たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

爆走元気っ子の不器用な恋の物語in美術予備校「ぽすから」二巻

ぽすから (1) (まんがタイムKRコミックス) ぽすから (2) (まんがタイムKRコミックス)

茶化したくなる不器用な恋のものがたりin美術予備校(with スパッツ)「ぽすから」 - たまごまごごはん
 
「ぽすから」終わっちゃいましたねえ。
といっても「ぽすから」は最初から終わるのを前提にした物語でしたので、きっちり二巻でまとめてくれたのはある意味潔い。しかも読み終わった後の強烈な満足感!
なぜ終わるのが前提かというと、上のリンクでも書いていますが、この作品美術の予備校がテーマだから。
つまり、1年で終わらないとだめなんですよ。予備校卒業して次のステップに行かなきゃ。
と、なるとですよ。

・予備校なので、仲良しではあるけど実はみんなライバル。
・どんなに仲良くなっても1年でバラバラになる可能性がある。

というモヤモヤを抱えている作品でもあるのです。この微妙なモヤモヤ具合が素晴らしいんだ。
そこで出会った読書好きの少女茜と、気弱で泣き虫な少年白樹の小さな恋の物語の顛末が2巻で描かれるわけですが……ですが……。
二巻の主役ってむしろ美鳥(みどり)ちゃんじゃね?
 

●爆走少女みどりちゃん●


みどりちゃんは自転車と絵が大好きな女の子……す、スパッツ!!!
これはいいスパッツ!いやレーパン! むっちり具合と引き締まり具合のバランスが見事!
胸も大きすぎず小さすぎず、腰も同じく。まさにスパッツオブビューティーの名に相応しい!
……すいません興奮しました。
 
まあなにはともあれ元気でスパッツの似合う、普段からジャージとレーシングパンツルックですごしている彼女。あんまり女の子っぽいことをしませんが別に苦手だからというより「こっちが好きだから」です。
割とおとなしめ・控えめなキャラが多めの「ぽすから」。特に茜と白樹が超内気タイプなので、物語を振り回すのはこの子になります。
ムードメーカー。心の支え。
背がちっちゃくて、無駄によく動いて。
気遣い上手で、常にハイテンション。

白樹が落ち込んでいても「ぐっ!」。
くっそおおおもおおおおかわいいなああああ!
モロに好みです。
こういう子が好みな人は読んだほうがいい、マジ読んだほうがいい。
 
一巻では基本茜と白樹の恋愛メインで描かれていて、二巻ももちろんそうです。ところが二巻になってこのみどりちゃんの出番急増。
やはりみんなの雰囲気を大きく動かせる彼女の力はでかいんですよ。
たとえば白樹が悩んでいるシーン。

最初にも書いた、予備校ならではの悩みですね。
みんながライバル。そして1年限りのお付き合い。
予備校生ならではの、ネガティブになっちゃう気持ちを代弁してくれています。
しかしみどりちゃん、ざっくりこうやって言えちゃうんですよ。
しかも。しかも。

二コマでご飯に夢中になります。
このあと大声で「おかわりー!」
まー、空気読めてない子といえばそうなんですが、どちらかというと器のでかすぎる子なんです。
これが彼女のトラブルメーカーなところでもあり、みんなに愛される所以でもあります。
ハトプリのえりかを想像している人は、だいたいあってると思います、そんな感じ。空気を読んで、あえて空気を読まずにマイペースを崩さない子なのです。
まあ、時々あえて余計なこともするけどね。

はいはい、やりすぎ。
くそーかわいいなー。
 

●私だってはずかしいんだい●


もうとにかく、常にテンションMAXなので逆に安心してみていられます。
なんでそこでサンタじゃなくてトナカイだよ! 面白いよお前!
しかし、しかしです。

彼女にも苦手なものがあるんだな……うふふ。
 
みどりちゃんは晴ちゃんという白樹の友人(上のコマの右の青年)と、一巻でとあることがあってから距離が近くなります。
みどりちゃん自体も相当この展開にびっくりしているようで、どうすればいいのかわからずオタオタしちゃうんです。
 
女の子らしい格好をしたこともないし、おしとやかにするつもりもさらさらないし、そういうところに気を使うくらいなら自転車と絵に時間を費やしたい。あとはみんなでゲラゲラ笑って過ごせれば最高なのになー……そんなみどりちゃんが、ふと気付いたらいつも頭にアイツのことを思い浮かべてる。

はい、「奴」なんて聞いてませんよみどりちゃん!
この恋愛しなれていない彼女の動揺っぷりがもうかわいいのなんの。

茜達の恋愛はもう、ある意味答えが見えているんです。「どこで言うか」レベルですもの。
しかしみどりちゃんの恋愛はわからないんですよ。そもそも晴にその気があるのかどうかさっぱり見えない。みどり一人で空回りの真っ最中。
二巻の主軸は茜たちよりも、みどりちゃん寄りになっています。
なぜそうなったのか、それは……。
 

●ずっと一緒にいたいから。●

予備校は、それぞれが大学に受かったらばらばらになる期限付きです。
仲良くなればなるほど、その期限が来るのが切なくなります。
でも全員が受からないと困ります。
誰かひとりだけうかっても、あるいはひとりだけ落ちても、そして遠くに行ってしまっても辛い。
ましてやそれが好きな人ならば。
この「時限」と「距離感」が「ぽすから」という作品のテーマになっています。ここまでキュンキュンな恋愛したことなくても、予備校で仲良しが出来た人なら共感出来る部分多いのではないでしょうか。

ギャグっぽいシーンですが、これかなり真摯な悩みですよね。
今こうやって予備校で一緒に勉強しているというなんとも特別な「縁」があるわけです。
その縁は時限付き。しかも思いをうまく伝えきれるわけでもなく、どうすればいいのかわからない。

この身長差がいいんだよ……。
いや、そうじゃない。すいません。
みどりちゃんのこの気持ち、行かないで欲しい、離れないで欲しいという思い。
そばで気付いたら仲良くなっている茜と白樹を見て、自分はどうすればいいのかを考えてしまうこの行動。
悩むより前につかんじゃう、でも言えない。みどりちゃんらしいじゃないですか。
 

これは試験後、どこの大学に行くか決めるシーン。
本当に、人のことはバッサリ言えるのに自分のことになるとびっくりするほど不器用!
でもそんなもんよね、人間って。みどりちゃんの行動はもうバレバレのバレなんですが、それをも含めて、おちょくられている部分もひっくるめて、彼女もまた周囲の人に大きく動かされるキャラです。
おとなしいみんなをひっかきまわして盛り上げて。
そしてまわりのみんなに自分の中の恋愛を盛り上げられて。
うん、そうだよ。
悲観しなくても、「こうありたい」と願ったものは叶えられるよ。
 

●見守るぼくら●

まあ、みどりちゃんと付き合いたいですかと言われたらそりゃもう両手をあげて付き合いたいのですが、それを踏まえた上でも晴とみどりちゃんの恋愛は成就してほしくなるんですよこの作品。
人の恋愛見るなんて嫉妬心しかわかんわ!という人もいると思いますが、この作品はそのへんのクッションの敷き方が上手。
徹底して「周囲の茶化すキャラに同化出来る」仕組みになっているんです。だからキャラも多いです。
これが単なる茜たちやみどりちゃんたちのノロケ話なら……いや自分結構ノロケ話好きだからそれでもいいんですが……、どっちかというと参加型作品なんですよ。
周囲のキャラと一緒に「やーいやーい」「うふふふふ」と茶化せる。はやくクッツケヨコノヤロウ!と突っ込んだり、照れてるのを見て「イチャラブ最高!」と悶えられる。これは上手い。

みどりちゃんの恋愛がどうなるかは読んでもらってからのお楽しみということで。ある意味予想通りですが、結構面白い展開になってます。
そしてこの彼女の思いの行き先こそが、予備校における「人間関係の時間制限があるのか」の解答の一つにもなっています。
確かに時間制限はある。
別れもある。
あとは「自分がどう動くか」だ。
 
がんばれ、みどりちゃん!
(ローアングルからカメラをかまえつつ)

二巻でサクっと読める二本柱の恋愛譚。大学に入る前の純情少年少女が好きな人には是非オススメしたい作品。青いなー、と大人な視点でニヤニヤするもよし。
一応美術予備校が舞台ですが、そんなに美術ネタはないです。どちらかというと「予備校という特殊空間」に思い入れがある人にはぴったりかも。
自分は予備校経験ないですが、もしこの作品の中にいたとしたら、モジモジしている連中を見ている、だらだらと予備校生活おくっている先輩側にいそうな予感が。それも……なんか楽しそうだなあ。