい、フラグ立ちましたね!
・目付きが悪い
・人と話さない
・周囲がおっかながって離れていく
こうきたらもう、そうだよ。これは寂しがり屋さんフラグだよ!
なんらかの理由があって、人とあんまり話さない。
ではその理由とはなんなのか。
何故にこんなに中一にしてここまで目つきが悪いのか。
それは。

おっぱいを見ているからである。
うん。
なんだそりゃ!と突っ込むなら突っ込もう。
 
理由? 理由ですか?
あるわけないだろ!
おっぱいだよ。おっぱいなんだよ。
「おっぱいが好き」ということに理由なんてあるだろうか、いやない!
 
貴子のこれ、性欲じゃないんですよ。
いやまあ、性欲が0では無いとは思いますが、なんだろー。キャラに萌えたりするときって性欲を超越した「好き! 大好き!」って思いが働くじゃないですか。あれなんですよ。
だから貴子の最大の関心事は「おっぱいを触りたい」に尽きます。
理由なんて無い、おっぱいを触りたいんだよ!という熱い魂が全編を通じて貫かれています。
 
変態だー!と言いたくなるノリなんですが、面白いことに読み進むと彼女の感情がすっげー分かってくるんですよね。
詳しい機微の部分は後ほどゆっくり書くとして、「あ、この子の『好き』はぼくら・わたしらの『好き』となんにも変わらないんだ」と気付かされます。

ひゃっほーい!
基本的に全編こんなノリです。
ね、すがすがしいでしょ?
 
そうでもない?
 
そうですね。やっぱりハイパーだと思います。
ただ心の中でこのくらいハイパーになるテンションって、あるとおもうんです。
こと、おっぱいに関しては魔力が半端じゃないんですよね。一旦男女の性を忘れてしまおうよ。
二つのやわらかい山。女性の胸にのみついている柔らかくて美しい魅惑の空間。
あれにどれだけの人が狂わされたことか! どれだけの人が魅了されたことか!
貴子が「思う存分もみしだきたい!」と思う気持ち、分かる、分かるぞ。

おっぱいの神様、ぱ神さま!!
よこしまですか? ええそうですとも、よこしまですとも。
でもよこしまも突き詰めればピュアなんだよおっぱい!
性欲を超越して、おっぱいを見たい、触りたい、もみたい、というかおっぱい、というあなたにオススメの作品です。
  

●大きいだけだと思うなよ●

で。
自分は極度の微乳好きなわけですよ。
おっきいおっぱいが嫌いなわけじゃないですが、もっとこう、手のひらで包みこみたい……むしろフラットラインでもいい……でもそこにおっぱいが存在していることが至高……という人間です。
こんな僕がこの漫画に惹かれるんですもの、ちゃんとわけがあります。
 
貴子自身がぺたんこ胸なので、大きなおっぱいに惹かれているというのは大いにあります。
大きいおっぱいに惹かれるのはもう仕方ないことなのです。
しかし、彼女は大きいだけが良いとは言っていません。

偶然触れた、クラスメイトの微乳少女の胸。
それまでは「大きいおっぱい最高!」だった彼女は悟るのです。
ちょびっとのおっぱいの素晴らしさを!
むしろおっぱいが好きだから、それがちょびっとだけおっぱいとして存在している感動!
そうだよこれだよこれ。
でかくてやわらかいだけがおっぱいか?
否!
小さいおっぱいも最高のおっぱいだ!

おっぱいに貴賎など存在しない!
ビバおっぱい!
ありがとうおっぱい!
最高だよおっぱい!
 
つまり僕も、「おっぱいが嫌いだから微乳派」ではなくて「小さいおっぱいが好き」なんだと宣言されたようなもんです。
ありがとう、「わたしたちは皆おっぱい」。
そうだ、題名のとおりだ。
おっぱいの好みの差はあれ、みんなおっぱい大好きでいいんだ!
おめでとう! ありがとう!
 

●好きであることの悩み●

ここからがこの作品のキモになります。
貴子は確かにハイパーすぎるおっぱい好きではありますが、あくまでも趣味なんです。人に迷惑かけてまでどうこうしたいわけじゃないんですよ。
加えて、「おっぱいが好きです」と言うのがいかに恥ずかしいかも分かってるんです。
だよね。
中一女子。とてもじゃないけど「おっぱいが好きです、触らせてください」なんて言えない。
まー冷静に大人の視点から考えたら、なんてことはない、友人に「うわおっぱいでか! ちょっと触らせて!」とか女の子同士でやっていても変でもなんでもないんですが、貴子は前述のとおり友達のいない子でした。

私の趣味、気持ち悪いよね。
きっとみんな、どんどん離れていくよね。
でも元々友達いないし……そんだけの話。一人で趣味はこっそり秘めて生きていけばいい。
 
この思い、まあ「おっぱい」が趣味って人はあんまりいないとは思いますが、誰もが一度は通る壁でもあるとは思うんですよ。
これ人に言っていいんだろうか。みんなに嫌われるんじゃないだろうか。

しかし彼女も学んでいきます。
ああそうか。趣味あわなくても、嫌われたくないし、それで嫌ったりなんてしないんだと。
一人でいいやと思っていたけれども、友達は友達でいたいってみんな思っているんだと。
 
隠れオタク歴長い人にはなかなかクる描写の多い漫画です。
ネタが「おっぱい」なだけにゲラゲラ笑える作品になっていますが、いざ自分の立場に置き換えてみたら、男女ともに心当たりある場合もあると思うんですよ。言えない趣味、言いづらい好み。これ言ったら嫌われるだろうなという恐怖。
ほんとなんてことはない、友達になってオープンに出来れば気にすることなんて何も無い場合の方が多いんですが、好きなものを否定されて嫌われる恐怖は計り知れないものがあります。
しかも折角できた友達も、自分の趣味のせいで離れていくんじゃないか、と考えたら。

一旦友達ができた状態での、自分の趣味のせいで離れてしまうのではないかという怯えは底知れない闇に包まれています。
みんなそう。ひとりだけじゃなくてみんなお互いそう思ってる。そう思ってるけど怖くなってしまったら止まらない。
 
貴子の趣味、おっぱい。
笑えますよね。
でもどんどん笑えなくなっていきます。ギャグとしては笑えるけど、彼女の後ろめたい思いもまた重いんです。
自分の趣味を恥じるな。しかし恥じちゃうこと、あるんだよ。
 
このギャップにモヤモヤしつつも最後にはきちんと笑えるのが本作の素晴らしいバランス感覚だと思います。
彼女のおっぱい趣味を受け入れてくれる場所がある。
貴子も、その友達たちも、みんなニコニコ笑っている。
だからこっちも楽しくなれる。
この作品は、おっぱいという皮をかぶった、思春期少女の人間同士の距離間の悩みを解消していくカタルシスに満ちた、素敵な話です。
 
「わたしたちは皆おっぱい」
この題名、もしかしたら「わたしたちはみんな悩んでたりするけど、みんなおっぱい好きだったり人に言えない趣味もってたりしてモヤモヤしてきたんだよ、大丈夫!おっぱい!」という意味なんじゃないかとすら思えます。

いずれにしても「大・中・微」とおっぱいなヒロインをそろえ、「いずれも素晴らしい」とおっぱいへの悟りを拓いていく貴子まじかっこいい。
おっぱいを愛そう!
おっぱいを大事にしよう!
ありがとう、おっぱい!
 

この作品読み終わったら、猛烈におっぱいをタッチしたくなるから困る。
面白いのが一点。最後にひとつ短編があるんですが、こちらは「おっぱい最高、女の子の友情最高!」という明るい表題作と違い、女性の性を嫌悪する少女たちの機微を描いた作品になっています。

おっぱい賛歌を聞いたあとに、「女じゃなくなるにはどうしたらいいのかな」と言うのを読むとなかなかグッと来るものがあります。
でも、根底は変わっていません。
非常に女の子の心の機微を、うまく楽しく魅せる事のできる作家さんだと思います。読んで確かめてみてください。
 
関連・MINCE PIE(作者オフィシャル)