たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

31歳おっさんと10歳少女のいびつで爽やかな関係、これって恋なの?「これは恋のはなし」

ぼかーねー。
おっさんと少女って組み合わせが大好物なのです。
まあ、ロリコンだからってのもありますけどね。否定はしないよ!
それ以上にやっぱり一昨日紹介した「ブレット・ザ・ウィザード」とか「レオン」とかにめっちゃ惹かれるんです。ロリ漫画だと関谷あさみ先生がツボどんぴしゃ。
できれば、おっさん側はそこそこイケメンでヒゲがはえてたりするといい。男臭いことを夢見ているんだけどどこかダメだととてもいい。30前後がベスト。40でもいいけど30かな。
少女は一桁よりは10歳以上がいい。完全なる無垢な子どもじゃなくて、色々悩んだり恋したりするくらいの思春期がいい。
で、ただれた関係よりも、少女がしっかりしていて、おっさんがカッコ付けてる割に微妙なところでダメで、女の子の芯の強さに負けるくらいがいい。だけどいざという時におっさんが大人らしさを見せてくれたら満点。
注文多いですね。でもこういう作品って探せば結構あります。
ありますが、逆になかなか描く場所がないというのも事実。誰向けに描くの?という話しになっちゃうんですよね。イケメンな30前後男子となると、男性の共感は得難くなります。「未満れんあい」みたいにダメな感じのほうが受け入れやすい。
そこでこのおいしいシチュエーションの舞台になるのが、少女漫画・ガールズコミック誌。最近「大人の男性と少女」の組み合わせシチュ作品めっちゃ増えております。
 
これは恋のはなし(1) (KC×ARIA)

まあそのジャンルだからいい、というわけじゃないんですが、指針としてそういうレオン的なのが好きな人に文句なしにすすめたい、少なくともぼくは夢中になっている「これは恋のはなし」を紹介します。
まあひとことで言うと遙かわいすぎ&おっさんかわいすぎにつきます。
 

ロリコンじゃない。●

まず大切なのは、主人公の真一(31)がロリコンではない、ということです。
これすっごく重要。
真一はかなり顔もよいし、若い頃は賞も取りまくっていた売れっ子作家。
ですが途端にパタリと書けなくなってしまいます。スランプです。30前後って、あるよね。25と30はヤバイことが起きやすいと思うんだ。
あまりにも書けずにいたので田舎の放置していた家に住むことにしたら、そこには空き家だと思って入ってきた少女遙(10)が入ってきて出会うことになります。
理由は猫を飼いたいから。真一もまさかここに子ども(少女じゃなくて「子ども」なのがポイント)が来ると思ってませんし、遙も人が住んでいるなんて思いもしませんでした。偶然の邂逅ですよ。
 
で、だ。
かわいい女の子好きな人なら「うわーい」な出来事かもしれませんが、別段そんなことに興味がない人にしてみたらどうでしょう? 単なる不法侵入者です。
しかも独身男性の住居に少女が、となると罰せられるのは少女ではなく大人側になるという理不尽。
痴漢冤罪とかもそうですが、こういう時男性はすごい不利極まりません。誰かが「この人変態です」と言われたらそれで人生終わるのです。ええ、冗談じゃない。
現実的な話、ぼくも追い返します。入ってきちゃだめだよと。大人だもん。ってか困るもん。
ところが真一は少女の目に何かを見るんです。

左下は真一の担当さんなので今は無視していいです。
問題は右側の少女の目です。これが、大人の男達から見た遙という少女の凛とした姿なのです。
 
この作品、少女遙の目がものすごく印象的に描かれています。
吸い込まれるような、というと陳腐ですが、大人の持っている眼力よりも遙かに強い視線を持っているんです。
担当さんに「ロリコン?」と茶化されて苛立つくらいです。そのケは全くありません。
しかし、信じられないくらいぎょっとする目を持った人間に出会うことって、あるんですよね。不思議なことに。
その感情をなんと形容すればいいか分かりません。「恋」とカテゴライズするには難しい。ですが「惹かれてしまった」のは間違いないない。
もう、はじまってしまったんだよ。
 

●恋愛をイメージしてごらん●

スランプで全く書けない、ハードボイルド作家の真一に「恋愛小説を書いてみろよ」と担当が言う事で、真一の中の意識がガラっと変わってしまうのが面白いんですよー。
人間って、意識をしだすとがらがら崩れちゃう生き物なんですよねえ。

黒髪で衝撃をうけている髭面の男が真一。
そして左側が遙。
そうなんですよ、瞳には引きこまれたけど、この絵の通り小さい子どもでしかないんです。元々ロリコンじゃないですから。
まさに「おいおいなにいってんだ?」ですよ。

作家なだけにイメージする力尋常じゃなく強いのが、スイッチの入り口だったのかもしれません。
この対比いいですよね。そうなんですよ、モテないからとか、少女すきだから、じゃないんです。彼はモテるし、人気者なんですよ。リア充って表現はちょっと違うかもしれない(生き方に満足しているわけじゃないから)。
そんな彼が、少女に対して不思議な、恋とは言えない不可思議な感情を抱くというのが面白いんです。
 
真一は大人です。極めて大人な態度と大人の行動を取る、普通の大人の最低ラインにはいます。
しかし「まっとうな大人」ではないんです。やはり感性の部分が以上に尖っていて、あらゆる変化に敏感なんです。それが幸であり不幸でもあるんですが、今回遙との出会いに関しては「幸」と言いたいところ。
空虚だった彼の人生、もくもくと小説を書いてお金をもらっていた人生からの一つの離脱が始まります。
 

●あなたのことが好きです●

この作品、徹底して「遙を見守る二人の男」視点で描かれます。
一人は真一。
一人はクラスメイトの少年杉田君。
真一は30歳ですから、おっさんの、大人の目で遙を見ます。
杉田君は大切なクラスメイトとして、特別な女の子として遙を見ます。
この二つが重なりあうことで遙像がどんどんふくれあがっていくんです。
 
と言っても遙は、二人にとって特別ではあっても、普通の少女であることにかわりはありません。
このコマの遙と真一がすごいいいんだなー。

親子と言われてもわからんようなシーンですね。そりゃそうだ、20も離れてるんだもん。
でも遙の目見てください。すごい純真だけれども、同時にまっすぐに真一を見つめている目なんです。
一方真一の目は濁っています。斜めから、それこそ文字通り大人気なく遙を見ます。
俺のほうが大人だ、と。まあかってに上がりこんできているのは遙ですし、誤解されては困るから当然なんですけど、見ていると「もうちょっと方法あるんじゃないの」的な不器用さを持っています。
 
そうなんだよー、ここなんだよ!
真一がまっとうな大人のようでいてそうじゃないのがいいんですよ。
ほんと変なところで不器用で、妙なところで直情的になってしまう。大人の経験を積んでいるのに、中身は大人の皮かぶった少年のままなんです。
たとえば途中、こんなシーンがあります。

真一の友人が遙に「好きってなにか」を教えた後に遙の心が急激に揺れ動き始めるシーンです。
ニヤニヤしちゃいますよね。
初恋! は・つ・こ・い!
だがしかーし。本当にそれが恋かどうかは本人もわからない。
タイトルを思い出してください。「これは恋のはなし」。あえて言う? ってことはやっぱり「恋なんだと思う」と思っている段階に留まって、確認する作業の状態なんです。遙も。
 
さて、普通の良識ある大人だったらどうしますかね。

まあ、こうしますね。
自分が悪人になって突っ返しますよね。実際「俺は変質者扱いされんだよ」の言葉のとおりです。
この作品でもなんども「ロリコン」という言葉出てきます。繰り返しますが真一はロリコンじゃないです。でもそういうレッテルを貼られるんです。純粋な愛情ではなく、悪い意味での差別用語としてのロリコン。読んでいて胸がチリチリしますが、事実。
 
この作品がすごいなあと感じるのは、真一や杉田君の心に深く食い込んで、遙の輝きと自分の感情のゆらぎを主観的に描写しているのに、同時に客観的に冷めた目線も持ち合わせていること。
愛があれば大丈夫!なんて言わない。むしろやっぱり事態は「面倒」なのを徹頭徹尾忘れないようにしているんです。
それでも、面倒だし迷惑だし、ややこしいんだけれども「ほおっておけなくなる」真一が……かわいいんだなあ。

最高のカットですよ。
「好き」だと意識し始めた遙が笑顔でその背中についていく。
ラブは一切感じてないけど、大人としてほおっておけない、情に絆されてちょっとはみだしちゃう真一のだらしなさと頼もしさ。
遙目線は一切描かれていませんが、こういうカットで真一の姿を確認できます。
このカットさ。
遙、やっぱり……こういうのが恋だよなあ。
 
ファンタジーとして「いいじゃんいいじゃん」とならず、現実的な問題に真っ向からむかいつつ、30男と10歳少女の関係を描き始めた今作。
はたしてどう転ぶことやら?
うまく結ばれるならいいのですが、別れもまた幸せの形かもしれませんし、全く分かりません。
ただ、今は遙の深い湖のような瞳を見ていたいと願うばかり。

年上男性(おっさんまでいかなくても)と少女の恋、というのは少女漫画では結構色々描かれていたテーマではあります。「放課後チルドレン」とかめっちゃ好きです。
が、最近急にドカーンと増えてびっくり。
うーんあれかね、ぼくみたいな大人が読んでいるってことなんすかね。
男女の逆転もふくめて、年の差カップル、片方が幼い、というのは蜜の味。