たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

梓は幸せだよ、そうだろう?「けいおん!!」第22話 その1

けいおん!!」22話見たよー。
いやー、最高でしたね。

いちごとちかな!
(ちなみにどっちも声優はMAKOさん)
手前のくるくるヘアーがいちご。後ろのツインテールがちかです。
ちかがクラスのムードメーカーなのはなんとなくわかっていたんですが、いちごなにげに出番多いぞ。
無表情なクールビューティーに見えて、実はいい子……か?!
いちご株は「性格が読めない子であるがゆえにいろいろな想像をしてしまう」という点において急上昇中です。
自分はこの二人がクラスメイトの中で大好きなので、たまらんカットでした。
ちかの無邪気な笑いを見て鼻の下を伸ばしているときにいちごに冷たい視線で見られたい。
声はダブルMAKOで。
 
さて、今回は受験と、原作にあったバレンタインをうまくからめて回収した回でした。
まー魅せ方がほんと一貫していてぶれてない!
視点として中心にあった「梓が見た世界」と「友人としての純ちゃん」二つの部分から書いてみようと思います。

 

ではネタバレ有りなので収納。

ペロペロ(^ω^)
 
 

●梓から見た世界●

今回は徹底して梓視点で描かれていました。
もちろん100%梓、というわけじゃないです。ところどころ3年生の様子を第三者視点で眺めているようなシーンもありました。
しかし8割型、梓視点です。
たとえばこのカット見てください。

フォーカスはムギと澪にあっているので、間違いなく唯や律から見た光景を撮っているんですが、このカットにおいて一番大事なのはそこじゃありません。
どうあがいても、その後ろで一人で練習している梓の寂しそうな姿に目が行くんですよ。
こういう描き方がうまい。受験生4人を通してみた、梓の感覚の世界が画面に現れているんです。
 
もちろん受験生達も梓を気にしていないわけがない、むしろ気にかけまくっていますが、ここで変に励ますのも違うんですよね。
いつもどおりにするのが一番。
加えてこの4人の顔見てくださいよ。
もう、先輩の顔じゃないか。
そう、これは、梓が見ている世界。梓の感覚を通じて見ている世界。
だから4人ともなんだかしっかりしていて大きく見える。だけど距離も感じる。そしてドキッとするほど優しく見守ってくれているのも分かる。
 
途中まで、世界は非常に寒そうに描かれています。

このシーンなんて顕著ですね。
本当に「寒そう」な描写が極めてうまい。ちょっと前まであんなに暑そうだったのに、学園祭が終わってからの気温の下がりっぷりが画面から押し寄せてくるのに驚異を覚えます。
何がここまで寒そうに感じさせるかといえば、色と、仕草と、空気感。
そして梓の表情。
非常に分かりやすいくらい、天気は梓の心を表しています。
ここなんかと比べても分かりますね。

これは純ちゃんと梓の妄想の中のシーン、つまり実在しない世界。
こーんなに明るいんです。こんなにきれいなんです。
何が?
先輩たちといる時間が。
本当はこのくらい明るく澄み渡っているように感じているはず。しかし「先輩がいなくなる」という現実を鼻先に突きつけられた梓の視点は曇った空そのもののようにどんよりとした不安で満ちています。
あんなにも覚悟していたはずなのに。
 
ここの描き方も秀逸。「梓から見た先輩」なんですよね。
それに対する梓の姿がこれになります。

言葉で表現するなら、明るいがゆえに逃したくない怯え、これを差し出すことで変わってしまうのではないかという不安、今までのたくさんの思い出のすれ違い。しかしいくら言葉で書いてもだめですね。この梓の感覚を表現するには、この表情を観てもらうしか無いです。
そしてこれは後ほど書きますが、このカットが梓の感覚を見ている純の視点であるのも注目すべき点です。このへんがアニメーションの持つ力ですね、二つの感覚が並行して描写されています。
 

●私のチョコレート●

もうちょっと梓の見ている世界を見てみましょう。
チョコを渡しに行く、というのは梓にしたら一大事。
職員室にいるというので渡しに行ったときに梓が見た光景はこれでした。

さわ子と、大学の合格状況を確認している4人の先輩の姿。
ああ、そうか。
これ、ぼくら視点だ。
 
最近この書き方多いですが、もうスタッフ確信的に作ってるんですよ。
終焉に向かっていくアニメの中で、僕らが見ている視点とキャラの視点をシンクロさせていくテクニックをどんどん盛りこんでくる。
特にその視点になるのは梓とさわ子が多いですね。学園祭回だと和ちゃんとか。主要メンバーは「去る側」として描写されていることが多いです。

そして鏡のように映し出される「それを見ている私」の姿。
ああ、これもぼくらだ。
 
アニメと原作の「けいおん!」が終わる。
色々心をもり立てつつも、それは逃げることの出来ない現実だというのを突きつけられた時の暗雲そのものじゃないか。
梓の手に持っているチョコレート。
それはいわば、ぼくらが番組を見ながらずーっといだいていた「大好き」だ。
 

ムギ、唯、澪、律は笑顔で微笑みかけてきます。
なんて眩しいんだろう。
なんてあったかいんだろう。
そうだ、これはぼくらが大好きで、大好きで、大好きで仕方なかったもの。
本当に大好きで、この子たちをいつまでも見ていたくてたまらなかったもの。
あるいはアニメの中で追体験をして一緒に過ごし、楽しむことが出来た素敵な笑顔。
梓の目を通して、今僕らはそれを見ている。
そしてきっと今僕は、こんな顔をしている。

梓のこの表情が絶妙すぎてこっちが泣きそうです。目がテンパって、いろんな感情で揺れまくるんです。
ああそうか、「卒業する」=「この時間が終わる」という現実を目にしたとき、手に持っているチョコレート、梓の、ぼくらの、「大好き」はなんだかとてもちっぽけなものに思えてしまって。
あるいは、ちっぽけとはいわないけどもさ。
これを渡したら何もかもが終わってしまいそうな気がして。
 
渡せるか?
君は今「大好き」を彼女たちに渡せるか?
僕は今彼女たちに「大好き」を伝えられるのか?
 

●大好き!●

それを人は「杞憂」という。
OPを思い出そうよ。
「大好き! 大好き! 大好きをありがとう!」
唯からみんなへの、「大好き」になった気持ちをありがとうであると同時に、クラスメイトやさわちゃんや、アニメスタッフやかきふらい先生、そして視聴者全員の「軽音部のみんなが大好きだよ!」という気持ちに対して「ありがとう」なんです。
 
断言したい。
今回はもうこのカットを描きたくて組み立てられた回だと思います。

今回は、どころじゃない。「けいおん!!」という作品がなぜここまで徹底して梓視点にこだわったか、それはこのカットを描くためだと思うんです。
軽音部の成長した4人は、客観的な視点で見たらそれはもう幼いですよ。まだまだ子供ですよ。
今回もその「幼い部分」を描くために時々梓視点からそれた第三者視点が入ります。律が受験票落とすシーンとかね。あれ致命的ミスすぎるよ!
 
視聴者は二つの視点でこの作品を今見られると思います。
一つは自分たちは部室であるという視点。さわ子視点にも近いです。
全体を見守る視点。そこに流れる時間を見ている視点です。だから抗うこともできないし、叫んでどうこうできるわけでもない。ただ出来事を優しく見守り、見送る視点。
もう一つが梓視点です。
一人残されるものとしての、みんなと別れる人としての視点。
先輩たちといたこの時間が大好きで、楽しくて、幸せで。
本当に幸せで幸せで幸せで!
でも「大好き」って言っていいのかどうか分からない。だって、先輩たちは行ってしまうから。
この作品は終わってしまうから。
 
先輩たち卒業しないで! この時間、終わらないで!
けいおん!!」終わらないで!!!
言いたい、言いたいさ。
でもね、終わる。卒業する。
泣きたいのに泣けない梓は今必死に堪えています。視聴者でそういう立場の人もたくさんいるはずです。
ぼくだって泣きたいよ。終わってほしくないよ。
 
でも大丈夫。

時間は流れるし、変化は訪れるけれども、彼女たちは梓のチョコを待っていました。
分かっているんです。4人は、梓が一生懸命こらえているのも、寂しがっているのも、自分たちのことを好いてくれているのも。
同じように、視聴者であるぼくらの行き場のない「大好き」も受け入れてくれそうなこの4人の顔見てよ!
大丈夫、大丈夫だよ。
「大好き!」って言っていいよ。
 
 
梓を見守る4人の顔はとても優しいです。
だからといって変な励ましはしません。ただ微笑んで見つめ、唯は梓とスキンシップをとるだけです。
そう、それでいい。
みんなはチョコレートを本当に喜んで食べてくれました。
大切に大切に見守ってくれました。
梓の「大好き」、届いてるよ。
視聴者の「大好き」も、全部受け止めてくれているよ。
 

なんか、いいですね。
みんなでこうしてるのって、いいですね。
今日は朝から寒かったですけど、先輩たちと一緒にいるとなんか寒くないっていうか。
あ、もちろんトンちゃんも。

梓のセリフです。
確かに別れが来るのはさみしい。そりゃー今生の別れじゃないので会ってお茶飲むのくらいはできるけど、少なくとも「このメンバーでの、高校生の軽音部」は無い。
じゃあ梓は不幸ですか?
いいえ。
梓は幸せだろう?
「いいですね」なんですよ。確かに寒いけど、「大好き」を受け入れてくれる人がいて、今みんなと一緒にいられることは最高に幸せ以外の何者でもない。
けいおん!!」が好きで見ている視聴者側、というかぼくもだ。この作品が終わっていくのは当然寂しいけれども、この作品を後世に見るのではなく、今リアルタイムで見られている幸せ。
そして「大好きをありがとう」と言ってくれる彼女たちがいる幸せ。
この作品に出会っていなかったことを考えると、こんなに幸せなことはない。
 
このセリフを言って、みんなが梓を中心に抱き合った瞬間、梓の中の懸念は昇華されました。
まだ、完全にじゃないけどね。それは視聴者側も同じ。
ただ、「大好き」を伝え、受け取ってくれる人がいる「今この瞬間」の幸せは確実にあることをきちんと魅せてくれます。
未来を憂いている暇はない。今の幸せを見よう。
梓も「卒業までみんなで笑って過ごせますようにと祈りました。
今幸せなんだ、今の幸せを未来を憂うことで失うなんてもったいない。
ぼくも1000円で10円玉100回分で、祈ってこようと思います。
梓とみんなが、これからも笑顔でいられますようにと。
 
それでも未来が不安?
大丈夫。未来には未来の幸せがある。
それを体現しているのが……純ちゃんだ。
 
その2に続く。
世界は変わり、時はながれ、純ちゃんは適当に過ごす。「けいおん!!」第22話 その2