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「魔法少女」は解体されるのか? 「まどか☆マギカ」が映しだす自分の鏡像

「血溜まりスケッチ」と呼ばれてしまうアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
 
エキサイトニュース書かせていただきました。
もう、「まどか☆マギカ」に夢中です。
どのくらい夢中かというと、(現時点で)4話が気になって仕方なくて仕事が手につかず、かと言ってネタバレ踏むのが怖くてネットに繋げないというくらいに。
多分自分みたいに「うめてんてーだいすき!」「虚淵玄だいすき!」「岸田隆宏だいすき!」「シャフトだいすき!」という人は多いと思いますが、まさかそれが全部組み合わされることでこんな面白いものが出来るとは、ねえ。それぞれが自己主張はげしいまま一歩も譲らずぶつかりあってアウフヘーベンしている感じ。特に劇団イヌカレー空間が素晴らしすぎます。絶望先生の時のあれがこう作用するとは。
で、どうしてもグロ描写や鬱展開に目が行ってしまいますが、ほんと申し訳ないと思いつつもそこが好きな自分がいるのに気付かされます。
いや、アレとかほんともう気づいたら泣いてたくらいですよ。ショックで。やっぱり虚淵玄先生だったか!と叫びましたとも。
でもなんかこう、「きたっ!」と思っている自分に軽い自己嫌悪。
 
この「まどか☆マギカ」という作品はなかなかに、人間の心理の奥の扉を開いてくれますね。
多分、ネットのない時代にこれをやったらやったで、いい具合に物議をかもしてやはり話題になったと思うんです。リリカSOSの時のように。

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正直いま見ても「リリカSOS」の後半は本当にしんどい。
しかし、「まどか☆マギカ」は「ネットがあることを最初から想定して作られている」のがまたすごいなあと思うんです。
そもそもニコニコで放送している時点で「コメントがリアルタイムで反映される」「一緒に見る仲間がいるよ」というのを明確化してますもんね。
 
実際、それで割とお祭り状態になっている部分もあると思います。
ぎゃー、こえー、ひー、わっはっは、と。
それはそれでいいと思います。楽しんだモン勝ち。
そしてすっごいこの作品苦手な人もいると思います。このへんはちゃんとふるいに最初からかけられてはいるんですよね。1話の不穏さや、虚淵玄の名で。
サイトのファンシーさのトラップも含めて。
 
だけど、どうにも単なる「お祭りアニメ」には思えないくらい胸がドキドキしてやまないんです。
これ何?「この作品を愛したから」?「吊り橋効果」?「魔法少女を解体する過程に興味がある」?
うん、多分全部。
でかい理由としては「すべてを語らないことで解読したくなるミステリー要素」と「ついていったら突き落とされるであろう感覚への中毒性」だろうなーと自己分析中です。無論他の方は違うかもしれません。マミさんが大好きだからとか、アクション作画に魅了されてとか。
 

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で、やっぱり自分が一番引っかかるのは「少女」だというところなんですよね。
なぜ「魔法少女」という言葉がここまで大きな存在になっているのか。
そもそも、「魔法少女」ってなんなの?
 
Togetter - 「「魔法少女まどか☆マギカ」とアリスという名のモンスター、そして「魔法少女」解体作業中」
Togetter - 「雑考#4:魔法少女アニメ考 サリーちゃんからまどか☆マギカまで」
昨日も貼りましたが。
ちなみに「サリーちゃんからキルミンずぅまでの魔法少女ネオテニー化」については「二次元美少女だいすき! vol.1」に書かせていただいております。

魔法少女」が大人にならなくなった。「魔法」が夢をかなえるものから格闘の武器になった。「魔法少女」は「魔女」ではないので魔法を返さなければいけない。そして「少女」でなくてはいけない。なぜだろう?
 
今でも「りるぷりっ!」のような正統派の「夢をかなえる特別な力」を持っている作品もあります。ちょっと成長してアイドルになる。ぴえろ魔法少女の血を受け継いでいます。
一方「プリキュア」シリーズは魔法的な力を付与されますが、それは完全に戦闘のための武器です。そして一切成長しません。むしろ世界を救うのはかよわい少女達なのです。
最近だと「ハートキャッチプリキュア」。キュアマリンの中学生少女の小さな拳が、屈強な筋肉質男子クモジャキーの拳とぶつかりあって互角、というシーンがあって衝撃でした。そうなんですよ、「少女=最強」なんですよ。
キルミンずぅ」なんて大きかったお姉ちゃんがちんちくりんな動物ヴァルキリー形態になりますものね。あれなりたい人いるの、ってか矢印の向き逆だよ!? 成長したものからか弱いものになぜ変身するの。それは「動物視点から見た世界」を描くためなんですが、まーびっくりしましたとも。
 
かつて「魔法少女」「魔女っ子」は、大人になって働くのが夢だったのが70年代。
80年代から90年代になって女性の社会進出が目立ち、大人になって働くこと=幸せではなくなり、今度はアイドルになった。それがスタジオぴえろの魔女っ子シリーズ。
しかしマジカルエミでは魔法を捨てて自力で人を喜ばせる道を選びます。しばらく間を置いて作られたファンシーララでも魔法に別れをつげます。
ミンキーモモは「空モモ」「海モモ」と作られ、魔法で必ずしも夢を叶えることは出来ないことを指し示しました。
同時に「魔法少女」という語が「女の子向けの作品」であるだけではなく「大人も見るもの」というボリュームを身につけていきました。
 
そして燦然とあらわれた「美少女戦士セーラームーン」。子供向けとして作られながらも、明らかに大人向けな要素も含んだ戦闘少女としての「魔法少女」物が生まれます。
プリティサミー、CCさくらおジャ魔女どれみレイアース赤ずきんチャチャ大魔法峠奥さまは魔法少女リリカルなのは……色々な魔法少女が出現しました。
誰かがおっしゃってましたが、「魔法少女」という語の元に「何を描いてもいい」という土台になったんだと思います。そもそも「プリキュア」が魔法少女かどうかと言われるとちょっと悩みます。カテゴリー的には「魔法少女」なんですが。
 

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セーラームーン級に「魔法少女」の語からの貫通力があったのは、個人的にはプリキュア、なのは、ストライクウィッチーズだと思います。
他にも色々ありますが、プリキュアは「戦闘力特化・一人ではない」という意味で。なのはとストライクウィッチーズは「男性向け」という意味で。
魔法少女」の語に戦闘美少女の系譜が結びついたんですよね。しかもそこに男性の夢も乗っかった。
性的な視線として向けられる「魔法少女」の語も出来ました。戦隊物に変わる努力と根性の証としての「魔法少女」の語も誕生しました。
魔法らしきなにかを使っているから「魔法少女」とは呼ぶけど、もう包含できなくなっている。
しかし絶対的共通項は少女であることに尽きます。
魔法少女達は大人になったとき、あるいは何らかの目標を達成したとき、魔法の力を失います。
生理だったり恋愛だったりと、「少女」が「女性」に成長した時かもしれません。このへんは捉え方次第なので解答はないです。
ただこれだけは間違いない。少女達は少女であるがゆえにヒーローになるのです。
 

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まどか☆マギカ」はそこにメスを入れ始めました。
まあ現時点ではどうなるか分かったもんじゃないですが、少なくとも魔法少女の魔法は幸福とは限らないことは示唆されています。
この作品を見て「魔法少女になりたい!」と思う人はまずいないでしょう。
むしろ生まれ変わってこの世界の魔法少女になったら泣きそうですよ。

魔法少女なんていいもんじゃないわよ

ほんとだよ。
 
実はこれ、「YES!プリキュア5」でもあったんですよね。りんちゃんが、怖いしプリキュアになりたいわけじゃないけれども、のぞみのためだから、といってプリキュアになる場面。個人的には衝撃でした。そうか、なりたくてなるとは限らないよね。
というかむしろ、プリキュアかっこいいから子供たち憧れるけど、いざその立場に立たされたら全力で拒みますよ! こわいもん!
先ほども書いた「ナースエンジェルリリカSOS」もですね。さんざん戦った挙句、人身御供状態で「明日の誕生日、君は死ぬ」とかないよほんとマジ勘弁してくださいよ絶対そんな運命やだよ!
魔法少女」が「戦闘少女」になったことで、気がついたら死と隣り合わせの人生を送るハメになりつつあるのが今の魔法少女達。そこを逆手に取ったのが「まどか☆マギカ」でした。
 
蒼樹うめ先生の絵で「かわいい!」とぼくは言います。
シャフトの不気味な演出で「面白い!」とぼくは言います。
虚淵玄のえぐい物語で「ひどい!」とぼくは楽しみます。
ああ、そうか。
魔法少女」の語から勇気と希望を得ていると同時に、一方で「魔法少女」の語に萌えとサディスティックな視線をぼくは向けていたんだなあ。
 

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ストライクウィッチーズ」の陸軍の方なんかにも同じ視線を向けていました。血まみれで硝煙くさそうな少女に興奮していました。
心のそこから応援してはいるんです、いるんですが、えげつない気持ちが湧き上がる。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
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まあことあるごとにこれ出しちゃう自分もどうかと思うんですが、好きなの! だいすきなの! ご勘弁!
幸せに楽園で暮らし、そして戦い、殺し、惨殺されるヴィヴィアン・ガールズ。男性器を持った少女達。
魔法少女」の語からぼくが思い浮かべているものの一つはきっと最終地点はここなんだろうなあと。
一つは希望に向かっていく天使のような少女達。いわばヒーロー。絶対に負けない。負けてはいけない。
同時に閉じた楽園で血まみれになっている少女達もやっぱり「魔法少女」なんです、ぼくの中で。
 
まどか☆マギカ」は最終回でもしかしたら万が一にもハッピーエンドになる可能性もあるので(いや現時点でもう既にハッピーじゃないけど)現時点では何も言いません。
ただ散りばめられた謎と不穏さに怯えるだけです。キュゥべえの「魔法少女になってよ」の言葉が怖くて仕方ない。「次はお前だよ」と言っているようで。
なのになんでこんなにぼくは楽しそうなんだろう。
こんなにも人間のエゴや悪意や不信感やサディスティックな気持ちをむき出しにさせるために計算されつくした作品なのに。
 
まどか☆マギカ」にぼくが夢中になっているのは、もしかしたら「陰鬱さに酔っている自分」に酔っているからかもしれません。
こっちの価値観ががらがらと後ろで崩れているのも知らずにね。
もし本編で安心できる展開になったら自分の感覚はどうなるんだろう?
 
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放浪息子」と「まどか☆マギカ」で週に二回「自分」を鏡に写すハメになっております。
最高に楽しくて、極上に面白くて、それはもう見入ってしまい感情移入もしまくっていますが、正直これは身体が持つんだろうかレベルのしんどさ。
アリス絡みの話はもうちょっと話を見続けてから。とりあえず現時点ではなんとも言えませんが、少なくとも日本人の持つ「アリス」の語へのイメージと「魔法少女」の語へもつイメージは必ずしも無関係ではない気がします。