たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

少女のいる光景はこんなにも眩しい。「めくりめくる」

表紙の時点で「あ、きた」と思ったんですよね。
すっごく好みの分かれるマンガだと思いますが、表紙が思いっきりいい具合にふるいになってます。
日常型の何も起きないのが苦手な人は表紙を見て手を取らないでしょう。
この表紙が好きな人なら、きっと楽しめる。
なんもないんです、何も起こらないんです。
ただ、岡山県倉敷の町で過ごす少年少女を描いているだけです。
だからこそ、いいんだなー。
 

●町と少女●

この作品何がいいって、物語のほのかな匂わせ方もうまいんですが、とにかく少女のいる光景を描くことにまずは特化したところからスタートしているのがいいんですよ。

町+少女=正義!
日本の街並みと、日本の女学生の組み合わせは本当に絵画です。
倉敷を舞台にしているので、倉敷の街並みが様々な角度から描写されます。
そこに少女がいる、というのを描きたくて仕方なかったんだろうなあと。
想像してみてくださいよ。自分の好きな街並を一つ、どこでもいいです。その街に少女達が制服で暮らし、駆けまわる様子を当てはめてください。
眩しいでしょう!?
この作者さんは倉敷が大好きなんだと思います。
そして学生の少女が大好きなんだと思います。
大好きなものの二乗で最高の画面作りに成功しています。

また、興味深いところとして、街を様々な角度から撮ってはいるんですが、必ず少年少女の目線の高さなんですよね。
特にこの6話なんかは、少女の視野を重視しているので、街が彼女にとっていかに新鮮でワクワクする場所か、いかに広く見えるかを描くことで、少女の心情を描くというテクニックを使っています。
ストーリーはオムニバス形式で、少女達がコロコロと入れ替わるのですが、舞台は全て倉敷です。
いわば町が主役の物語として読めるかもしれません。
 

●等身大の少女達●

少年も少女も出てきますが、圧倒的に主観になっているのは少女側。

飾るでもなく、等身大の少女を写し込むことに徹底的に力を注がれています。
なのでダイナミックな物語を期待するとちょっと物足りないかも知れませんが、それは表紙を見ればわかりますよね。
大事なのはダイナミックな物語ではありません、そこに少女達がいることで生まれる、空気です。
例えば上のコマも、実際に作者さんが写真を撮って取材している可能性が考えられます。
ああ、この場所にこんな女の子たちがいて、飾らない生活を送っているのを見られたらどんなに幸せだろう、どんなに眩しいだろう!?
 
町の景色だけでなく、少女達が見る可能性がありうる色々な光景が描かれます。
たくさんの少女の瞳を通じて、町を色々な角度から見ている作品でもあるのです。

雨で帰れず、学校で愚痴っている少女のシーン。
少女がいることで世界が少女を中心に回り始めるのです。
 

●世界はこんなにも眩しいのだから●


少女達から目線を意識した画面構成で、様々な少女を描く、という手法はなかなか興味深いです。オムニバスになっているのはほんと見事です。
特別なことは、大人の目からしたら起きてない。でも彼女たちに取っては全部特別。
時間が変わらないように見える日々も。
全く新しく見える世界も。
どちらも少女の見ている大事な世界なのです。

もう一つ見て欲しいのが、必ず人間関係ありきで描かれていることです。
女の子同士だったり、男の子と女の子だったりとそれはバラバラなんですが、基本「女の子と誰か」。
一人で見る景色も美しいけれども、二人で世界はもっと広いぞ!とこの作品は語ります。
これ大人なら経験あるんじゃないでしょうか。気付かなかった世界に、人と接することで一気に気づいて視野が開ける経験。
そんな「きっかけ」を集めた作品集がこの「めくりめくる」です。
こりゃ眩しくないわけがないよ。
 

好みの分かれる作品だと思いますが、とにかく生き生きとした少女達への渇望にも近い思いが描きこまれています。なので「町のこんなところに、女の子がいたらな」と想像したことがある人なら男女問わずおすすめしたいです。
女の子の描写がまた、かわいいんだけど萌え絵じゃなく、ちょっともっさいのがいいんですよー。