たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ちょっと間違った、日本風でてきとーな契約のカタチ。「いなり、こんこん、恋いろは。」

今年の流行語大賞「ぼくと契約して魔法少女になってよ」で決まりですね!
はやいけど多分間違いない。
 
そう、「契約」なんすよ、問題は。
契約 - Wikipedia

契約(けいやく)は、相対立する意思表示の合致によって成立する法律行為である。

一方的に「これあげるから、ほらあげるから」ってのは契約ではないです。
 
そういう意味では、昔話によくある「恩返しにひとつだけ願いをかなえます」というのは契約なんですよね。

今回はそんな「恩返し≠契約」の失敗談がメインになっているマンガのお話。

 

●ドジじゃなくてもテンパるんだってばよ●

ヒロインの少女いなりは、バカでテンション高くてドジで失敗だらけの女の子。
・・・なにそれ僕好みすぎなんですけど。
弱気系のドジっこじゃなくて、青春爆走型のドジっこなんですよ。
落ち込むこともあるけど、周りの友人がとにかく強気に叱咤激励するのでテンション回復も早い。なかなか魅力的なキャラです。
そんな彼女が、犬だと思っていた生き物を助けるところから物語ははじまります。
バカだけどいい子なんです。
 
実はそれは霊感のある人にしか見えないキツネ。
そのキツネたちを司る宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)が、いなりに「御礼に君の願いを一つだけ叶えさせてほしい」という話をするのですよ。
はいきた、契約! 契約です!
といってもQBのソレとは違って、デメリットはありません。もうすでに「助けてあげる」という恩を与えているわけですから。その恩返しですから。
とはいえですね、人間、契約時ってすげーテンパる生き物なんですな。
冷静に打算を練って、どうすれば一番得が出来るか、というのは「恩返しがもらえない状態」だと考えられるんですが、いざ「じゃあ一つ願い事どうぞ」と言われたら、絶対焦ると思います。そもそも「そんなことはない」と思っていますから。
 
いなりの失敗、というか物語の急展開は、彼女がテンパったことで始まるのでした。
好きな男の子がいて、その男の子は他の美人な女の子が好きなんじゃないかと思っていて。
そんなモヤモヤ抱えていたところで「一つ願い事を」と言われたときに、つい口走ったのが「墨染さん(好きな少年が好意を抱いていると思っているクラスのかわいい女の子)になりたい」なんです。
それは、あかんやろ!
・・・ってのは冷静な第三者だから言えることですが、まさか本当に墨染さんに物理的になるなんて思いもしないじゃないですか。「墨染さんみたいに美人で、大好きなあの人に好かれる立場になりたい」という裏の意味があるじゃないですか。日本語って複雑!
しかし、そんなのは通用せず墨染さんになってしまったからさあ大変。
人間、焦るもんだよね・・・。
 

●神様と人間の曖昧な境界線●

とある方法を使うことで元にもどれはするんですが、その代わり別の能力が身についてしまいます。
ここからがいなりの「ダメっ子人生」が大逆転。まさかのハッピーフラグが立ち始めます。
 
前半は昔話に沿った伝奇譚の匂いが強いのですが、1巻後半になってからの面白さがとにかく加速的。
人間と神様や使い魔に境界線があるのが前半ですが、後半そういうのがあっという間になくなるんですよ。
簡単に言うと神様たちがやけくそに俗っぽい。
あーこれこれ。こういうの見たかったの。
かみちゅ!」「かみあり」などをはじめ、日本の八百万の神信仰って妙に心地いいんですよね。
どんなものにも神様がいて、彼ら・彼女らは人間同様の感情や趣味を持っている、という設定。
じゃあ人間と神様の違いは何かというと、「特別な力を持っているか否か」になります。
ヒロインいなりは「特別な力」を奇しくも得てしまうので、半分神様、半分人間みたいな状態になります。
すっげーこのへん適当ですね。
でもそんなものなのです。それでいいのです、日本的には。
 
基本軸はラブコメディです。縦のY軸というか。
しかし横のX軸になるのが、「神様曖昧感の面白さ」になっているのがこの作品。
個人的にはやっぱり後半の神様たちがわっさわっさ出てきて、俗っぽいことしまくるあたりからの面白さの加速度が半端じゃないと感じました。
最後には新キャラも出て、これからどうなるの的な引きもばっちり。
 
なんでしょうね、やっぱり日本人なんだなあというか。
八百万の神様感覚は本当にホッとします。楽しいのです、怖いんじゃなくて。
そこに恋するダメっ子少女が入り込んだら面白くないわけがない。
ヒロインが本当に抜けたダメっぷりを見せてくれているのと、神様のウカ様がちょっと残念なのが魅力的なので、安心して読めます。
きれいな絵で安心クオリティの、ゆったり楽しめる日本少女恋絵巻なのです。
 
しかし、やっぱり伏見稲荷大社のがっつり並ぶ鳥居には惹かれますね。
幼い頃から「鳥居」のある世界を見ているからなんですかねえ。
血ですかねえ。