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キュゥべえと魔法「少女」の行き着く果ては。〜「まどか☆マギカ」の「少女」のカタチ〜


やぁ! ぼく「今殴りたいキャラ」ナンバー1に輝いたキュゥべえだよ!
ぼくと契約して魔法少女になってよ!
 
待ちきれず録画を送ってもらって6話見ました。
ほんと「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえの、表情が変わらないがゆえの胡散臭さは半端じゃないですね。
この演出考えた人すごいわ……。確かに以前からある手法かもしれないですが、ここまで「憎まれ役」を徹底して作ったというのは見事としか言えない。「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心」とよくいいますが、まさにそれ。大嫌いな人が多い=好かれている、というね。
まじキュゥべえさんの生理的嫌悪感半端じゃないっす。
でも本当にそうか?
ちと6話を見てから色々もやもやが出てきたので書いてみます。
この作品、「魔法少女」という定形を使って、全く別の新しいジャンルを広げようとしている節はある気がしてならなくて。
そこがいい意味で作り手側の「悪意」だなあとも思うのです。褒め言葉ですよ。「騙すよー」「騙された!」の応酬ですよね。
だから得も言われぬ嫌悪感持つ人もいると思います。万人に「絶対面白いよ!」って言いづらい部分なんですが、ハマる人にはハマる部分だとも思います。
要は「魔法少女」という共通言語をベースに、ネット世代で話題を交わし合うから面白いタイプの、「ミステリー」なんだろうなーと。
同時にうまいこと価値観をひっくり返すのに成功してる。うん、やっぱり面白いですわ。
 
以下、6話ネタバレ有り感想+雑談なので収納します。
主に「「少女」ってなんだろう?」の話です。
 
 
 
 
 
 
 

キュゥべえは「邪悪」ではない?●


まあなんというか、背中に穢れの詰まったアイテムを飲み込んで食う奴が「イイヤツ」とは到底言えないので、弁護しようもないのですが。
物語的な面白さとしてこいつが「いいやつか」「悪い奴か」がどうひっくり返るか分からない、というのも置いておくとして。
 
キュゥべえが「悪役」かと言われたら、別に悪いこと何もしてないんですよね。
後出しジャンケンのように「実は魔法少女になるって、魂を抜き取ることなんだよね、えへへ(意訳)」みたいに言われたら「ふざけんな!」となるのは当然のことで。悪徳業者この上ないですキュゥべえさん。
そして「君たちはいつもそうだね、事実をありのままに伝えるときまって同じ反応をする。わけがわからないよ」のセリフがネットのいらだちに拍車をかけました。だよねー。上手いセリフです。
 
このセリフが上手いなあと思うのは、視聴者のいらだちをかきたてると同時に、キュゥべえの悪意のなさが浮かび上がるところ。
そうなんだよなあ。キュゥべえからしてみたら「あえて説明しなかった」じゃなくて「当たり前のことだから言わなかっただけなんだけど」というとこなんですよね。
「あなたはご飯を食べますか?食べますよね、当然ですよね」と聞くのと同じで。彼の中の常識だから、そりゃ言わないわけだ。
でもそんな事言われても、こっちにしたら「聞いてないよ!」となるすれ違い。
 
実際問題、キュゥべえの「ソウルジェム化」は効率いいんですよね。

「心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その体は魔力で修理すればすぐまた動くようになる。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ! 弱点だらけの人体よりも、よほど戦いでは有利じゃないか」

表現に底知れぬ邪悪さが滲んでいる気もしないでもないですが。それはやっぱり視聴者視点だからなので一回リセットするとして…。
うん、この理論極めて正しい。確かにそうですな。
ようは「生身で戦え」ではなくて「体をガンダムの機体みたいにして、君たちはパイロットになればいいよ」って話なんですよね。そのほうが安全でしょ、無敵でしょと。遠隔操作。
6話を何回も見て、最初は「ねえよふざけんな!」となりましたが、じわじわと「うん、まあ、確かに・・・」となってくる不思議。己の価値観がひっくり返されていたことに気づく瞬間でした。
 
それでもなお、何か釈然としないものが残るのは、キュゥべえ魔法少女をコマのように扱っている感があるから、でしょうか。
上のグリーフシードという穢れの塊を飲み込むのだって、「それが自分のためだからじゃないの?」と勘ぐってしまう。
このへんはミスリードしそうなので避けますが、そのミスリードをばらまくのは本当に上手いとしか言えないです。
 
なるほど。
キュゥべえを「好き、えらい」とはとても言えないけど、頭ごなしに「お前は間違いだ」とも言えない。
そしてネットの声を見ていると、「怖い」「ムカつく」という声は多いけれども、「悪だ」と言う人も少ない。
善悪二元論ではなく、価値観ってもっと別のところにあるんじゃないの?というのが自然に伝わっているのが面白いところです。
露骨に怪しいキャラなので、ネタにしやすいというのもあるとはおもいますが・・・。
 

●正しいは間違い、間違いは正しい。●


お母さんのセリフが生きてきますね。

「なら間違えればいいさ。正しすぎるその子の分まで誰かが間違えてあげればいい。ずるい嘘をついたり、怖いものから逃げ出したり、でもそれがあとになってみたら正解だったって分かることがある」

キュゥべえは正しい。さやかの言うことも正しい。
だからまどかは「間違い」を選びました。
まあ……あんな間違いをしたらトラウマになって社会復帰できなくなりそうですが。
ただ、ソウルジェムを投げ捨てることで杏子も含めて、全員が「魔法少女とはどういう仕組なのか」を知ることになったので、これも実は結果オーライだったのですね。ほむほむが頑張ったおかげだけど!
(あの時、ソウルジェムがトラックの上に乗ってよかったね……ゾワ)

で、だ。
キュゥべえはまどかに固執しまくるんですが、その理由は未だ分かりません。
しかし、「自分が親友を殺しかけた」という、これだけ強烈な体験をしつつ、それでもなおもし彼女が魔法少女になろうというのであれば、これはすごいことですよ。
成り行きでなったわけじゃない。欲しい物があってなったわけじゃない。
しかも「魔法少女になった瞬間魂が抜き取られてゾンビ化する」「命を簡単に奪ったり奪われたりできてしまう」と分かった上で魔法少女を選ぶとしたら、その精神力半端ではない。
ほむほむはそれを乗り越えてきたタイプなんでしょうね。だからまどかを導かない。
杏子は知らなかった。でも欲望に忠実だから戦えた。
マミさんは……どうだったのかしら。
 
さて、問題になるのはキュゥべえのセリフです。
「ぼくと契約して魔法少女になってよ!」
今瞬間最大風速的に流行語大賞を取りそうなくらいのセリフですが、「魔法使いになってよ」じゃないのはなぜなのかがじわじわみえてきました。
なるほどそうか。
魔法「少女」なわけか!
 

●少女という入れ物●


元少女です。
外付けのハードウェアです。
キュゥべえから見たら、「魔法少女」本体はソウルジェムなわけですね。
体はアイテムに過ぎないと。
 
人間にとっての恐怖心のひとつは、自分の体を失うことです。
手耳鼻口目脚・・・それぞれが「自分」そのものだと思っているからこそ、その一部を失うことに恐怖を感じます。
実際、さやかが上条くんの腕を治したのも、そこなんですよね。彼の腕が動かず演奏が出来ないことへの悲しさ。腕=彼の命、です。
彼女の価値観が正しいかどうかも微妙ではありますが。上条くんにしてみたら奇跡的に腕が治ったものの、さやかは「ウザい幼なじみ」扱いのまま。そりゃね、知らないもんね。
見てて辛くなるわほんと! ソウルジェム設定よりこっちの方が個人的にあとからジワジワとクるよ!
と、おいといて。
だからこそ、杏子とまどかはキュゥべえに対して怒りと哀しみを感じたわけです。

この絵のギャップのせいもあると思いますが、見ていてゾクッとするカットです。
 
動かない体、死体に対する恐怖心はおそらく本能的なものでしょうね。そのへん研究している人もいるでしょうし、詳しくは分からないです。
人間が人形に惹かれるのは、「死体」への恐怖心と「永遠に少女」であることの両方が成立しているからです。
 
こっから私感。
まだわからないですが、「魔法少女」が不老不死だとしたら?
キュゥべえ理論だと、砕けない限り死なないのなら、穢れきっても死なないんですよね、多分。魔女になったりするかもしらんけど。
ならば、魔法少女」達は永遠に動き続ける生身の人形になったということなんでしょうね。
だから「少女」。年を取らない。人形に求められている物と似ています。
 
じゃあ「まどか☆マギカ」の中の少女はぞんざいな扱いを受けているかというと、その逆だと思います。
異形で、幼くて壊れやすいものだからこそ、ものすごく愛されている。
きっと彼女たちは、まどかは、抗ってくれるんじゃないかと。
たとえ、その体が人形になり、「少女」という空っぽのものになろうとも。
 

●まどかの唄●

逆かもしれません。
ソウルジェム=少女」かもしれません。

魔法少女」の「少女」をピックアップするなら、この作品を引き合いに出さないわけ行かないです。
少女沙耶は普通の人間の脳の感覚で見たら少女ではなくて、とある刺激を受けた脳で見たら美しい少女であると。
この感覚のズレをわかってもなお、少女を愛し続けられますか? 一緒にどこまでも行けますか?
こちらは人形ではなくもっとおぞましい……って言えないほど愛しい存在なんですが……なにかなんですが。
 
魂を抜き取られて一人きりで戦ってきたマミさんを思い出します。
なるほど、彼女は「戦闘少女人形」だった。たった一人で、孤独の中で。
精神を壊してしまうか、そんな思いを捨てきるか。
マミさんはその中で、心を保ち続けた、のかもしれません(ミスリードの可能性あり)。
人間ではない自分。少女であり、少女でない自分。沙耶やマミさん達魔法少女のような孤独な存在。
 

この世の理性ってものがどんなにタガの弛んだ、穴だらけの、頼りない代物なのか理解するようになったのは、ね
どんなに世界が底抜けに滅茶苦茶になっていこうと、悲鳴を上げて逃げ回る以外の選択肢が、自分にはある。
(「沙耶の唄」より)

その「選択肢」があるのがいわゆるキュゥべえの言う魔法だとしたら?
まあ現時点ではキュゥべえ黒幕説もあるわけなのでなんとも言えないですが、もし抗うことが願いになるなら全く別の「魔法」が生まれるんでしょうね。
だから、まどかのことを「逃げているだけの存在」とは見られない。彼女はほむほむの言う事を聞きつつも、抗って動きつづけている。
 
キュゥべえの方は「無い株をさらに下げた!」と評判になりましたが、ほむらと杏子は株が一気に上がった感じがします。
まーほむほむの頑張ること! すごいよ!
さやかのこと完全に見殺しかと思ったら、救うためあそこまで魔法を使うなんて。
使うほどにソウルジェムは汚れるのに。
さやかのためか、さやかが好きなまどかのためかは分かりませんが、さやかを救ったのは確かですもの。すごいよ。
 
杏子も意外でしたね。
アクションに慣らされてしまうと「そりゃあ面白い!」とキュゥべえの意見を聞き入れてしまうんじゃないかと思いましたが。
踏みとどまりました。怒りをキュゥべえにぶつけ、いわば「こっち側」であること表明しました。
アクション作品と狂気・恐怖のバランスについては虚淵玄氏も語っていたことがありましたが、「ここでこうすればいいのに」「合理的にはこうすれば楽なのに」は通用しない、感情で動くのが人間。マミさんがあそこで止まってしまったのは、ある意味「こっち側」に戻ってしまったからなんだろうなーと思ってます。
(「こっち側」に戻れず、戦闘少女人形のまま一人生き続け、朽ちていくマミさんの方が残酷だと思わないとやってられないよ)
 

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まどか☆マギカ」が描いているのは、やっぱりどこかしら「こっち側」と「あっち側」の差から生まれる恐ろしさなんだろうなあと思います。
「あっち側」、つまり魔法少女側、キュゥべえ側にいけば、もっと割りきって都合よくやれるんでしょう。
ただし、それは「こっち側」である視聴者から見たら、きっと化物に違いない。
 
なるほど、この作品は「魔法少女」というモンスターを、「こっち側」の視点から描こうとしているのかもしれません。
「少女」を貶めるためではなく、「少女」を崇め立てるために。
多分、まどかにキュゥべえが執拗にこだわるのは、そこなんでしょうね。
今彼女がいるのは、「こっち側」と「あっち側」の境界線。
命をかけてまで踏み越える動機は何か。
……1クールだとしたらまだ半分だよ、何が起きてもおかしくないんですけど!
もういっそ、まどかには「魔法少女にならない魔法少女」として切り抜けて欲しい思いすらあります。
同時に「何もかもをすててあっち側に飛び込み、全てを救う勇者」にもなって欲しくもあり。
ハッピーエンドでもバッドエンドでも、見る構えはできてますぜ。
たった半分、この6つの話だけを何度見返したことか。
ここまで途中下車せずに見ているぼくらは、ある意味「あっち側」だよ。
あとは何を望む?
 

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正直、コロシアムで殺し合いをするのを見て楽しんでいる自分がいるのは否めません、未だに。やっぱり「なんかすごいこと起きるんだろ」って気持ち0じゃないです。見苦しいんだけど止まらない。
ただ、ちょっとずつ今回のお母さんのことば、正しいことばかりじゃなく、全力で間違う、というのはなんか大きなカギのような気がして、別の角度から楽しめそうです。
沙耶の唄」は18歳以上でグロ耐性がある人なら、是非やってほしいなあーと思う作品。内容はまったく「まどか☆マギカ」と無関係ですが、プレイしておくと視点の位置がうっすら見えてくるんじゃないかと。
 
で、余談なんですが。
まどか☆マギカ」で萌えるの難しい!と思ってたんですが、一旦切り離してしまうとこの作品萌えの宝庫ですね!
脳みそ一回ばらして再構築しないと自分の場合すぐには入り込めないんですが、やっとこさ「うん、ほむほむかわいい!」と素直に言えるようになりました。
今はほむほむと杏子がツートップで好きです。純粋に好きです。
マミさんですか? 天元突破してますすでに。
好きとか超えて崇拝してる気味。作者の意図を超えて、彼女の人生とか考えるだけで、萌えるとか飛び越えてしまう。
マミさん、後輩にいいところ見せたくて頑張ってたんだろうなあ……。
 
なのログ(°□°;) 『まどか☆マギカ』虚淵さんの女性キャラに対する考え方 他
『まどか☆マギカ』関東6話・・・もうこっちもわけがわからないよ|やらおん!
しかし契約取付人キュゥべえさん、面白いなー。

803 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2011/02/11(金) 12:30:46 id:kXDJC24/0
>771
もはや死の概念がわからんわなw

シンプルだけど、ものすごくこの意見に賛成。
生きてるとか死んでるとかなんだろうね?
少女は生きてるとか死んでると次元が違うとか。あ、はい、すいません、ぼくは少女教信者です。
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